コロボックルと桜座流星群㊦-①

― 翌朝の学校 -

今日僕は誰よりも早く学校に登校した。
誰にもこんな思いつめた顔は見せたくなかった・・・。
僕の席は窓側、一番後ろ。
その席から僕は春風に揺れる桜の木をただただ見つめていた。

翌朝の学校は何も変わりはない。
この風景がもう少しで見られなくなると思うと
僕はプレッシャーに押しつぶされそうになる。

(僕が・・この・・・この世界を・・・)

ガラッ
勢い良く教室の扉があいた。

『おっはよ~』
『おはようございます。 ハナもうちょっと静かにドア開けてね。』

〈ハルちゃんハナちゃんおはよ~)
クラスの女子が嬉しそうにハルとハナを迎える風景を見て僕は
少し神官になるということを決心ずいたのかもしれない。

『おはよ~ルイ!いつもながら早いね。』
『おはようハナ。そんなことないよ。』
『おはよう。ルイ。』
『おはよう・・・ハル。』
『・・・?どうしたの、なんか元気ないよ。』
『そういえばそうだね。どうしたのルイ。具合わるいのか?』
ハルとハナは僕をみながら言った。
『大丈夫だよ。』
『そう・・・。あっ!それよりルイ!』
『えっな、なに?』
ハナが思いだじたように言った。
『今日!ルイ。また一緒に行くよね!』
『・・・どこに?』
『どこって、桜如神社に決まってるじゃん。』
!!!
『・・・・・・。』
『・・・ルイ?』
『・・・えっ、あ、う、うん・・いこうかな。
今日もお邪魔するよ。』
『それじゃあ決まり!今日も頑張ろうねハル!』
『・・・・えっ・・あ、うん。がんばろ。』

ガラッ

『席に着け~HRはじめるぞ~』

ザワザワ・・
みんな席に向かうそのなか。
『ルイ・・・。』
ハルが小声でしゃべりかけてきた。
『ルイ・・・なんか元気なくみえる・・・ホントに大丈夫?』
『・・・大丈夫。それより席に着いたほうがいいぞ。また注意される。』
『うん。でも悩み事があれば相談してね。』
『・・・・うん。ありがとう。』
ハルは優しく微笑んで席へと戻っていった。

「悩み事かぁ・・・・僕には・・・今相談相手なんか・・・いないよな・・。」
ルイは窓の外を見ながら誰にも聞こえない声でつぶやいた。



― 桜如神社 -

桜如神社の階段を上がると神官様が境内の掃除をしていた。

『こんにちは~神官様。』
『こんにちは。神官様』
『今日は早いですね。こんにちは。ハルさんハナさん・・・ルイ君も。』
『こんにちは。』
『では、私たちは練習しますので先行ってますね。』
『あっ、ちょっと待ってください。』
『はい?』
『今日は、私たちから少し大事な話があるので舞の練習はありません。
でも、本堂に入るので巫女衣装は着て本堂の中で待っててください。』
『・・・お話ですか・・わかりました着替えてきます。』
ハルが不思想に言ってハルとハナは本堂の中に消えていった。

『・・・・話すんですね。』
『・・ルイ君、まだ悩んでますか?』
『・・・少し、けじめがつけれなくて・・・。』
『・・・・誰でも初めは悩むんですよ。』
『・・・神官様も神官になるって言うときは悩みましたか?』
『・・・そうですね・・・あまり良く覚えてないんですが・・・。なにせ200年前ほどたつので・・・。
たぶん・・・・とても悩んだと思います。神官になればこの国の結界を張らなければ
ならないのでこの国の外には出れなくなりますし、右目は魔力を使いこなすため
見えなくなってしまいます。』
『なら・・・。どうして神官になったんですか?』
『・・・・きっと、たくさんのコロボックルを守りたかったから。だとおもいます。』
『・・・守りたかった・・から・・・・。』
僕はこのとき神官はこの国、この世界を守ってるんだなと思っていた。
『きっと、先占代の神官もこんな気持ちで継いで言ったとおもいます。
ルイ君もそうおもってるでしょう。』
『・・・・・僕はハルとハナ、この国の人を守りたい。・・・必ず。』
神官様は優しく笑っていった。
『その気持ちがあれば必ずやり遂げられます。』
『・・・はい。・・・神官様。』

