『 雪月夜話 』

粉雪が静かに降る夜の話。
 
「私、雪が好き。キラキラと美しいから」 
 
小さく何度か咳をしながら、美冬は窓の外を眺め呟いた。
雪のように白い病室の壁が、月明かりにぼんやり光る。

「私、雪が好き。儚くて寂しくて、まるで私みたいな……」
 
「もう、やめろよ!」
 
俺の声に、ビクリと体を硬直させる彼女。
 
「……もう、やめてくれ」
 
白く透明な肌。
少し痩せた体を、僕は強く強く抱きしめた。




「面会時間とっくに過ぎてるだろうが!いい加減帰れよな」
 
こっちは入院してるってのに、この女は。
 
「えー、別にいいじゃん。どうせ大した事ない怪我なんだし」
 
「あのな。俺は足折って入院してんだぞ?大体、お前の何処が儚いんだよ。小中高無遅刻無欠席体育常に5のくせして……て、おい!そこに乗るんじゃ」
 
こいつと居ると、いっその事雪のように儚い病弱少女だったら良かったな……と思ってしまう。
雪はちらちらと降り続け、月はきらきらと輝き続けた。

『 雪月夜話 』

『 雪月夜話 』

極短小説。

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-02-22

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