笑いは銀河系を救う「お笑いバトル」(8)
八 銀河系人は皆兄弟 師匠登場
「さあ、銀河系最高のお笑い芸人たちの舞台が終わりました。得点は・・・」
司会者が声を上げると、それを遮るように、舞台には、座布団が敷かれ、三味線と太鼓の音に合わせて、着物姿の男が現れた。
「あれ、進行表では終わったはずなんだけど」
「この放送を見ていた師匠が来られてなあ。わしも銀河系星人の一人やから、兄弟のために何か力を貸したいんやと言われてな」
番組プロデュサーが司会者の横に立つ。
「いいんですか」
「いいも悪いも、師匠が高座に上がると言われたんだ。ありがたい話だ」
「じゃあ。進行をしましょうか」
「師匠におまかせだ。我々の出番じゃない」
舞台の上では、師匠が座布団に座り、しゃべり始めた。
「ええ、まいど馬鹿馬鹿しい話をひとつさせていただきます。まあ、これまで、六組ですか、馬鹿馬鹿しい話がありましたのに、何を今さら、とお思いでしょう。それでも、馬鹿馬鹿しい話は、ひとつ聞くとすぐに忘れてしまうので、何度聞いても、新鮮で、初めて聞いたように思うものなんです。
おい、はっちゃん。昔、銀河系にアンドロメダ星雲がぶつかりそうだった話を知っているか。
大家さん。それ、本当ですか。そりゃ大変だ。逃げなきゃ。
おい、おい。逃げなくてもいいよ。だいぶ昔の話だよ。
昔の話ですか。驚かさないでくださいよ。大家さん。それで、アンドロメダ星雲って、何ですか。
おい、おい。アンドロメダ星雲も知らないで、逃げようと言うのかい。
アンドロメダ星雲だけじゃなくて、銀河系も知らないんですけど。
何、銀河系も知らないのかい。銀河系は、今、お前が住んでいるところだよ。
へえ、俺が住んでいるところは近所の横丁だと思っていましたが、源氏名は銀河系ですか。夜になると、ちょいと一杯です、きれいどころがお酌でもしてくれるんですか。
何が、きれいどころだ。何が、ちょいと一杯だ。昼間から、寝ぼけてんじゃないよ。それに、星に、源氏名なんかあるもんか。
へえ、すんません。ちょっと、調子に乗ってしまいました。それで、銀河系にアンドロメダ星雲がぶつかりそうだった話ですが、どうやって食い止めたんですか。
聞きたいか。
聞きたいです。
じゃあ、教えてやろう。笑いだよ。
銀河系にアンドロメダ星雲がぶつかるのに、何で、笑いなんですか。
ぶつかることが笑いじゃないよ。ぶつかることを笑いで食い止めようとしたんだよ。
笑いで、星がぶつかるのを食い止めることができるんですか。
そうだよ。わしも信じられんが、そういうことがあったそうじゃ。
どんなふうに、食い止めたんですか。
銀河系の中で優れた笑いの芸人が集まって、銀河系中の人を笑わせて。その笑い声でアンドロメダ星雲を吹き飛ばそうと言うんじゃ。
笑い声でアンドロメダ星雲を吹き飛ばすんですか。
そうじゃ。
そんな馬鹿な。それこそお笑いじゃないですか。
まあ、話を聞け。これから話すからな。
へえ。大家さん、笑いながら聞いてもいいですか。
そりゃあ、もちろんだ。何しろ、お笑いだからな。
笑いは銀河系を救う「お笑いバトル」(8)