-寓話ー
白鳥の歌シリーズ5
全てのものを国民と心優しく分かち合っている、
ある良い王は、年を取るにつれ、後継ぎを心配していました。
息子の王子にも、人々に心を配り、
国民を大切にするように望みました。
そこで、ある日、王子に庶民の服を着させ、
幸福のパンを探しに世間に出すことにしました。
王子は、毎日、パン屋からパン屋へと歩き回り、
幸福のパンを探し回りましたが、見つかりませんでした。
来る日も来る日も王子は幸福のパンを探しました。
ある暑い日の午後、幸福のパン探しに疲れ果てた王子が、
ある村につながる道で、食べ物を持っている少年に会いました。
少年は王子に声をかけてきました。
「お兄さん、疲れてるみたいだね。少しだけど水とパンをあげるよ。」
王子は、大変嬉しく思い、少年からパンと水を受け取りました。
ゴク、ゴクと水を飲み、それから、パンを口に含みました。
その時、王子はコレが捜し求めていた幸福のパンだと直感しました。
そこで王子は、少年に尋ねました。
「このパンはどこで買ったの?」
少年が答えます。
「これは、買ったんじゃなくて、お母さんが焼いてくれたんだよ。」
王子は理解しました。
愛の温かい手で作られたものは、幸せを与えるものです。
そしてそれは人と分かち合うことでますます幸せをもたらす
ものとなることを。
この王子は、ちいさなもの、普通のものを大切にし、
国民と全てを分かち合う、人々に愛される王となりました。
<了>
-寓話ー