夜に光る月、朝に陰る陽

暁 月都 アカツキ ツキト

本作主人公。潔之王寺月平ユキノオオジツキヒラの息子。
後架学院哲学科中等二段の生徒。

橘 沁 タチバナ シン

主人公の幼なじみ。
後架学院創造科中等二段の生徒。

潔之王寺 月平 ユキノオオジ ツキヒラ

有名な数学者。勘が鋭く何をやってもそつなくこなす。
月都曰わく超変人。

後架学院 コウカガクイン

ヴィトレシュタラント内にある最大規模の学院。七つの科があり初等部から高等部まである。大学にいきたい場合は試験をしなければ成らない。

「黄昏に光る月を知ってる?」
酷く不安定な視界から見えた女性はとても美しかった。
「私は視たことが無いの」
近くにいるはずなのに手を伸ばしても触れることすら叶わない。
暗闇の中、ただその女性だけが光っていて色が合った。
「だってーーー」
最後の言葉は聞こえなかった。
声を出そうとするのに口の動きに音が付かない。
段々、身体が重くなる。
そうすると更に視界は不安定になった。まるで霧が掛かったように。
其処で意識は途切れた。


咲き誇っていた紅桜の花弁が落ち今は梅雨。
夏の手前ということもありじめじめした空気が家屋にまで漂っていた。
ヴィトレシュタラント帝国の首都レストンにもそれは有る。
梅雨時に綺麗な赤い花を咲かせることで有名な梅恋花-バイレンカ-さえ水が多く萎れてしまっている。
夏を告げる花としても有名なので街の住民たちは心配している。
今年の夏は来るのか、と。
街の中心に位置する後架学院でもそれは必然で多くの生徒が心配していた。
特に気象科の生徒たちは近年稀に見る異常気象ということもあってかなかなか忙しい。
しかし、それ以上に忙しいのは創造科だ。
高等三段の生徒を中心に雨対策のためのシールドをどうするかで大きな問題を抱えている。
シールドというのは
防護のためだけのシールドは農家のために雨は防がない作りになっている。
街全体を球体が囲み今ではヴィトレシュタラント帝国全体に普及している。
そんな中、全くいつも通り動く科もある。
後架学院哲学科。
そこは教師を必要とせず教えを請う者が居ない。教師に取っては地獄でしかない場所。別名後架学院地獄科。
そこに在席する生徒は兎に角優秀で変わり者が多かった。
そこに一人外見以外に差して特技のない者が居た。
綺麗な黒髪は黒水晶のように輝き、眸は綺麗なオッドアイで色は金と赤だ。
溜め息混じりに感慨に耽っていればこれほど絵になる者もいないだろう。
それに加えての「先輩方お疲れさまです!」この眩しいほどの笑顔。
暁月都は戦場の天使さながら、愛されていた。
しかし、その全貌は「あ゛ーあ、かったりぃなぁ。こちとらてめぇらの充電器じゃねぇんだよ」ただ口の悪い餓鬼だったりする。 
哲学科でも知るものは少ない。
彼はヴィトレシュタラント帝国最大の街、アーティリアで産まれた。生まれつき美しい容姿で優遇されることに慣れてしまったためか5歳になるころにはマセガキに成長していた。
美しい容姿と巧みな話術、そして父のコネで彼は哲学科に在席している。
そんな事も有ってか、期末時の月都は生きた屍と化している。
しかし、どんなに体が辛くても月都は決してぼろを出さなかった。 
彼の笑顔は鉄壁だ。どんなときでも剥がれることはない。
彼の幼なじみでさえ剥がしたところを見たことがない。
かなりの腹黒である。 
しかし、彼は学園の天使暁月都を演じきっている。渾名は月ノ都。月のように神々しい様からある生徒がそう言ったのが始まりだ。

夜に光る月、朝に陰る陽

夜に光る月、朝に陰る陽

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-02-26

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