思い描く星空文庫

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まどろ

永遠の図書館へようこそ

さっき僕は交通事故で死にました。の、はずでした。

今僕がいるのは病室。白一色のこの空間は、奥行きを感じさせず、どこまでも続く白い空間みたいで、そこにベッドと机とドアがある不思議なとこだ。
起き上がると、どこからともなく声がした。
「目の前のドアから早くこっちに入ってきて。話はその後で」
僕がドアの前まで行くと、鍵の開く音がした。普段は閉めてるのかな?そんなことを考えながらくぐったドアの先は、大きな図書館だった。
上はどこまでも続いていて、横も奥行きもこの世のものとは思えない。たぶん、まぁ、この世のものじゃないんだろうけどさ。
「はい。じゃあそこの机に腰掛けて。軽く面接します」
いつからいたのかわからないけど、声のした方には、丸い帽子を被って、紺色のローブを着ている女の人が座っていた。
僕が腰掛けると、どこからか音もなくやって来た黒い人が、お茶とお菓子を僕の前において、風景に溶けるように消えた。
「さて、まぁ、おおよそ察しはついているだろうが、君は死んだ。ここはそっちでいう『あの世』みたいなところ。ここまでいい?」
たぶん、そのままの意味なんだろうけど、僕はあんまり信じられなかった。でも夢にしては異常にリアルだし、明晰夢だとしてもさっきの交通事故が説明できない。
「はい。でもまさか本当にあの世があるなんて…。じゃあもしかして、あなたは神様ですか?」
「そんなんじゃないよ。私は図書館のお姉さん。ずっとここにいて、【LifeBook(ライフブック)】の管理をしてるの」
「LifeBook?」
「読んで字のごとく人生本(じんせいぼん)だよ。その人の一秒一秒に感じた事、行動、分岐、が読める本。その人が死んでから、ここに来て読める自分の物語(ストーリー)さ」
「なるほど…早速読みたいです!」
僕がそう言うと、お姉さんに舌打ちされた。
「たった18年しか生きていない君の本なんて10年もあれば読み終わっちゃうよ。まだ4000ベージぐらいしかないからね」
「そんなにあるんですか?!」
「そんなに驚くことじゃない。今はまだ4000。でも君がまだまだ大きくなって、働いて、恋をして、結婚して、その人と幸せに生きながら人生を全うしたときは、もう数字じゃ表せないほどのページになるんだよ」
この話を聞いて素敵だなって思ったのと、交通事故なんかで死んだことを、今更(いまさら)後悔した。
「その顔は…後悔先に立たず、だね。そういうものだよ。極端な話、後から考えて、こうしたほうがよかったなっていう妄想が後悔だからね」
「そうですね…」
ため息をついて本棚を眺める。この本の冊数からして、全人類の“生きた証”がここにあるんだろう。
「そんな顔しないで。君にはまだチャンスがある。手を出して?」
俺が手を差し出すと、お姉さんはその手を強く握って、おでこを当ててきた。
「まだ君は生きてるんだよ。ギリギリで。辛うじて。特別扱いするわけじゃないけど、まだ生きれる命は、私が返してあげる」

「また60年くらいして、幸せなった人に看取られてから来て。そのときに聞かせてよ。君の物語(ストーリー)

パッと男の子は消えた。
ふぅっと息を一つ吐いた彼女は、さっきの黒い人のように風景に溶けていった。

『ここは星空文庫。星の数ほどある物語(ストーリー)が綺麗に眠る場所。あなたもいつか読みに来てください。どうか幸せな人生を送った後に』

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これが俺の星空文庫。

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-03-02

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