ゆめちから

夢番地から

柔らかい木漏れ日、柔らかい雲のような肌触り、
白い壁でで覆われた部屋に1人立ちすくむ小柄な少女。
東のほうからコツンコツンという足音が聞こえてくる。
それはまるで何かの物語が始まるような足音でその音は
少女の胸を踊らせた…だが、その音はすぐに途切れた。

少女は足音がした方へ走りだした、1つの黒い影が見えた時
透き通った柔らかい声で
「ねぇ、もう一度聞かせて?その足音…」
と少女が言うと黒い影が少年のような声で
「ついておいで。素敵な世界が待っているよ」
と言ってまたコツンコツンと音を立てて歩き始めた。
少女はまた心を踊らせて影を見失わないように走りつづけた。
あと一歩。あと一歩で影が形に変わるとき真っ白な世界が
色のある世界に変わった…

色の世界に

一瞬目が眩むような光が一気に少女の目に差し込んだ
「…ん?」
見覚えのある風景。いつもと変わらない日常。
鳴り続ける時計の秒針の音。
夢から覚めたことに気づいた…横には自分と同じ顔をした
双子の妹、咲が立っていた。
「花、昼だけど…」
胸に突き刺さるような冷たい声。
その時に、夢であったことに気づいた。

双子の姉である花は妹の咲とは違って
気が抜けていて、ロマンチックな事が好きである。
反対に咲は現実的で何でもこなせてしまう。
性格と行動力は似ても似つかなかい双子。

「咲は起きるの早いね~」
少し寝ぼけたゆったり声で花はあくびをしながら
咲きに語りかけた。
「花が遅いだけ。映画見る約束してたじゃない。」
少し怒り、冷たい声で咲は花の言葉に返事を返した。
「今から支度をすれば…ん〜、4時には間に合うから
もうちょっとだけ待ってて?」
と花が言うと、咲は後ろにクルリとむいて
花の部屋から去っていき、それと同時に花はクローゼットを開け
白いワンピースを手に取った。

初夏の賑

春から夏に変わる頃。
心地良い風、日差しと空気。
お出かけには持ってこいなお出かけ日和…

花と咲は準備を済ませ、
母が運転する車の後部座席に乗り込んだ。
「今日は、いい天気わね〜!
咲、帰りはお散歩しない?」
花はまんえんの笑みで咲の顔を除き問いかけた。
「嫌よ、私は映画見るだけでいいの。
1人で散歩しながら帰りなさいよ。」
窓の外を向いて咲き不機嫌そうに答え、
花の顔を見ようともしなかった。
「こんな素敵な休日は無いと思うわ!
分かった。私はのんびり帰るわ♪」
そんな事もお構いなしに花は心を踊らせた。

2人は映画を見終わると、咲は迎えに来た母の車で
帰ってしまった。
花は道なりに家に向かって歩き始め今日見た
夢のことを考えながら歩いた…
『あの時、目が冷めずにあのままあのまま
夢の世界にいたなら、素敵な世界が見れたのかしら…』
と、少し残念だなと思っていると、白色の蝶々が花の目の前を
横切った…花は蝶々を思うままに付いていった。
『このタイミング!もしかしたら…』
無我夢中で追いかけて行った先には、とある図書館の上の丘に
立っていた。
『ふわぁ!見たことのない景色…なんて素敵なの!こんな所が
あったなんて!』
花は丘の隣にある階段を一気に下ってパリの町並みのような住宅街を
ゆっくりと歩き目に焼き付けていたが足元の石につまづき倒れかかった…
パシャッン
石畳の道のはずなのに水が跳ねる音がした花はそのことに理解ができず
倒れた時に閉じた目をゆっくりと開けた…
『!?…夢?』
そこには、今日みた夢の白い世界が広がっていた…

ゆめちから

ゆめちから

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-02-20

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  1. 夢番地から
  2. 色の世界に
  3. 初夏の賑