俺の妹はスパイ様? 5話<個性>

激動の一日は今となるとだいぶ昔の話になる。昔と言っても何十年ってわけじゃない。高校生の昔っていうのは一般人だとつい最近のことになるようなので。
「2週間前から進展あんのか?史郎!高町三姉妹との進展は!」
「あんなぁーそんな早く進展しないっての。そもそも2週間なんてまだそれほど時間経ってないだろ。」
 一樹は俺と高町三姉妹のだれかとの進展がなくてすごくがっかりしているようだけど進展するはずがない。大体俺のスタイル、顔立ちとかはこの学校の中でも中間に位置してる平凡高校生で部活は野球部。守備位置は一応投手だから野球部の中ではモテるとしたら一番のはずなんだがなぜか野球部のセンターである一樹のほうがモテてるという現状がある。
「だいたい俺は高町三姉妹を預かってる身なんだ。だからそんなことできるわきゃないだろ。やった日には親になんて言われるか……」
 一樹はここぞっ!と言わんばかりの勢いで俺に顔を近づけてくる。
「だから言ったじゃん2週間前に。両親には許可はとってあるって。」
「そんな昔のことは忘れたよ。」
 やっぱり高校生の時間の感覚はおかしい。今自分でも実感した。
「はーい、席についてー。今日はクラス委員長を決めたいと思いまーす。」
 クラスメートからは先生に対してのブーイングの嵐が起こる。それはそうだ。俺だってクラス委員なんてやってられない。
「そのまえに……転校生の紹介でーす。それに二人も!」
『オォーッ!』
 転校生?こんな時期に。だれがこんな時期に転校するなんて、やっと新学期が始まったというのに。物好きさんもいるもんだなー。
「残念だったねー女子生徒!おめでとー男子生徒っ!今回の転校生は女の子でしかも美少女ですよー!。」
 残念と言っても女子もすごく大喜びだった。男子に関してはすごい盛り上がり方だった。
「史郎。お前は気になんないのか?この時期に転校してくるなんてどんな恋愛シュミレーションゲームだよ!ここはもしかして二次元なのか?」
「んなわけあるか……まぁでもちょっと期待するかも。」
 最低限俺と一樹がこのクラスで一番驚いたであろう。
「それじゃあ入ってきてー。」
 転校生として出てきたのは。
「この二人でーすっ!」
 やけにテンションが高い先生に招かれそのテンションに乗れてる女性生徒が一人と戸惑いつつも後ろからのろのろと出てくる生徒の二人。」
「おっ!士郎のクラスかぁーちょっとラッキーかも。おまけに一樹もいるじゃんかよ。一樹はいらなかったなぁー」
「ほ、ほらお兄ちゃんのクラスになれたんだから。もっとおとなしくしようよ……それに先輩と一樹君以外は私たちのこと知らないんだからちゃんと自己紹介して……。」
 クラスから笑いが起こる。笑えてないのは俺と一樹だけだった。
「んじゃあ私から自己紹介ねー。私は袴田夏美(はかまだなつみ)趣味はテニス。そんで特技は野球です。こんな時期に転校してくる空気読めないやつだけどよろしくッ!」
 やっぱり女子高校生は制服のほうがかわいいかも……
「え、えっと……河飯奈々です。趣味は音楽鑑賞です。特技とかないんですけど……好きなものは珍しいものと史郎先輩です。よろしくお願いします!」
 ……大胆にもほどがありませんか奈々さん?
 俺の公開処刑という名の奈々の告白によって自己紹介は終了。よりによって一樹が席を移動するという話になり俺の寮隣りは夏美と奈々になってしまいクラス男子全員(一樹も含む)を敵に回してしまった。夏美、奈々、あとで仕返ししてやるからなっ!
「史郎。今日は散々だったな……卵焼きあげるよ……」
「ありがとな一樹……じゃあ俺はハンバーグやるよ。おまけにこれ夏樹が作ったやつだからめっちゃうまいとおもぞ。」
 今は昼休み。みんなは外に出るなり屋上に出るなりで弁当を食べる。スポーツ部に所属してる人は弁当なんかは早ベンしてるから今頃食堂でたむろって学食をむさぼってるところだと思う。俺たち二人は食べる。確かに食べる。だけど夏樹が用意する弁当が多いのとまさかの俺に対して夏美と奈々が弁当を作ってくれるっていうとんでもないサプライズプレゼントのせいで飯を食うのに一苦労な状況なのだ。
「一樹気づいてるか?周りの目。」
「あぁ気づいてるよ。さすがにこれはピッチャーやってる俺でも参るよ。」
「おっ!いたいた。奈々ぁーここにいたよ史郎と一樹。」
 屋上への階段のドアから俺の公開処刑の執行人の二人が来た。一斉に冷たい目線が俺と一樹に突き刺さる。さすがにあの二人は美人だから常にこういう視線受けてるから慣れてるんだろうけど俺たち凡人はまったく慣れてないわけですよ。その辺はもうちょっと気を使ってほしい。無理だろうけど……
「ちゃんと食っておかないとこの後射撃の訓練あるんだから体力つけといてよね!もちろん一樹にもおまけでならってもらうから。」
「そう、おまけ。変なの期待しないでね。史郎先輩は期待しててくださいねっ。」
「なぁなんで俺だけこんな扱いなんだよ……」
 この屋上は俺にとってはあまり居心地がいい場所じゃなくなってきた。みんなが作ってくれた弁当をさっさと食べて俺は教室で寝ることにする。意外と目をつぶると今日に限ってはあっさり睡魔が俺に襲い掛かってきて……


