ステータス

防御力を上げたいのです。守りたいから。あるいは回復力をあげたいのです。慰めたいから。

古い記憶のなかで、両親の争う声を聞きながら、布団に潜って泣いている子を。
からからに明るいショッピングセンターで突然に怒られ、追いすがった子を。
行きたくないと泣きわめくも虚しく、駅へと連れていかれる子を。
面と向かって「今までのこと、失敗したんじゃない」と言われ震える子を。
返事が出来ず頭が真っ白になり、しどろもどろに声を絞り出す子を。

泣く子、泣く子、泣く子を。

ステレオタイプにがんじがらめにされ、あれもこれも周囲に合わせて、心臓が締めつけられて、奥歯を噛み締めて、皮膚を掻いていたのでしょうか。

遠い日の、懐かしい日の、痛ましい日の子が泣いている。
今も泣いている。

22年前、10年前、5年前、去年、先月、先週、昨日、今。

しとしと泣いている。

そんな子を守るために、そんな子を慰めるために、防御力と回復力を上げたいのです。

怖かったね、悲しかったね、君は悪くない。

ステータス

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  • 随筆・エッセイ
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-03-06

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