夜想曲と醜いわたし

朝、起きた。ふと思った。

よく晴れた朝は憂鬱だ
静謐に包まれた夜の帳を破って訪れた
騒がしい朝の喧騒は
ただそれだけで――――――
―――を願ってしまうほどに
疎ましく、妬ましい
冷たく澄んだ朝の空気も
さわやかに通り抜ける風も
美しくさえずる雀の歌声も
それらすべてが喧しい
ああ、どうして世界は
こうも美しいもので溢れているのか
もしも、この世が誰かの言うように
汚く、醜くあるならば
どれほど心は平和だろうか

ああ、往来で笑う恋人たちよ
まるで世界が薔薇色だというような
楽しげな笑顔も笑い声も聞かせてくれるな
恋愛がどうしようもなく
幸せなものなのだと思えてくるじゃないか
(本当は、ただの醜いナルチシズムのくせにね)

ああ、往来で笑い転げる子どもらよ
なにが楽しいか知らないが
そんなに愉快な声をあげてくれるな
世界がどうしようもなく
面白いものだと思えてくるじゃないか
(本当は、残酷で幸福な無知ゆえなのにね)

ああ、往来で微笑む家族よ
何気なく手を握り合って
それだけで安心だというような顔をしてくれるな
人がどうしようもなく
尊いものだと思えてくるじゃないか
(本当は、ただの勘違いだというのにね)

朝の晴れやかな空気がやってくる
注ぎ込む朝の陽光を受けて
抱いた義憤は、露と消え
願った理想は、霧となる
ああ、今日も朝がやってくる

今日も変わらず朝が来た

夜想曲と醜いわたし

夜想曲と醜いわたし

朝起きたときの憂鬱さ。 そんな感じ。

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-02-11

CC BY-NC-ND
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