羊のメリーさん

入来 文也

羊のメリーさん

ここは羊たちが住む草原。

今日は羊たちの毛刈りの日です。

羊たちは一列に並んで

一匹一匹、毛を刈ってもらいます。

しかし、一匹だけ他の羊から離れて

毛を刈ってもらっていない子がいます。

メリーさんです。



メリーさんは他の羊たちから嫌われていました。

というのも、

メリーさんはケチん坊だったのです。

「あー、嫌だ嫌だ。」

「どうして自分の毛なのに人のために刈らなくちゃいけないのさ。」

これが、メリーさんの口癖です。



「どうして毛を刈らないの?」

一匹の羊がメリーさんに問いかけました。

「私たち羊の毛はあったかい。どうして、どうして刈らないの?」

他の羊たちも口を揃えて問いかけます。

するとメリーさんは

「私は寒がりなんだから、毛を刈るなんてできないよ。」

と言いました。

そして、また

いつもの口癖を言うのです。

「やだやだ、どうして私の毛を刈ってわざわざ人にあげるんだい。」

「この毛は私の毛だよ。」



ある、暖かい日、

メリーさんはお散歩に出かけました。

すると、丘の上で牛さんが座っています。

「こんにちは、牛さん。」

「こんにちは、メリーさん。」

メリーさんは問いかけました。

「こんな所に座って、一体何をしているの?」

牛さんが答えます。

「実は靴が壊れてね。」

「僕は体が大きくて体重も重いから、靴が擦り切れてしまったんだ。」

牛さんはメリーさんにボロボロの靴を見せました。



「あらあら、かわいそうに。」

メリーさんは言いました。

いくらケチん坊のメリーさんでも、

歩けないで座っている牛さんを気の毒に思いました。

「仕方ない、ほんの少しだけだからね。」

そう言って自分の毛を刈り始めたのです。

そして分厚い靴下を編み上げました。

「靴下じゃ靴の代わりにはならないだろうけど、」

「無いよりはいくらかマシだろう。」

靴下を履いた牛さんが言いました。

「ありがとう、メリーさん。」

「この靴下はとても暖かいよ。」



それから、メリーさんは牛さんと一緒に散歩をしました。

すると、川べりで犬さんが泣いています。

メリーさんは言いました。

「こんにちは、犬さん。どうして泣いているの?」

「マフラーが川に流されてしまったの。」

と、犬さんは答えます。



「あらあら、かわいそうに。」

メリーさんは言いました。

いくらケチん坊のメリーさんでも、

泣いている犬さんを放ってはおけません。

「はぁ、またか。仕方ない、ほんの少しだけだよ。」

そう言って、また、自分の毛を狩り始めました。

そして長いマフラーを編み上げました。

「これでもう、寒くないだろう。」

マフラーを巻いた犬さんが言いました。

「ありがとう、メリーさん。」

「このマフラーはとても暖かいよ。」



それから、メリーさんは牛さんと犬さんと一緒に散歩をしました。

すると、後ろからクマさんが追いかけてきます。

「おーい、待ってよー。」

クマさんは走りながら言いました。

「マフラーを編むところを見ていたんだ。」

「メリーさん。僕に手袋を編んでおくれ。」

クマさんは魚を捕って濡れた手を見せました。



「あらあら、かわいそうに。」

メリーさんは言いました。

いくらケチん坊のメリーさんでも、

冷えた手をすり合わせるクマさんが可哀想でなりません。

「ここまで減ってしまうと今更また少し減ったところで変わりはしない。」

そう言って、また、自分の毛を狩り始めました。

そしてミトンの手袋を編み上げました。

「魚を捕まえるときは、手袋を外すんだよ。」

手袋をはめたクマさんが言いました。

「ありがとう、メリーさん。」

「この手袋はとても暖かいよ。」



それから、メリーさんは牛さん、犬さん、クマさんと一緒に散歩をしました。

すると、向こうから鳥さんが震えながら歩いてきました。

メリーさんは問いかけます。

「こんにちは、鳥さん。」

「どうして、そんなに震えているの?」

「風が吹いて、コートが飛ばされてしまったんだ。」

鳥さんは答えながら肩をさすります。



「あらあら、かわいそうに。」

メリーさんは言いました。

いくらケチん坊のメリーさんでも、

震える鳥さんを見過ごすことはできません。

「なーに心配ない。また生えてくるさ。」

そう言って、また、自分の毛を狩り始めました。

そして大きめのコートを編み上げました。

「飛ぶときは風に気をつけて飛ぶんだよ。」

コートを羽織った鳥さんが言いました。

「ありがとう、メリーさん。」

「このコートはとても暖かいよ。」



そして、メリーさんは

牛さん、犬さん、クマさん、鳥さんと一緒に帰ることにしました。

メリーさんは毛を全て刈りきって、無くなってしまったのです。

風が冷たくて、散歩どころではありません。



やっと、お家に着いたメリーさんは言いました。

「あー、寒かった。」

そして、ハッとしました。

メリーさんは気付いてしまったのです。

《寒い》の後の《暖かい》が

もっとずっと暖かくて幸せなことに。


                                おしまい。  

羊のメリーさん

羊のメリーさん

  • 自由詩
  • 掌編
  • 児童向け
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