夢のはなし(創作GL)
千田
語り手、前川の事が友人として好きなのか、恋愛対象として好きなのか迷っている
本人は恐らく恋愛対象として好きだったのではないかと思ってはいる
BLなどを好む所謂腐女子
高校一年が終わろうとしている今も前川の事を引きずっている
前川
BL、ハードなエロ等を嫌うサバサバとした女の子
中学の頃千田と同級生で、中学一年のまでは友人として千田と接していたが中学二年の春、突然千田を避け出す
高校は千田とは別の公立高校に通っている
ファンタジーな甘さを孕んだ苦い夢を見ていた
夢を見ていた。
それは起きたからそう言えるのであって、私の場合明晰夢というものは見たことがない
だから現在進行形ではなくこんな書き出しで始まるのだ。
幸せな夢を見ていた、と。
その夢では、私は前川と楽しそうに談笑していた。
だからと言って中学時代ではなく、恐らくはそれから何年か経っている設定だったように思える。
よく覚えてはいないが、確か私は何かで負けて、死ななければいけなかったような気がする。
敗軍の将といったところだろうか。
前川とは敵対していて、私が死ねば全て終わるはずなのにそれを提案すると「まだいい」と首を振るのだ。
夢だと気づいていないのだからもちろん死ぬのは怖かったが、前川の為なら死んでもいいような気がした。
前川には好きな人がいて、しかしそれは片想いだという話を聞いた気がする。
こんなに仲良く話せているのに、やはり彼女は私を好きにはなってくれないのだろうか、と悲しくなった。
当然だが彼女が好きなのは男で、それは異常なものを嫌う彼女らしいと夢の中でも納得していたが、やはり悲しかった。
夢の中ですら夢を見させてくれないのだから、中々に私の脳は私に意地悪だ。
ああでも、一度だけ夢を見させてくれたのだった。
それはその前の彼女の発言を考えると、ちっとも甘いものはなかったのだが。
彼女が、私に「千田の事、大好きだよ」と言ってくれたのだった。
心臓が飛び上がる程嬉しかったけれど、同時にその『好き』は友愛としての意味なんだろうな、と酷く虚しくなった。
そして私は言ったのだ「うん、私も大好きだったよ」と。
この夢を見て私はまた前川のことを好きになってしまったし、本当に恋愛的な意味で前川の事が好きだったのだと確証が持ててしまった。
なんだか今すぐ泣きたい気分だ。
もうすぐ3年経つというのに、まだ前川の事を引きずっている。
そして今日はバレンタイン。
確かに前川が友好的に私と話してくれるだけでチョコ以上に甘すぎる夢だったが、一皮むけばこんなにも苦くて胸が苦しくなる。
「大好きだよ」と、その一言だけで、再び私を過去に縛り付けた前川がやはり嫌いで憎くて、どうしようもなく大好きだ。
夢のはなし(創作GL)
夢の突拍子のない雰囲気と朧げな記憶を演出してみたかったのですが、小説にしてみたらただの説明不足になってしまいました