『 雪月夜話 』
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粉雪が静かに降る夜の話。
「私、雪が好き。キラキラと美しいから」
小さく何度か咳をしながら、美冬は窓の外を眺め呟いた。
雪のように白い病室の壁が、月明かりにぼんやり光る。
「私、雪が好き。儚くて寂しくて、まるで私みたいな……」
「もう、やめろよ!」
俺の声に、ビクリと体を硬直させる彼女。
「……もう、やめてくれ」
白く透明な肌。
少し痩せた体を、僕は強く強く抱きしめた。
「面会時間とっくに過ぎてるだろうが!いい加減帰れよな」
こっちは入院してるってのに、この女は。
「えー、別にいいじゃん。どうせ大した事ない怪我なんだし」
「あのな。俺は足折って入院してんだぞ?大体、お前の何処が儚いんだよ。小中高無遅刻無欠席体育常に5のくせして……て、おい!そこに乗るんじゃ」
こいつと居ると、いっその事雪のように儚い病弱少女だったら良かったな……と思ってしまう。
雪はちらちらと降り続け、月はきらきらと輝き続けた。
『 雪月夜話 』