「……郎くんっ!……史……ん……。小鳥遊史郎っ!」
「はいっ!小鳥遊史郎ただ今起床しましたっ!」
 目の前には現国の中島先生だった。周りは大笑いで一樹は笑ったところをすごい勢いで飛んできた消しゴムで撃墜された。その消しゴムを投げた張本人の夏美は顔を真っ赤にして、奈々に関しては頑張ってフォローをしてるしまつ。こんな俺で高町三姉妹を面倒見ていけるか心配になった瞬間だった。
「はぁ~……また居眠りしちゃったよ……」
 あの後中島先生に呼び出され次授業中に居眠りしたら居残りという厳しいバツを与えられるということを通告されて今に至る。正直2か月後にはこの通告を忘れてまた居眠りしちゃう自信がある。おまけにこの後は夏美と奈々の射撃訓練ときた。まぁ一樹を道ずれにできるだけありがたいと思わないと。
「今日は災難だった……明日は居眠りしないように頑張らないと。」
 野球部の練習もありとてつもなく疲れてしまった。部活の後に先生に呼び出されるのが正直一番きつい。今頃一樹は夏美にガッツリしごかれてるんだろうな。
どこにでもある日常。そしてどこにでもありそうな平和。きっとこれは高町三姉妹や夏美と奈々。そしておまけに一樹がいるから成り立ってると俺は最近思う。そう思いながら歩いていると意外と早く家に着いた。
「やっと帰ってきたねお兄ちゃん。奈々さんが射撃場で待ってるよ?部活帰りで疲れてると思ってコンビニでアリナミンA買ってきておいたからそれ飲んでからでも行って来たら?帰ってくるころにはみんなのご飯で来てるからさ。」
 夏樹は笑顔で俺を出迎えてくれた。今日はピンクのリボンがついたエプロンにミニスカート姿だった。リボンは胸のところについていてちょっとかわいく見えた。ここに来てからまだほんの少ししかたってないのにだいぶツンのほうは抜けて気がする。(まぁここからゲームだと出れのほうが増えるんだろうけどこんなことは現実はあり得ない。)
「わかった。じゃあ『夏樹が買ってきた』アリナミンAを飲んでから行くよ。そんじゃ。」
 夏樹は顔を真っ赤に染めたがそんなの気にしない。何で真っ赤に染めたのか理由は分かんないしそもそも俺そんな関係だったか?
 外に出て射撃場のところまで歩いていく。扉を開くとそこから大きな銃声がきた。一樹はベンチでくたばっていて星七はワルサーWA2000を構え、愛莉はSIGP226を分解して手入れをしていた。俺は一樹のもとへと歩み寄る。
「おいおい……一樹なんでへばってんだよ……」
「んなこと言ったってさぁー。なんでこんなにハンドガンのくせして重いんだよ。」
 ベンチの近くにある机を見るとデザートイーグルがおいてあった。俺の黒いデザートイーグルと違ってシルバーカラーだった。存在感抜群でかっこいい。
「俺もデザートイーグル使ってるけどそこまで重くないぞ?そもそもお前キャッチャーやってんだから少しは頑張れよなー。そんなんだったら顧問に言って俺とのバッテリー解消するぞ?」
 それだけは勘弁をと土下座をし始めたのでさすがに許したがマジで思っているのは確かだ。大体キャッチャーが一番筋力高いのなんでこんなに筋力がないのかが納得いかない。さすが会長様だからサボれるってことなのかもしれないが。
 その机には今はこの射撃場では初めて見る夏美と奈々の姿もあった。
「二人はどんな銃使ってんの?教えて!」
 ちょっと子供っぽかったかな?ついつい幼馴染相手だとキャラ作れないよなー……
「ん?私はヘッケラーアンドコッホ社のMP5A3だよ。ハンドガンはグロッグ21.」