― 僕はこの時の言葉で決心できた。 -
『なんでしょう。』
― 必ず神官になり守ると。 -
『これからよろしくお願いします』
それを見た神官様はとても嬉しそうに
『こちらこそ。』
そういった。


― 本堂内 -

本堂内に入ると巫女姿のハルとハナが待っていた。

『お待たせいたしました。そこに座って下さい。』
『はい。』
2人は声を合わせて答えた。

『お話は少し長くなるので楽な格好で聞いてください。』
そう神官様がいったが誰も正座を崩すものはいなかった。
それから神官様はハルとハナの正体、これからの国の事、
これから何をすべきか、理解しやすく話していった。

それを聞いて2人は泣きそうだったが黙ってうなずいていた。
話が終わると。
ハナが珍しく泣いていた。僕はハナの泣く姿は生まれてはじめてみた。
始めてみるのはこれだけじゃなかった。
僕は彼女をみて目が離せなくなっていた。
自分が死ぬかもしれない状態なら、泣き喚いたり暴れたりすることが多いとおもうが
彼女はちがった。

彼女、ハルは、今までみた事も無いハルのたくましい顔があった。
いつもニコニコしていてどちっかっていうとハナより泣き虫なハルが
とても凛々しく、とてもまっすぐな目をしていた。

ハルは口を開いた。
『・・・・ハナ。心配しなくても大丈夫だよ。』
『えっ・・』
『大丈夫。私が・・・死ぬから。』

!!!!!!!!
『なっ!なにいってるの!』
『・・・この国は双子は必要とされてない。でもハナはこの国には必要。
私が死ねばむはなしなの。』
『馬鹿いわないで!』

パッンッ!!!!!
ハナがハルを叩いた、

『ハナだけじゃない!ハルも必要なの!!ハルはこの国に必要!!!たとえこの国の人が
ハナがいらないって言っても!わたしには・・・わたしには!ハルが必要なの!!
ハルは死ぬのが怖くないの?!』
『・・・・怖いよ・・。怖いよ!!死ぬなんか怖い!でも・・でも・・・
みんなが死んじゃうのはもっと怖い!!!!!』

!!!!!

僕はこのとき胸がとても痛かった。
こんなハルをみてるのなんかいやだった。
黙ってるのが我慢できなかった。

『ハルは・・・ハルは自分だけが犠牲になればいいっておもってるのか?!』
僕は生まれて初めてこんな大きな声をだしたとおもう。

『・・ちっちがう・・・』
!!
『・・ちがう・・。わたしは・・・私は・・・自分が出来る事をしたかったの・・・・。
私ずっと神官様の話ししてるときずっとおもってた。
皆に生きてほしかった。
私たちのせいでみんなが死ぬのなんかぜったいイヤだ。
でも死ぬのは怖いの・・・こんな・・こんな弱い私は大嫌いなの・・・。
一番わかってるからこそ知るのが怖かった。
こんな話されなかったら私は100年200年もっともっと
生きていたい・・・・死にたく・・ない・・・死にたくないよ。』
ハルは泣き出した。ずっと堪えていたのだろうか彼女からは涙が溢れ出していた。』

『お姉ちゃん・・・。』
ハナの口が開いた。
『お姉ちゃん・・・・私は死なない。』
『うん・・。』
『・・・・私は死なない。お姉ちゃんも死なない。学校の人たち、村の人たち、
みんなみんな生きるの!!お姉ちゃんが死ぬなんか許さない!!!』
ハナが力強く言い切った。
『そうだ。僕もハルが死ぬなんてゆるさない。ハナも死なない。』
『でも・・・でもっ!『これ以上自分を犠牲にしてもたぶんハルの思い道理にはならないぞ。』
僕は確信していた。
『もし仮にハルが死んだら、ハナも死ぬぞ。』
!!!!
『・・・どうすれば・・。』
『・・・助かる確率は以上に低いですがやらない価値はあります。』
神官様が言った。
『えっ・・・』
『そのために、ここにルイさんがいるのですよ。』
『・・ルイ・・。』
『僕は・・・僕はこの国の神官になるんだ。』

!!!

