夕立の蝉
私が死というものの存在の意味を真剣に考え出したのは、高校一年生の秋であっ父が、突然死んだのだった。
滞りなく式が進められている間、私はずっと怖かった。帰省すると、3つ上の従兄弟と兄と雑魚寝をする和室には純白の布が敷かれその上に静かに祖父はいた。しかし、祖父はもう冷たいのだ。もう話すことも、私の頭を撫でることも、祖母に小言を言うことさえもう二度としないのだ。では、今私の目の前の祖父はもう祖父ではないのではないであろうか?単なる無機物ではないのか? そう思うと、私は祖父を見ることができなかった。おそらく、そんな余裕なんてどこにもなかったのである。
夕立の蝉