ヴァンガードG外伝 「先導者・ハイメ」
ユーロリーグ新進気鋭のファイターであるハイメ・アルカラスは、
日本で行った新導クロノとのファイトから二週間後に
フランスで行われるエキシビションマッチに出場すべくパリのホテルに宿泊していた。
エキシビションマッチ前日の今日、ハイメはホテルにこもってカードを広げていた。
「うーん・・・・・・このカードをデッキに加えるか否か、迷うね。」
困った顔をするハイメに恰幅のいい中年の男が声をかけた。
「どうかねハイメ君、明日はいいファイトができそうかい?」
「あぁ、オーナー。」
その男は明日のエキシビションマッチの主催者であるホテルのオーナーだった。
「明日のファイトは観光客や住民へのプロモーションだ。素晴らしいファイトを見せてほしい。」
「ああ、もちろんだよ。どんなファイトでも俺は全力で臨むさ。
それに、相手は日本から来た世界有数のファイターだし俺も心して戦わないとね。」
「期待してるよ、ハイメ君。」
「うーん、だけど部屋にこもりっぱなしも窮屈だし、外に出かけようかなと思うんだ。いいかな?」
「構わないよ。だけど明日のファイトは午前に行われるから疲れを残さないようにな。」
「うん、分かってる。じゃあ行ってきます!」
ハイメは調整中のデッキを手に取り、勢いよくホテルを飛び出していった。
ホテルを出たハイメはしばらく街中を歩いていた。美しい風景、綺麗な建物。これを求めて観光客は来るものだ。
しかしハイメにとってパリの景色は見慣れた景色。一度は見たことのあるものばかり・・・・・・のはずだった。
ハイメはしばらく歩いていると、少し違った景色を見ることができた。
美しい建物が立ち並んでいた道だが、その建物の列が途中で途切れている。そしてその途切れた先に建物はない。
ハイメは小走りでその列が途切れた先に移動した。
そこでハイメが見たものは荒廃した建物が立ち並ぶ、美しいパリとは真逆の景色だった。
「やっぱり都市の近くは栄えないんだね・・・・・・」
ハイメは荒れ果てた景色を見ながらつぶやいた、その時だった。
「やめてよ!!」
子供の叫ぶ声がハイメの耳に入った。ハイメは声のする方向に走った。
そこにはボロボロの服を着た1人の少年と汚れたスーツを着た2人の男がいた。
男の一人は手にカードを持っている。
「やめて、僕のカード取らないでよ!!」
「うるせえガキが!!こいつを売って、俺の人生を取り戻す資金にしてやるのさ!!」
「俺たちの転落した人生を取り戻す足掛かりにさせてもらうぜ!!」
「そ、そんな・・・・・・返してよ!!」
「うるせえ!!返すわけ・・・」
「返してあげなよ。」
ハイメはそう言って二人の男の前に立った。
「うるせえ!!てめえには関係・・・」
「そのカード、ヴァンガードの価値を知ってるってことは、君もファイターなんだよね?」
「・・・・・・それがどうしたってんだよ?」
「俺とファイトしないか?もし君たちが勝ったらそのカードだけじゃない、俺のカードも渡すよ。
だけど君たちが負けたらそのカードをこの子に返すんだ。」
「へっ、いいぜ。ついでにお前のカードもいただいてやらあ!
