奴隷ハーレムの作り方#1~チートだと思ったのに~

あのイケメン神様野郎やってくれたな。あれじゃ完全に下僕じゃないか。
 いや、言い方を変えれば神の遣いかな。おお、なんかかっこいいな。
 まあイケメン神様、もといイケ神の頼み聞いとけば後は自由なんだ。
 たとえディフェンスに定評のあるイケ神でも邪魔はさせないぜ。
 誰がうまいこと言えと。
 そんなことよりこんな草原のど真ん中で突っ立ってたって仕方ない。
 とにかく近くの街に入りたい。こんな丸腰の状態で魔物に襲われたら、間違いなく殺される。
 そうして周りを見渡してみると、近くに何かが落ちているのを見つけた。
 拾ってみるとそれは何枚かをまとめられた冊子だった。
 この世界のものではなさそうだし、おそらくイケ神が俺宛に置いてくれたんだろう。
 中身を開くと、そこには与えられた力の使い方と、いくつかの特典の説明が書いてあった。
 与えられた力に関しては、肉体と魔力の強化、剣術の会得は体が覚えているらしい。
 風魔法は知識として頭に入っているから問題ないんだと。
 そういえば風魔法の使い方を考えると簡単に浮かんできたので大丈夫そうだ。
 もうファンタジーの世界なので驚かない。
 治癒の力は魔力を使うので、対象の状態の良し悪しによって魔力の使用量も変わってくるらしい。
 もう治癒魔法でいいんじゃないか?
 ちなみに魔力が空になると気絶するので注意しろとのこと。
 怖ぇよ……戦闘中に魔力無くなったら確実に死ぬから気を付けよう。
 特典だが、アイテムボックス、生活魔法、そしてお金だった。
 アイテムボックスってどうやって使うんだろう。
 試しにアイテムボックス、と心の中で念じると、目の前に黒い空間がバスケットボールぐらいのサイズで出てきた。
 おお、すごいな。さっそく何か入ってないか確認するために手を入れると、頭の中に情報が入り込んできた。どうやら装備一式が入っているみたいだ。
 取り出してみると、ブロードソードと革の鎧とブーツのようだ。鎧とブーツを着込み、剣を構えてみる。
「ちょっとは冒険者っぽくなったかな」
 なんか楽しくなってきたな。
 生活魔法はその名の通り、生活する上で必要な火や水を出せる魔法だ。といっても、出せるのは小規模なものなので殺傷力はないに等しい。
 アイテムボックスの中に金貨1枚と銀貨10枚が入っていた。
 この世界の通貨は白金貨1枚が金貨100枚にあたり、同じように白金貨、金貨、銀貨、銅貨と続いている。
 冊子に通貨の価値は銅貨1枚が100円ぐらいと思えばいいと書いてある。
 そうなると今持ってる金額は110万円ってことか。
 なんかいきなり金持ちになった気分だ。奴隷を買う日もそんなに遠くないかもな。
 そしていずれはたくさんの女の子に囲まれてめくるめく愛の交わりを――。
 アイテムボックスにお金を戻しながら邪な妄想をしていると、不意に聞こえた足音に身を強張らせた。
恐る恐るそちらに視線を向けると、そこにいたのは醜悪な容貌と緑がかった皮膚を持った魔物、ゴブリンだった。
「ゴブリンか……初めての戦闘にはちょうどいい。俺のハーレムの糧になってもらうぞ!」
 気合を入れてゴブリンに剣を構えた。
 ゴブリンは俺を警戒してか奇声を上げるだけで向かってこない。
 ならこっちから仕掛けようと思い足を踏み出した瞬間、ゴブリンの後ろの森から大量のゴブリンがやってきた。
「おいおい……いきなりこれは反則だろ」
 どうやらさっきの奇声は仲間を呼んでいたらしい。ちらりと見ただけでも100匹ぐらいいる。
 1匹見かけたら100匹とかゴキブリかよ。
 さすがに囲まれたら拙いので、逃げることにする。
 走りながら牽制のために風魔法を広範囲を攻撃できる竜巻をイメージしながら追いかけてくるゴブリン共に向かって放った……のだが。
「まるで効果がない……ていうか今の本当に魔法かよ!」
 竜巻をイメージしたのに出たのはそよ風を回転させたようなものだった。攻撃を受けたゴブリン達は心なしか涼しそうだ。動きは止められたのは幸いなのか。
「魔法全然役に立たないじゃねえかああああ!」
 叫びながら逃げるしかなかった。
 全速力でゴブリンの群れから逃げてきた俺は、街の近くまで来ていた。
結構な距離を走ってきたが、あまり疲れていないので身体能力は上がっているみたいだ。
 初戦闘が無様な結果に終わってしまったことに落胆した俺は、とりあえず街に向かうことにした。
 だがその前に、確認しないといけないことがある。
「おいイケ神! 見てるんだろ。一体どういうことだ!」
 するとどこからともなく低いがどこか透き通った声が聞こえてきた。
「いやあ、ごめんごめん。君に風魔法を使えるようにしたのはいいんだけど、魔力が決定的に足りてないみたいなんだよね」
「で、でも魔力も強化してくれたんだろ?」
「強化はしたよ。でもほら、君ってこの世界の人間じゃないだろ? だから元々の魔力量がほとんど無いに等しいんだ。だから強化しても今の君の魔力量は普通の人間よりちょっと高いぐらいにしかならなかったんだ」
「マジかよ……チートだと思ってたのに……」
 俺、生きていけるのかな。チートで無双できると思ったらこれじゃ普通の人間じゃないか。
 チートで可愛い女の子にすごいです! かっこいい! とか言われたかったのに。
「そんなに落ち込まなくても大丈夫だよ。肉体の強化と剣術は覚えてるんだから冒険者としてやっていけないことはないし、この世界でも魔法を使えるのは3割にも満たない」
「へえ、そうなのか。だけど、それにしたってもっと早く言ってくれよ。危うく死にかけたんだからな」
「悪かったよ。僕の頼み事をやってくれればまた強化してあげるからさ」
「おお! そういうことなら俺に何でも言ってくれ」
「君は現金な奴だね。今は特にないから君の好きなようにしていたらいいよ」
 自分でもそう思わないこともないが、仕方ないだろう。こちらとしては死活問題だ。
 自分の命にとっても、夢の奴隷ハーレムにとっても。
「そういうことだから頼み事ができたらまた連絡するよ。頑張ってね」
「ああ、わかった」
 そう返事をすると、イケ神の声は聞こえなくなった。
 さて、街に向かうとするか。

奴隷ハーレムの作り方#1~チートだと思ったのに~

奴隷ハーレムの作り方#1~チートだと思ったのに~

  • 小説
  • 掌編
  • 青年向け
更新日
登録日
2015-03-02

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二次創作物であり、原作に関わる一切の権利は原作権利者が所有します。

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