掌編集 -まひるのりんご-
短編集です。詩や、小説関係なしに書いていきます。
片思い
あぁ。どうしたものだろうか。
私がぼぅっとしている間に、あの人はどんどん遠ざかる。
会いたくても会えなくなり、話したくても話せなくなる。
まだ、きちんと思いも伝えてないのに
あなたはどんどん離れていく。
あぁ。こんな事ならば、恋なんてしたくなかった。
りんごとコーヒーとレモン
恋の味って、甘くって酸っぱくって苦いって言うじゃない?
てことは、りんごとコーヒーとレモンをいっしょくたに食べた味と同じってわけ。
けどね、大人はそんなのまずいからやめろって言うの。
じゃあ、恋は楽しいものじゃなくって、まずいものなのかって聞くと、
甘くって酸っぱくて苦いものだっていうの。
だから、言ってみたの。 恋の味を再現しようとしてたって。
そうすると、大人たちは笑い転げて言うの。
そんなものは作れないと。
じゃあ、恋は何の味なんだろう。 今度自分で探してみよう。
歳を重ねて
小学校の低学年になると、幼稚園に戻りたいと思う。
高学年になると、低学年に戻りたいと思う。
中学生になると、小学生に戻りたいと思う。
高校生になると、中学生に戻りたいと思う。
大学生になると、高校生に戻りたいと思う。
社会人になると、大学生に戻りたいと思う。
小学生は、大人は楽だと思って大人になりたがる。
人間は、どうしてこんなに楽な道を選ぼうとするのかと考えるが、自分も楽な道を選ぼうとしていることがよくあると、思い知らされる。
ピエロの泣き顔
私はピエロ。私は道化師。可笑しな顔の面を剥がすと、全く違う顔が現れる。暗くて無口で人見知り。そんな素顔を隠すため、今日もまた面をつける。明るくおしゃべりで、人懐っこくみんなの輪の中心にいられる面。この面が外されるとき、私は私でいられないような気がする。そんな私に、一緒にいてくれる友達なんていない。「友達」という名の、他人なのだから……。
私はピエロ。私は道化師。いつもヘラヘラと笑って過ごす。人から何を言われても、悪口を言われ避けられても、ヘラヘラと笑ってスルーする。前は人と話せなかった私も、この面を被る事によりいろんな人と喋られるようになった。こんなに大事な面。これを手放す時はきっと死んだ時ぐらいかもしれない。そして今日もまた、お面を被る。ヘラヘラよ笑って過ごせば、何とかなる事は知っている。そうだ、何とかなる……。
私の面は剥がされた。笑ったピエロの面は、カランと乾いた音を立てて床に落ちた。その代わりに、暗くて無口で人見知りな私の顔が現れる。みんなの視線が痛い。痛い、いたい、イタイ……。やめてなんて言えない。嘘つきとまで言われた。ピエロの面は割れてしまった。ピエロだろうと、ずっと笑っている事は出来ない。そう思ったときには遅かった。もう、頬には涙が零れ落ちていた。声を必死に押し殺して泣いた。
「だいじょぶ?」そう声をかけられ顔を上げる。唯一、巣の私に声をかけてくれた女の子。もう、面は要らないのかも。そう思い満面の笑みで「だいじょうぶ」そう答えた。
掌編集 -まひるのりんご-
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