ある寒い冬の日に

音色

響き渡る音が心には響かない

大好きな音のはずなのに

あの人の音が響かない

だだ涙が出そうになって

嫉んで灼いていることだけは

心のドロドロが証明している

そこで音を奏でているあの人を

憎いと

見ていて

辛いと

自覚してしまって

どうしようもなく情けない

怒りがせり上がって気持ち悪くて

吐きそうになる

耐えようとしてるのに

あの人の奏でる音が壊そうとする

自分には無いものが苦しくて

泣き出しそう

朽ちている心が更に割れて粉々になる

愛しいものが疎ましく思えて

自分の中の音が無になって

寂しい

人と接するのは悪くない

けれど一人でいた方がいいと思ってしまうのは人に不信感を持っているから

仮面を割って話せればいいのにと思うのに

接着された仮面はなかなかどうして離れない

理由は知っているけど自覚するのが嫌で考えないようにしてるのに

どうしてか私は比べてしまう

人それぞれの考え方があると知っているはずなのに

心は閉じたまま

否定されたくなくて似ていると言われるのも嫌で

肯定されるのが大嫌いだった

嫉妬で気が狂いそうになって

自分を保てなくなって

人への恐怖がせり上がって募る

吐き出せないドロリとした液体が身体を巡る

辛辣になって

暴言を吐いて

気持ち良くて気持ち悪い

全部投げ出したい衝動が

我慢しなくていいと

理性で封じ込めている欲が

充分お前は遣ってきたと

だからその理を壊せと

悪魔のようなニヒルな笑みで

手を伸ばす

拒んでいるのに

拒みきれないところがあって

優柔不断な所が情けなくて

狂いそうで

泣きたくなってくる

狂い桜と紅き月夜

憶えていますか?

あなたと初めてあったのは

紅い月が美しい夜でしたね

憶えていますか?

あなたと初めて交わったのは

桜が散った夜でした

あなたはもう隣に居ないけれど

私はずっと

あなたが好きです

慕っています

だからまた

笑ってください

私を想って

泣いて下さい

ある寒い冬の日に

ある寒い冬の日に

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-02-22

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  1. 音色
  2. 狂い桜と紅き月夜