だがお前は1人、俺たちは2人だ。どうやって決着つけるってんだ?」
「んー、そうだなぁ。俺のデッキは1つだから2面打ちってわけにもいかないからね。」
「ならタッグファイトでどうだ。」
ハイメの後ろから突如声が聞こえた。ハイメが振り向くとそこには黒い服を着た男が立っていた。
「2人を同時に相手しろと言っているんだろう。ならタッグで相手をすればいい。」
「お~、ナイスアイデア。つまり俺のパートナーは君が務めてくれるってことだよね?」
「もちろんだ。」
男はそう言ってデッキを取りだした。
「上等だ・・・・・・奪うカードの枚数が増えた。」
「相手してやろうじゃねえか!!!」
ハイメと黒服の男、そして汚れたスーツの男2人の前にフィールドが展開された。
そして4人はファーストヴァンガードをセットした。
「ターンの順番はどうする?君たちは先攻・後攻に希望はあるかな?」
「へっ、なら俺が先攻させてもらうぜ。」
ハイメの正面にいる男が名乗りを上げた。
「じゃあ君が1ターン目だね。タッグファイトのルールだと次は斜めのファイター、つまり。」
「俺だな。そして次が俺の正面にいる男、最後がお前だ。ハイメ。」
「・・・・・・だね♪さぁ行くよ!」
『スタンドアップ・(ザ)・ヴァンガード!!』
「ドングリ・マスター!」
「スパークキッド・ドラグーン!」
「同じくドングリ・マスター!」
「士官候補生 アンドレイ!・・・・・・相手は二人ともグレートネイチャーだね。」
「俺のターン、ケーブル・シープにライド!」
「ライド!レッドリバー・ドラグーン!」
「チクタク・フラミンゴにライド!」
「ライド、ケルピーライダー ポロ!アタック!」
「ぐぉ!!だが俺のターン、バイナキュラス・タイガーにライド!アタック!!」
ファイトは数ターンが経過した。
ハイメ・黒服の男のペアが3点ダメージ。
スーツの男ペアが2点ダメージ。
互いのグレードは2である。次のスーツの男のターンからグレード3へのライドが始まる。
「行くぜ・・・・・・ライド!熱血教授 グル・タイガー!!アタックだ!!」
「ノーガード。」
「ドライブトリガーチェック!クリティカルゲットだ!!」
「だけどダメージでヒールゲット。」
「チッ、ターンエンドだ。」
「俺のターン、スタンドアンドドロー。」
『ライド・ザ・ヴァンガード!封印の檻を破って降臨せよ、雷の化身!ドラゴニックカイザー・ヴァーミリオン!!』
「ヴァーミリオンのリミットブレイクスキル!カウンターブラスト3枚を支払い、
相手の前列のユニット全てに同時にアタックを可能とする!ヴァーミリオンでアタック、エターナル・サンダーボルト!!」
「ぐっ、すべてノーガードだ。」
「チェック・ザ・ドライブトリガー・・・・・・ゲット、クリティカルトリガー。」
「ぐっ!!これでダメージは並んだか。だが俺のターン、ライド!
魔法科学者 テスター・フォックスだ!!ヴァーミリオンにアタック!!」
「ワイバーンガード・ガルド、完全ガードだ!!」
「ちぃぃ!!ターン終了だ!!」
「俺のターン、スタンドアンドドロー!ライド!嵐を超える者 サヴァス!!
