星降りの夜

進化と抵抗

「おーい、飯出来たけど食うか?」
男が声をあげると、彼の周りに集まってきたのは様々な種類の動物達だった。
犬、猫から始まり、リスやウサギなどの小型動物、鳥達も虎やライオンまでも一堂に会し食事をしている。

昔は捕食者と非捕食者という関係だった動物達もいるらしい。過去の文献によれば虎とライオンの生息地は全く別の場所らしいのだ。食糧を奪い合うどころか分け合うこともある。少し前に痩せた子ライオンを大鷲が男の元に連れてきて、餌を食べる様子を見届けてから安心したように去っていったこともあった。
要するに、現在の動物達の暮らしは昔とは全く異なるものになっている。

正確には、あらゆる生物の環境が変化してしまったのだ。
100年以上昔、この星に小型の隕石群が降り注いだ災厄「星降りの夜」により、多くの生物が絶滅、激減した。
人類も例外ではなく70億人のうち80パーセント程は死滅したと言われている。

しかし本当の恐怖は星降りの夜以降に特異な性質を持ち始めた、言わば進化した新たな人類によって引き起こされるのだ。

「兵器とかが敵う相手じゃないって・・・」
男は上空で爆発する戦闘機を眺めながら諦めと呆れを混ぜた言葉をため息まじりに吐いた。

特異能力を持つ「進化した人類」と能力を持たざる「進化できなかった人類」との戦争が始まったのは男が生まれるより前からだったが、勝敗は火を見るよりも明らかだった。
「進化した人類」にとって「進化できなかった人類」はもはや同じヒトではなかった。「進化できなかった人類」の多くはすぐに圧倒的な力の差を思い知り降伏する。そして動物達と共存しながら平穏な暮らしを選んだのだ。あの災厄以降、動物達が能力のない人間には心を開くようになった事もあったため難しいことではなかった。未だ争う姿勢を見せている者もいるが、いずれにせよ戦争はもうすぐ終わる。

男が思いを馳せたのは未来についてだ。
二分化された人類、絶対的な強者と能力のない弱者。
「世界はどうなるのだろうか 」



そして時は過ぎる。戦争が終わってから500年。「星降りの夜」から600年を経ても、災厄の火は燻る。
本当の夜明けはまだ来ない。

何気ない日常

「博士!博士!なんだこれ!?お宝って話だったじゃん!嘘つき!」
怒鳴り込んできた黒髪の少年は片手に紙切れを持ちながら、もう一方に持った物をカタカタ振っている。
「なんじゃ、やっと見つけたのか。コラ、乱暴に扱うな。 それはコンパスっちゅう代物でな・・・」老人が話し終わる前に「なんだよ!?この筒の中の針動かねーじゃん!俺は苦労してガラクタ探ししてたってのかよ!?」少年はふてくされた表情で、クルクルと底の浅い筒を回す。
「落ち着け、アクタ。 あぁ、だから乱暴に扱うな。 そのコンパスは方角を知るための道具じゃて、それがあれば地図も読みやすくなるはず・・・」
「そうだ、地図!やっと印の場所がわかったんだよ!それなのにそこに何があったと思う!?」アクタは持っていた紙を広げバツ印を指差す。
「ん?だから、そのコンパスじゃろ?」
「え?お宝の中身知ってたのか?」
「わしが置いておいたからな、当然じゃて」老人は何を今更、といった表情で答える。
「ちょ、ちょっと待て。その、こんぱす・・・って地図を読みやすくするものなんだろ?」アクタは状況を整理しながら聞く。
「そうじゃ」
「お宝の中身はその、こんぱす?で、お宝の地図を読んで・・・あれ?」
「お前さん、お宝とか言わないと探そうとせんじゃろ?」老人はニッと笑う。
アクタは表情をひきつらせた。

「な・ん・で!地図を読むための道具を探すために苦労して地図を読まなきゃならないんだよ!?」アクタが老人に噛み付いていると少女が小屋に入ってきた。
「ガウラ博士、ただいま帰りました。あれ?アクタ、こんにちは」黒の長い髪の少女はニコッとアクタに笑顔を向けた。
「エストロ!聞いてくれよ!」
「あ、コンパス見つけたみたいね。これで地図を読むのも楽になるよ」エストロも老人の策を知っていたらしい。エストロは続ける。
「始めは地図を読む苦労を知る事が大事なの。コンパスがあっても複雑な地図を読むのはそれなりに大変だ、って博士が言ってた」
「むむむ・・・でも」アクタは口ごもる。
「それに地図を簡単に読めるようになれば本物のお宝も見つけられるかもしれないからね!」エストロは自分の笑顔をアクタのふくれっ面に、ぐいっと近付けた。
「どうせ、アクタは食べ物かオモチャがお宝じゃろて」老人、ガウラ博士がからかった。
「うるせー、それ以外なら超能力くらいしかねーよ」アクタは軽くボヤいたが博士はピシャリと怒った。
「あんなモノを欲しがるな!ろくな事は何一つないぞ!」その後、博士の表情は悲しげに沈んだ。


