星屑レイン
まえがk((あらすじ。
中学1年生の郁間セイタは、10歳の時、父を亡くした。そんなセイタがある日、小さい頃、母に言い聞かされていた言葉を思い出し、夜の世界に足を踏み入れることになるのだが…。
星屑レイン1
僕の名前は、セイタ。星の綺麗な夜に産まれたから、セイタ。だからか、僕は星が大好きだった。夜ベランダから星を眺めて、たまに夜更かししてた。その度、母さんに「邪魔しちゃダメよ」と、怒られる。
夜は、お月さま、お星さまの時間。寝る前、いつも母さんが言っていた言葉。昼間はお月さまもお星さまも寝ているから、僕たちが遊べるんだよって。夜、もしお外に出たら、お空の人たちが迎えに来て、連れて行かれてしまうよって。それがこわくて、小さい頃の僕には恐ろしくて、とても外に出る気にはなれなかった。
10歳の時、仕事で帰りが遅くなった父さんが、事故にあった。僕と母さんは急いで病院に行ったけど、間に合わなくて…父さんはなにも喋ってくれなかった。
黒い人たちが沢山、僕たちに頭を下げる。隣で泣く母さんになんて声をかけたら、なんて、たかが10年しか生きてない僕が、分かる訳もなくて。寂しさとか、やるせなさとか、虚しさとか。いろんな気持ちがぐるぐる、ぐるぐる、胸の中で回って溢れそうになる。それでも泣いちゃ駄目だと。母さんが泣いてる間は泣いちゃ駄目だと。そう言い聞かせた。
「セイタ。ごめんね。母さん、もう大丈夫だからね。」
目の下を赤くして、そう笑う母さんが酷く歪んで見えた。下を向いたら零れそうなくらい溢れてた雫が、ひとつ、またひとつ、床を叩いていった。
あれから3年。僕は中学に入学して、特に目立つこともなく過ごしていた。いつものように、図書室でお気に入りの星の図鑑を眺めてる時、母さんの言葉が頭をよぎる。
夜はお月さま、お星さまの時間。夜、外にいたら、お空の人たちが迎えに来て、連れて行かれてしまうんだ。
(だから父さんも。わかった、そうだ。母さん、待ってて。僕が父さんを連れ戻すから。)
分厚い本を閉じて、次の授業へ向かう。いつも通り。…放課後までは。
to be continue.
星屑レイン