そして!ジェネレーションゾーン・・・・・・解放!」
『進め!我が導く運命の航路!!ストライド・・・・・・ジェネレーション!!』
「天羅水将 ランブロス!タイダル、マグナムをコール!この攻撃に耐えられるかい!?」
「ぐおおおお!!!ランブロスの攻撃は完全ガードだ!!」
「だけどランブロスのスキルでタイダル、マグナムは再びスタンド!アタックだ!!」
「畜生が!!ノーガードでダメージ・・・・・・くそ、これで9点目!!」
男はフィールドに手をかけ体を震わせた。
「俺たちの勝ちだね。約束通り、カードは返してもらうよ。」
「くそ!!こんなカード返してやらあ!!」
男はカードを投げ渡すとさっさと逃げて行った。
ハイメはそのカードを手に取ると、後ろに隠れていた子供に手渡した。
「はい、また取られないように気をつけてね。」
「うん!ありがとうお兄ちゃん!」
ハイメは笑顔でお礼を言う子供ににこりと微笑み返した。
そして共に戦ったファイターである黒服の男の方を見た。
「グラシアス。おかげで助かったよ。」
「一度、お前の力を直に見てみたかった。ただそれだけだ。」
男はそう言ってその場を立ち去った。
「うーん、噂通りのファイターだね。」
ハイメはそう言って立ち去る男を見えなくなるまで目で追い続けた。
そしてその姿が見えなくなると、ハイメはすっと立ち上がった。
「さてと、俺も帰ろうかな。」
「ま、待ってお兄ちゃん!」
「ん・・・・・・?」
歩きだすハイメを少年は止めた。
「僕に、僕にヴァンガードを教えて!僕、もっと強くなりたいんだ!!」
「・・・・・・アミーゴ、名前は?」
「え?ぼ、僕はマルコ。」
「俺は、ハイメ・アルカラス!よろしく、アミーゴ!」
ハイメはマルコの前に手を伸ばした。
「う、うん!よろしく!ハイメお兄ちゃん!!」
マルコはハイメの手を取り、強く握った。
その後、ハイメはマルコに案内され、マルコの住処に来た。
「ここが君の家かい?」
ハイメは案内された場所を見まわした。壁の至る所に傷が付き、カビやネズミも見える。
しかし付近に見える建物よりはしっかりとした空家であった。
「違うよ。僕の本当の家は壊されちゃったから。ここは自分で見つけたんだ。」
「そっか。それで、マルコはヴァンガードをやったことはないのかい?」
「デッキは持ってるしファイトしたことはあるんだけど・・・・・・僕、弱くて。」
そう言ってマルコは自分のデッキをハイメに手渡した。
「どれどれ・・・・・・?」
ハイメの目に映ったカードは自分の使っているクランと同じアクアフォース。デッキの全体を見る限り、
切り札は『蒼嵐竜 メイルストローム』と『蒼嵐覇竜 グローリー・メイルストローム』。
クロスライドしたグローリー・メイルストロームで戦う構築になっているのだろう。
「いいデッキじゃないか。十分戦えるよ。」
「うん。いつもグローリー・メイルストロームにライドすることはできるんだ。
でもグローリー・メイルストロームのスキルが通じなくて。」
グローリー・メイルストロームのスキルは相手のグレード1以上のガーディアンコールを封じるスキル。
完全ガードやクインテットウォールといった強力なガードをガーディアンとして置くことを封じることができるスキルである。
「スキルを使っても、どうしても相手が手札にため込んだグレード0をガーディアンに使ってくるから・・・・・・
グローリー・メイルストロームの攻撃はヒットしないんだ。」
「なるほど。確かにグローリー・メイルストロームのスキルはグレード0のガードを封じられない。
パワーが際立って高いカードじゃないから防がれてしまうことも多いだろうね。」
「近くに住んでる友達は言うんだ。そんなカード使っても勝てないって。
でも、でもこのカードはお兄ちゃんからもらった宝物のカード・・・・・・いや、宝物のデッキなんだ!
だから僕は、このカードで戦いたい!このカードで勝ちたいんだ!」
「マルコ、お兄さんがいたの?」
「あ、いや・・・・・・僕のお兄ちゃんじゃないんだ。このあたりを歩いてた時、偶然そのお兄ちゃんと会ったんだ。
そのお兄ちゃんからヴァンガードを教わって、このデッキももらったんだ。」
「そっか。それが君とヴァンガードの出会いだったんだね。」
「うん。だから僕はこのカードで戦うんだ。このカードで勝ちたいんだ。」
「うーん・・・・・・ハートに来たーーーーーーー!!!」
「え・・・・・・?」
突然大声を上げるハイメにマルコは目を丸くした。
「いいじゃないか!ヴァンガードとの出会い、そしてそのユニットと共にファイトを決意するマルコ!
