夜のターミナル

僕らの家は夜中の空に浮かんでいる

僕らの家は夜中でも空に浮かんでいることが自慢だ
僕の名前はイヴ
あるとき親に捨てられていた

この時代、というよりは僕の生きている今は大昔と随分様変わりしたらしい
ターミナルというこの施設は宇宙世界全ての物流を管理していて空の中に浮かんでいる
浮かんでいるという表現は正しくはないのかもしれない
2100頃から地球移住計画の為月に移り住んだ人間は月に氷があることから大規模な爆発を起こし月に人工的な海を作ろうとした
しかし、それは地球に多大な影響を与えてしまった
重力の変化から地球は変動し地震噴火自然災害に人類は衰退しちゃって

でも一部のお金持ちは月に住み続けたんだ

けれど僕たち庶民とかは大昔から変わらないらしいけれど、貧乏だったんだ
地球はゴミ箱になっていった

お金があれば上がれるけれど地球にいれば、ただ厳しい環境に捨てられちゃう
僕が生まれた今の地球は毎日100度まで上がってマイナス200度まで下がる
外にいるだけで死んでしまうんだ
けれど唯一ターミナルビルだけは違う
まるでそこに鉄パイプがグサリと刺さったみたいなとてもとても長いビルは月まで届きそうだけど
ロケットがパイプから飛び出す
そのロケットだけが月への片道切符なんだ
地球の中も回るそのロケットはあっという間に地球を一周だってできる
それで地球の資源を月へ届け続けるんだ
けれど
そこに乗れるのは一部の人間だけ

そう、今日も
僕らのターミナルからロケットは発射される
まるで愚かな人間だけ乗せて


僕らはその大きな鉄の中に住んでいる

カァァァン・・・・カァァァン
何か鉄と鉄がひどく音を立てている
「イヴ、おい起きろ。おい聞いてんのか起きろ」
なんだか僕の名前を呼んでる声がするふわふわの金色の綿菓子が見えて僕はそのキラめくものを手で掴んだ
その瞬間頭に硬い感触がして激痛が走る
「痛い」
「髪を掴むなばかやろう」
涙でぼやけていた視界が目をパチパチ瞬かせるうちに鮮明になる
金の綿菓子だと思ったのはアダムの髪で掴んだ指の間を滑り離れてゆく
そして目の前には金の髪に青い瞳純白の肌の彼がいた
「天使見紛うのはわかるんだ、俺も日々鏡を見て驚くけどないい加減にしねーと落ちるぞ」
天使とは言ってないよアダムと言う前に僕の体がふわりと浮いた
「うわ」
わけのわからないまま目の前のアダムが消え、不安定な足場の隙間に服が掛かりビリリと嫌な音がした
なんとか覚醒した頭が現状を理解する
鉄柵が組まれたようなだけの簡素な天井
下には沢山の人を照らすシャンデリアを吊るため隙間をザクザク開けながら色々な太さの鉄が絡み合う
その中をなんとか縫うように体を横たえていた僕は丁度アダムに頭を殴られ穴にハマり落ちかけたらしい

「アダム」
「なんだよイヴ」
「助けて」
「貸し1で?」

アダムがニヤリと笑うが僕は情けない表情をさらにシュンとさせて

「わかった」

アダムはさらに楽しそうに僕に手を伸ばしたその手を取ろうとしたがビリリリ

「あ」

「うぁぁぁぁぁぁあ」

僕は真っ逆さまに結局落ちた

夜のターミナル

夜のターミナル

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 冒険
  • SF
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-02-25

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