とある学園都市の超能力者
「会長、判子をお願いします」
「はいはい」
「ありがとうございます」
「ふぅ」
ただただ判子を押して家に帰って、ご飯を食べて寝て。朝起きて出勤して資料読んで、勉強して・・・そんな毎日の連続。
「会長、元気ありませんね」
「そうだね」
「どうしたんでしょうか」
「知らんよ」
「これから調印式だからでしょうか」
「それもあの人が決めたことでしょ」
「そうですけど」
「ホラ、話してないで仕事をする」
「はーい」
どうも。自己紹介をしていませんでしたね。白河桜です。肩書きは、桜林学園都市常盤台中学高等部1年Sクラス所属桜花会会長兼厚生労働省医療過誤死関連中立的第三者機関設置推進準備室室長兼科学省ESPセンター中立的第三者機関設置推進準備室設置準備委員会委員長兼国家安全保障省長官。
クソ長いです。
「・・・帰る」
「え!? いやいやいや。これから調印式ですよ!?」
「それまでには戻る。これからって言っても、後3時間あるし」
「いや、そうですけど・・・」
「それじゃ」
何の調印式かというと、桜花会に変わって、評議会を正式な政府として承認・全権委任するための調印式である。
桜花会は、先の事件をきっかけに、国民による反政府デモにあい、当時の臨時会長を務めていた白峰会長代行により一度解散を宣言された。
桜花会とは・・・。桜花会というのは、黄燐学園都市国家の政府。行政・立法機関で、その頂点たる会長は、この学園都市国家の国家元首であった。だが、その桜花会会長が殺人事件を起こしてしまった。それも、自国民を殺めてしまうという大罪だ。
会長がそれを起こしてしまったのだ。殺人・国家転覆・国家反逆・内乱・騒乱・偽計業務妨害・威力業務妨害等々計29の罪に問われ、学園最高裁判所の判決により、執行猶予なし、情状酌量なしの死刑判決が下された。
当然といえば当然ではある。
解散した桜花会の後を引き継いだのが、理事会だった。理事会は臨時政府として発足したが、数日経たないうちに名称を馴染み深かった桜花会に変更し、初代理事長に現桜花会会長である、白河桜が就任した。
しかし、その新生桜花会も白河会長の所信表明演説により、短命の臨時暫定政府であることが告げられ、桜花会の立法権・司法権を除く、全ての権限を新政府として新たに再発足する評議会に委任することが表明された。
そして今日、その委任調印式が行われるのである。調印内容は、①桜花会は、司法権、立法権、軍事権、外交権、財源調整権以外の全ての権限を評議会へ委任すること、②桜花会臨時暫定政府は体制を評議会へ以降後も、任期中は、白河会長をその職に留めることなどを盛り込んでいた。
当初、評議会へ全ての権限を移行して、桜花会をそのまま解散させるはずだったが、白河会長への圧倒的支持により、全権移行を目指していた評議会は、その方針を変更せざるを得なくなったのだ。
結局、会長の所信表明演説では司法・立法両権限以外の全ての評議会へ移行されるとしたが、最終的な意見交換により、司法権、立法権、軍事権、外交権、財源調整権以外の権限を全て移行することで最終的に進められ、現在に至った。
なお、現在の評議会議長は、白河桜だが、新政府発足時に、議長の座を、副議長に譲ることで合意している。
「長い説明」
「気にせんでください。われわれ新聞社の書く記事なんてどれも長いものばかりですから」
「それで、会長。これから会長はどうするんですか?」
「・・・どうするんだろうね」
「え゛」
「さぁ。わかんない」
「いやいやいや。それじゃあ世論も納得しませんよ」
「そうだろうね」
「そうだろうねって・・・」
「世論はさ、桜花会から評議会への体制移行も納得してないんでしょ? だったら、私のこれからが適当になっててもさ、別にいいんじゃない?」
「て、適当すぎる・・・」
「でも、この適当さがあったから、桜花会は評議会への桜花会にとってこんなにいい条件で体制移行ができるんじゃないですか?」
「そうですね」
「さて、そろそろ調印式ですか」
「会長、意気込みを」
「意気込み? そんなのないよ。ただ、しっかりと文章は最後まで読む、かな?」
「そうですね」
「さて、行きますか」
とある学園都市の超能力者