運命以外のものを感じられないよ!」
「あ、ありがとう・・・・・・ハイメお兄ちゃん。」
「そうだな。グローリー・メイルストロームで戦うなら、このカードをあげるよ。」
ハイメはポケットからカードを4枚取りだし、マルコに手渡した。
「このカードは?」
「そのカードは蒼嵐水将 デスピナ!スキルは・・・・・・」
その時だった。空家の扉が突如開いた。そして大柄な男が中に入ってきた。
「マルコォ!」
そう叫びながら大男はマルコの方を見た。
「ぎゃ、ギャラン!?」
「ギャラン?」
「この辺りのスラムで一番の乱暴者なんだ!!喧嘩もカードファイトも強くて・・・・・・」
「マルコ、お前がこんないい家に住んでるなんて初めて知ったぜ。
馬鹿ギャングにカードを取られたり、そもそもファイトもへぼなお前が、こんないい家にねぇ。」
「な、何しに来たの・・・・・・?」
マルコはおびえた目でギャランを見た。
「この家、俺にくれよ。お前みたいなへぼは宿なしがお似合いだぜ。」
「そ、そんな・・・・・・嫌だよ!ここは僕の・・・・・・」
「逆らうのか?拳で黙らせた方がいいか?それともへぼファイターの腕前を見せてくれんのか?」
「うぐっ・・・・・・そ、それは・・・・・・」
「見せるよ。腕前を。」
「あ?てめえはさっきマルコをかばってた奴か。こいつに知恵でも入れてやってたか?」
「まぁいいじゃないか。君はファイトの腕前が見たいんだろう。なら見せてあげるよ。」
「ほぉ、お前が相手してくれんのかぁ?」
「相手をするのは俺じゃない。そして君が言うへぼファイターでもない。
ここにいる一人のヴァンガードファイター、マルコだ!」
「へっ、笑わせてくれるぜ。へぼはどう知恵使ったってへぼのままさ。ならこの家を賭けてファイトだ、マルコ。
負けたら俺は二度とこの家には来ねえし、お前から何も取り上げない。
だがお前が負けたら、この家はその時点で俺のものだ。いいな?」
「え、えーと・・・・・・」
足を震わせるマルコの肩にハイメはそっと手を置いた。
「君なら戦えるよ、マルコ。君は一人じゃないからね。・・・・・・そうだろ?」
そう言ってハイメはマルコにデッキを手渡した。マルコはデッキを受け取った。
「一人じゃ・・・・・・ない・・・・・・」
「準備はできたのか?マルコォ!!」
「・・・・・・うん!」
マルコの目が変わった。おどおどしていた目つきから、勇敢なファイターの目つきへと。
「ファーストヴァンガード、セット!行くよ!」
『スタンドアップ・ヴァンガード!!』
「蒼嵐候補生 マリオス!!」
「レッドパルス・ドラコキッド!!」
「先攻は僕だ!ドロー、蒼嵐水将 ヘルメスにライド!」
「ライド!ワイバーンストライク ギャラン!アタックだ!!」
「ノーガードでダメージ・・・・・・外れだね。僕のターン!蒼嵐水将 グレゴリオスにライド!」
「ライド!ワイバーンストライク テージャス!!」
「蒼嵐竜 メイルストロームにライド!!アタック!!」
「ノーガードだ。」
「ドライブトリガー・・・・・・クリティカルゲット!」
「ちぃ、2ポイントのダメージだ。」
マルコの手札は5枚。ダメージは2枚。対するギャランは手札6枚にダメージ3枚。
「行くぜ、暴れてこいやぁ!!ライド!ダブルペリッシュ・ドラゴン!ライド時にコストを払い、マリオスを退却!
そして手札のラーヴァフロウをコストに、ジェネレーションゾーン解放!
ストライドジェネレーション、神竜騎士 マフムード!!アタックだ!!」
「うぅ、ノーガード・・・・・・」
「ドライブトリガー!クリティカルトリガー、ダブルゲットだ!!これで3点ダメージ!
