薄く笑う君が好き

薄く笑う君が好き

きみは、晴れてる日が大好きなんだ。

ぼくは、今日もきみの冷たい手を握る。

空が晴れてるよ

ぼくの彼女は、いつも笑うとき
薄くしか笑わない。
薄いピンク色の唇の端をふわりと
持ち上げて少し目を細める。

その仕草がぼくは大好きだ。


「空が晴れてるよ」

今日は、桜が開花すると言われているからか
空が異常なほどに明るい。
きみの指差した空を見る。

「ずっとこんな日が続けば
いいのにね。」

「そうだね、、。
晴れてる日が1番1番すき。」

ゆっくりと君の手を握る。
君の手は暖かい天気とうってかわって
冷たい。驚くほどに。冷たい。

ぼくがその冷たさに息を飲むと
君は、それに気づいてまた薄く笑った。

「手、冷たいよね。ごめんね。
離してもいいよ。」

「いやだ。」

手を解こうとするきみの手をおいかけて
先ほどより強い力で握った。

「ありがとう」

「ぼくがこうしたかっただけだよ。」

きみの手をにぎりながら、片手で少し重たい窓を開ける。

この病室の窓は、自殺防止のためか
いつもとても重たい。

「あ、春の風」

「え?」

重たい窓から吹き込んできた風を
思い切り吸い込んでゆっくりそういった
きみの顔を覗き込む。

「春の風だよ。気持ちいいね。」

「そう、だね。とても気持ちいいね」

少しさみしそうな顔でこちらを見る
きみに胸がつまる。

「な、にか喉乾かない?」
「大丈夫。いまは、そばにいてほしいの」
「、、そっか。」

真剣な顔でこちらを見るきみに息がつまる。
自分は、いつになってもきみには敵わないなぁなんて思いながら
きみの頭を撫でる。
こうすれば、きみは薄く目を閉じて
幸せそうな顔をするからだ。ぼくはその幸せそうな顔をみてさらに
幸せになってしまうんだけれど。

「外に行こうか。」

きみが唐突にそうくちに出したので
驚いている

薄く笑う君が好き

薄く笑う君が好き

  • 小説
  • 掌編
  • 青春
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-02-15

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