『ルイが神官!?でもルイ魔力の足りるの??』
ハナは驚いていた。
『神官になったらこの国から出られないし目も・・目も右、みえなっちゃうんだよ?!
ハナは心配していた。
『ルイくんはそれは承知の上です。それに・・
魔力のことは心配ありません。
ここからはあなたたちに話すのは初めてですね。
私は11年前ちょうどルイ君たちが6歳、学校の入学式の日にあることに気が付いた。
学校から強い魔力を感じた。いろいろ捜し歩きましたがみつからなかった 。
それから年を越すごとに魔力を感じなくなっていった。
しかし、一昨日ハルさんたちがルイ君を連れてきてくれて私は人目で確信した。
ルイ君は次の神官候補。
11年前わからなかったのは式中だったのでルイ君に近づけなかったから。
年を越すごとに魔力が弱まったのは魔力が封じる力が成長とともに強くなったから。
ルイ君は私をこえる神官になる。
これから魔力を使いこなせるよになるのはるいくんは3週間程度で僕にきっと
おいつける。』
『だから。ハルとハナこの国の人は僕も守れる。』
『なら・・・なら・・。私たちは死ななくてもいいってこと・・?』
『いいきれません。かなり成功率はひくいですが・・・。』
『ルイはいいの・・?』
ハルが言った。
『無理してないの?』
『僕はもうきめた。もう決心は揺るがない。』

『・・・・。』

『そっか・・。それじゃあ私は応援する。』
『・・・ありがとう。』
『私も!ルイを応援する。』
ハナが言った。
『ありがとう。頑張るよ。』

『・・・・・では・・早速ですが。ルイ君を神官にする儀式をします。
この儀式が終わったらいつもの私生活はできなくなります。
学校はもう行けません。家は桜如神社になります。』
『わかっています。よろしくお願いします。』
ルイの心はもう揺るがなかった。

『こちらこそよろしくおねがいします。・・・では準備をしましょう。
ハルさんハナさんは本番用の舞の巫女衣装を着てきて下さい。
着替え終わったら、ハナさんは境内の前にでで法縁(魔法陣)を描いて下さい。』
『はい。』

パタパタパタ・・・・

『神官様私はどうすればいいですか。』
ハナがきいた。
『ハナさんは私と一緒に来てください。』
『はい。』
『ルイくんは着物に着替えですね。』
『はい。』



― 境内前 -

着替え終わった僕は境内前にいった。
もう外は真っ暗。
いつもと違う巫女姿をしたハルがそこにたっていた。
月明かりで衣装がキラキラ光りとても綺麗だった。
『・・・ごめん。まったか?』
『ううn。大丈夫・・。』
『・・・・あの・・その格好・・・。とても・・綺麗だ。』
『//////・・・ありがとう。』
『2人もお待たせしました。それでははじめます。
ハルさんはこちらへルイ君はここにたってください。』
『はい。』

~~~~~~~~~~~~~~

神官様が集中し始めた。

周りが青白く輝き僕の周りを桜吹雪がつつんだ。
儀式が終わったのか桜吹雪がやんだ。
その瞬間意識が遠くなって僕はその場に倒れた。
意識が遠くなる中神官様の声が聞こえる。

『あなたは今日からこの国の神官。それを対価に右目を渡し魔力を秘める。

名は、「神官・凪(ナギ)」。』

コロボックルと桜座流星群㊦-①

㊦が長引いてしまいました。
①と②に分けます!!!!!
次回もがんばります。

コロボックルと桜座流星群㊦-①

  • 小説
  • 短編
  • ファンタジー
  • 恋愛
  • 冒険
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2012-02-21

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