そしてお前のリアガードのグレゴリオスも退却させてやらあ!!」
「うあ!!」
これでマルコのダメージは5枚となり、リアガードは全滅してしまった。
「へっ、俺の手札は9枚。これで負けはねえよ。これでここは俺の住処になるわけだな。」
ギャランはどうだと言わんばかりにハイメを見た。
「そう決めつけるのは早いよ。それに、マルコには新しい力がある。」
「新しい力ぁ?」
「僕のターン、スタンドアンドドロー!」
『風を縦糸、海を横糸に紡ぎし竜よ!我が想いに応え、真の姿へ!
クロスライド!!蒼嵐覇竜 グローリー・メイルストローム!!!』
「へっ、前から使ってたグローリー・メイルストロームかよ。
だが俺の手札にはさっき加えてグレード0のガーディアンが2枚。ガードは余裕だぜ。」
「コール、タイダル・アサルト!メイルストローム!そして蒼嵐水将 デスピナ!!」
「デスピナ?見た事ねえが、それが新しい力、ってかぁ?」
ギャランはデスピナのカードを見た。
「くっく・・・・・・はーはっはっはっは!こいつは傑作だ。グレード0が新しい力だと?」
「バトル!タイダルでヴァンガードに二回連続攻撃!そしてメイルストロームでもアタック!」
「すべてノーガードだ。ダメージでドロートリガーゲット!これでガードは完ぺきだぜ。」
「デスピナがブーストした、グローリー・メイルストロームでアタック!
グローリー・メイルストロームのスキル!カウンターブラスと1枚でパワープラス5000!
そして相手はグレード1以上のガーディアンを手札からコールできない!」
「だがグレード0のガーディアンはコールできる、ってか。」
「そして同時にデスピナのスキル、発動!!」
「ああ?そのグレード0のカードに何ができるってんだ?」
「デスピナがメイルストロームをブーストしたとき、それがこのターンで4回目以降のアタックなら・・・・・・
相手はグレード0のガーディアンをコールできなくなる!!」
「んだとぉ!?なら完全ガードで・・・・・・はっ!?」
「グローリー・メイルストロームのスキルでグレード1以上のガーディアンコールは封じてるよ。
そしてデスピナでグレード0のガーディアンコールは封じた。この意味が、分かるよね?」
「が、ガードができねえだとぉ!!?」
「ドライブトリガー、チェック!!クリティカルトリガーゲット!!」
「何ぃ!!?」
「2ポイントのダメージだよ、ギャラン。これでヒールが出なければ、僕の勝ちだ!!」
「だ、ダメージ・・・・・・ひ、ヒールトリガー、でも・・・・・・」
ヒールトリガーの発動段階でギャランのダメージは4でマルコのダメージは5である。
つまり、ヒールトリガーで回復することはできない。
「も、もう一枚!もう一枚ヒールトリガーを、俺に!!!チェック!!」
めくったそのカードは、ダブルペリッシュ・ドラゴン。ヒールどころか、トリガーユニットでもないノーマルユニットである。
「こ、これで6点・・・・・・俺の負けだとぉ!!?」
「勝った・・・・・・僕が、ギャランに勝った!勝ったんだ!!」
マルコは喜びを表すかのようにとび跳ねた。
「・・・・・・ぐっ、マルコに負けた、か。約束だ。もう二度とここには来ねえし、お前から何も奪わねえよ。じゃあな。」
「あ、ま、待ってギャラン!」
「・・・・・・なんだ?」
「また僕と、ファイトしてくれる?」
「・・・・・・ふざけんな、もうここには来ねえ。」
「なら僕が君の所に行く!君の所に行って、僕がファイトを申し込むよ!」
「っ・・・・・・ふざけん」
顔を引きつらせるギャランの手とマルコの手をハイメは取った。そしてその手を重ね合わせた。
「君たちはお互いの魂をぶつけ合ってファイトをした。つまり、君たちはもうアミーゴさ!」
「あ、アミーゴだぁ?」
「友達・・・・・・そうだ、そうだよギャラン!僕と、僕と友達になってよ!」
「あぁ!?誰がてめえなんかと・・・」
「違うよマルコ!君とギャランはすでにアミーゴさ!」
「本当!?」
「うん、もちろんさ♪」
「はぁ?待て、勝手に決めんな・・・」
「ありがとうギャラン!またここに来て、一緒にファイトしようね!!」
マルコはギャランに飛びついた。ギャランは顔を引きつらせてマルコを引きはがそうとした。
しかし、その行動も途中で止まった。
「・・・・・・ちっ、暇があったら、また来てやらあ!それからなマルコ!さっきの約束は全部撤回だからな!