 夏美はMP5A3とグロッグ21かぁ。なんか以外。夏美は目立ちたがり屋だからてっきりM4A1のカスタムでも使ってるのかなーと……
「奈々はどんなの使ってるの?」
 夏美はなぜか手入れ途中のグロッグ21を置いて手入れ済みであろうMP5A3を持って射撃練習を始める。手入れ途中なのに練習しに行くって俺は考えられないと思うんだが?
「わ、私ですか?……先輩には見せたくないです。」
「なんで?」
「だって……学校で言いましたよね。珍しいものが好きだって。」
「うん」
「笑いませんか?」
「うん」
「絶対に笑いませんか?」
「うん」
「命に代えても?」
「それはできない。」
「じゃあ見せます。」
 なんかこのくだり前にもあった気がしてしょうがないんだけど……。奈々が持ってきたのはすごくびっくりするものだった。
「これです先輩。」
『ドンッ!』
 手入れする台に置かれたのは1Km先の戦車まで破壊したという伝説があるバレットM82A3.そしてSAAこのコルト・シングル・アクション・アーミーがおかれた。
「バレットは知ってるけどこの西部劇とかで出てきそうなのは何?」
「これはコルト社が生産をしていて今でも生産が続いてるシングル・アクション・アーミーです。ガバメントが出るまで現役で頑張ってくれた銃ですよ?知りませんか?」
 名前だけは聞いたことある。なんて答えたらきっと詳しいことまで教えられそうだ。だから、
「わかんない。これどうやって撃つんだよ。」
これはですねーと言いながらSAAを持って部屋に入る。
「こうやってあらかじめ引鉄を引いておいて、撃鉄添え手の掌でハンマーを起こして連射するんですよ。これをファニングショットって言うんですよ。由来としては、撃鉄を連続でコックする仕草が、扇ぐように見えることが由来だそうです。達人であれば、1秒以内に6発発射することも可能らしいですよ先輩。覚えておいてくださいね。」
 そういうと実際に撃ち始めた。
『ババババババンッ!』
 マジで1秒以内に撃ちやがった。これはシングル・アクション・アーミーだけの直腸らしくSAAでないと味わえない間隔らしい。確かにゲームで俺のリロードはレボリューションだっ!って言ってるやつの気持ちがわかった気がする。
「かっけーな!俺もこれくらいデザートイーグルのポテンシャルを引き出せるようにしないとな。」
「どこかの秋名山のハチロクと同じ。古くても強い。GT-RでもFD3Sでもランサーでもなんでもこい。だから相手がベレッタ使いの女だろうとSIGP226使いの女だろうとデザートイーグル使いの女でも、グロッグ使いの女でも史郎は渡さない。」
 ま、まて。なんで今みんなこっちを向いたんだ?相変わらず一樹はくたばったままだけど。この奈々の発言でみんなハンドガンの練習を始めた。どんなところで維持はってるのか俺には全く理解ができなかった。でも奈々にストレートに好意を向けられると悪い気はしないよな。俺もちゃんと練習しないと。

俺の妹はスパイ様? 5話<個性>

俺の妹はスパイ様? 5話<個性>

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  • 短編
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  • 全年齢対象
更新日
登録日
2012-02-23

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