俺はこれからもここに来るし、お前から絶対に『勝ち』を奪ってやるから覚悟しとけ!」
そう言ってギャランはマルコを体から離し、去って行った。
「さて、俺もそろそろ行くよ。」
「あ、ハイメお兄ちゃん!お願いがあるんだ!」
「ん・・・・・・なんだい?」
「僕、今日は勝ったけど、まだ下手だから・・・・・・僕が強くなったら、僕とファイトしてほしいんだ!だ、ダメかな。」
ハイメは不安そうな顔をするマルコの頭に手を置いた。
「もちろん、大歓迎だよ。君の挑戦を、心から待ってる。」
「・・・・・・うん!ありがとう、ハイメお兄ちゃん!!」
「アディオス、アミーゴ♪」
こうしてハイメはスラムを去り、パリに戻った。ホテルに帰るとオーナーがすぐにハイメに駆け寄った。
「何をしていんたんだハイメ!あれからずっと帰ってこないから心配していたんだぞ!」
「ごめんごめん。ちょっと街をぶらぶらしてたら道が分からなくなっちゃって。」
「まったく・・・・・・まぁ君が無事でよかった。部屋に戻ってテーブルで待ってな。ディナーを持っていくから。」
「グラシアス♪」
ハイメは夕食を済ませた後、すぐにデッキを取りだした。
そしてハイメは自分の納得いくまでデッキの調整に没頭したのであった。
昨日のファイトから一夜が明け、ハイメは試合会場に立っていた。
世界でも指折りの実力を持つ日本人ファイターを前に、激戦を繰り広げている。
『さあ、ハイメは嵐を超える者 サヴァスにライドした。
一方、櫂はどのようなユニットにライドするのか!!期待が高まります!』
「・・・・・・行くぞ、ハイメ・アルカラス!!」
『ライド・ザ・ヴァンガード!紅きに染まる黙示録の雷を纏い、天空に顕現せよ!ドラゴニックカイザー・クリムゾン!!』
「双闘カード、ドラゴニックカイザー・クリムゾン・・・・・・レギオンメイトは・・・・・・」
ハイメは驚くことはなかった。クリムゾンがレギオンメイトに指定するカードは一種類。
そのカードを実際のファイトで目にしてから24時間も経過していないであろう。
『シーク・ザ・メイト!天地に迸れ黙示録の雷よ、今ここに真の力を解き放て!
ドラゴニックカイザー・ヴァーミリオン!!双闘!!!』
「ドラゴニックカイザー・クリムゾン、ドラゴニックカイザー・ヴァーミリオン、双闘アタック!!
轟け、深紅の黙示録の雷よ!エターナル・クリムゾン・サンダーボルト!!」
「ぐあああ!!!!」
『おぉっと双闘アタックが決まった!!ハイメのリアガードも共に消滅!これは絶体絶命か!?』
「ぐぅ・・・・・・」
ハイメはうずくまった。そして、叫んだ。
「ハートに・・・・・・来たーーーーーーー!!!!!」
その叫びはエキシビションマッチの観客全員の耳に響いた。
「さすがだね、櫂!やっぱり君の実力は昨日の比じゃなかった!」
ハイメの不敵の笑みに櫂も少し笑みを見せた。
「お前もあの程度の実力じゃないことを、見せてくれるんだろう?」
「もちろんさ!!俺のターン!ジェネレーションゾーン、解放!!」
『進め!我が導く運命の航路!ストライド・・・・・・ジェネレーション!!!』
「天羅水将 ランブロス!!さぁ、櫂!」
『ハートが震えるファイトにしよう!!』
二人は心行くまでファイトを続けた。
観客も実況さえもそのファイトの白熱ぶりに魅了され、声を上げることはなかった。
そしてこの激戦が終了したその瞬間、
街中いやフランスの国内すべてに響くかのような巨大な歓声がわきあがったことは言うまでもない。
エキシビションマッチの終了後、ハイメは次のファイトの予定が入っているイタリア・ミラノへ向かっていた。
機内で櫂とのファイトのこと、そしてマルコのことを思い出しながら。
「またいつか戦えるよね。櫂とも、マルコとも・・・・・・」
意気揚々と外を眺めるハイメの耳に突如として声が聞こえた。
「お客様、お飲み物はどうしますか?」
「おぉ、キュート!!飲み物はいいよ、それより俺と恋のアバンチュールしないかい?」
「え、いや・・・・・・あの・・・・・・お客様?」
キャビンアテンダントの苦笑いも含め、機内の乗客たちから笑いがこぼれたのであった。
登場人物振り返り(あとがきを兼ねて)
ハイメ・アルカラス
今回は正義のヒーローのように書いてみました。やはり私の中でアクアフォースの「正義」はぶれないので、ハイメ君が子供を助けるヒーローになるお話にしたかったんですね。ファイト描写はかなり少なく、むしろ新しいファイターを導く『先導者』としてのポジショニングにさせてもらいました。ちなみに最後のファイトの結果は皆さんでご想像ください♪そして最後の最後で女性の口説きを入れることができました。ハイメ君を書くのならここも書きたかったので(笑)ハイメ君のかっこよさ、コメディ要素をふんだんに取り入れることができたかなと思っています。
櫂トシキ
最後のファイトでようやく名前を出しました。ヨーロッパに行くというレギオンメイト編最後のセリフをそのまま流用し、ハイメとのエキシビションマッチの相手ということで参加させました。まぁぶっちゃけ櫂君とクリムゾンを書きたかっただけだったりするんですけどね。セリフや性格はどちらかというと二期・三期あたりの感情が少しくらい出る櫂君に近いですね。レギオンメイト編で見せた感情豊かな櫂君は私には難しいです(苦笑)
マルコ
オリジナルキャラクターですね。名前は適当です(笑)ハイメと同じくアクアフォースを使う子供を書いてみたかったので、せっかくならランブロス、クリムゾンと合わせて風華天昇販促に徹底してみようという私のブシロード魂からグロメデスピナを使わせてみました。グロメデスピナでガードを封じ、そして最後にクリティカルトリガーを引き勝利する、というファイトシーンは上手く書けたかなとか思ってみたりします。
ギャラン
オリジナルキャラクターパート2です。アクアフォースが一番嫌いな相手って何?と考えた時にリンクジョーカーかかげろうだったので、一般キャラが使ってて違和感のないかげろうを使わせました。マルコとギャランのこれからのヴァンガード人生がどうなるのか、想像していただけたらなと思います。
オーナー
こちらもオリジナルキャラクターです。冒頭と終盤、そして実況もオーナーだったという設定です。ちなみに名前はルチアーノといいます。由来はルパン三世VS名探偵コナン見た後だからです。ただこっちのルチアーノは別に悪者じゃないですよ。
ギャング×2
オリジナルキャラクターです。風華販促キャラですね。グレネを使わせてみました。ただ話のテンポの問題で超越させることができなかったのは悔やまれますね。
今回の舞台であるフランス、パリの近辺の事情は実はよく知りません(笑)ただどこの国も都市部周辺は流通の関係で過疎化してしまうことが多いものなので、それをイメージしてパリ周辺のスラムという舞台を作ってみました。いつかフランスに行ってみたいものですね。
最後に、読んでいただいた皆様。本当にありがとうございました!
ヴァンガードG外伝 「先導者・ハイメ」