超能力ーーずっと昔、この星に隕石が幾つも降り注いだ、らしい。その現象、「星降りの夜」によって生物はほとんど死んじゃった。鳥も牛も馬も魚も草木も何もかも、生き残ったのはごくわずかで、それは人も同じ。でも、一部の生き残った人間には火をおこしたり、水を操る、そんな特別な力が宿った、らしい。
超能力を持った人間、超人類。
そして持たざる人間、前人類。
昔の前人類は勝てるはずもない喧嘩をふっかけて、当たり前に・・・負けた。
そして超人類は大陸の中央部を我が物顔で偉そうに暮らし、前人類は大陸の端の方で細々と暮らしましたとさ。


これがアクタの知っている、前人類、自分達の歴史だった。だが、このガウラ博士は前人類とは少し違う。

「なあ博士、超能力って便利なものじゃなかったのか?『元』超人からして前人の暮らしってどうよ?」アクタは尋ねた。
「能力っちゅうものは使い方を間違えば大変なことになる。超能力ほど大きなものはなおさらじゃ。奴ら、超人類のほとんどが能力の正しい使い方を知らず、身勝手に振る舞い、前人類のことを人とすら思っておらぬ」
「あの塔を建てたのはどうして?」エストロが天高くそびえ立つ塔を指差しながら聞いた。
「大陸はあの塔に向かうにつれ、なだらかな山のように盛り上がっておる。ほら、この町からでもわかるじゃろ?だがな、あの塔は建てられたものじゃない。はるか昔、自然にできたものじゃ。突起した山頂だと言われておる」
「あんなのが勝手に出来んのか?自然って凄えな」
「その、すごい自然が作ったものを、好き勝手する奴らをどう思う?あの天辺から平原にある、この町を見下す奴らをどう思う?アクタよ」博士は問い返した。
「なんか・・・傲慢っていうのか?そんな感じだ」アクタは答えた。
「博士は、違うよね?そんな人達とは、ね?」不安げに聞くエストロと、俯き博士から顔をそらすアクタにガウラ博士は満面の笑みを向けて答えた。
「さぁのぅ?わしは昔は超能力を持っていたがのう。無くした今となってはどうじゃろう?偉そうに見えるかの?」
2人はホッとした表情になった。
「偉そうには見えないわね」
「ただの変なじじいにしか見えねーよな」アクタの憎まれ口も笑い流し、「そう見えてるんならわしは満足じゃて、超能力を無くして良かった」
「無くせるもんなのか?」
「さぁのぅ?どっかに落としてしまったんじゃろうて」ホッホッと笑う好々爺と2人も揃って、「ありえる」と笑った。


「じゃ、俺は家に帰るわ。エストロ、博士、じゃあな」
「おじさんとおばさんによろしくね」
「また新しい地図を用意しておくぞ。気を付けて帰れよ」


元々孤児だったエストロと元超人類だったガウラ博士は、一緒に暮らしている。
恐らく、似たような孤独感や疎外感を持っているからこそ、理解しあえるのだろうとアクタはいつも、帰り道で考えてしまう。「互いに踏み込めない心の距離」をも理解し合っているから、幸せに上手く暮らせているのかもしれないと思ったとき、アクタは言いようのない寂しさを感じるのだ。
「けれど、幸せならいいんだ。あの2人も俺も。そう、幸せだ」アクタは続きを考えないようにして、家へと向かう。


そう、幸せだ。・・・少なくとも、今は。

知らない記憶

エストロは本を読んでいた。
埃を落として丁寧に布で拭いたものの、ひどい傷やシミは取り除けない。ページをめくるにも気をつけないと崩れてしまう程、古い。博士によると貰い物らしいのだが、その時すでにボロボロだったという。


「西の民、古より、地の鍵を求める。
地の鍵により、眠りし物質の力を解き放ち、目覚めさせ、異なる性質を与えることにより、別の物質を生成することを目指す。
東の民、古より、天の鍵を求める。
天の鍵により、淀みし力の流れを解き放ち、目覚めさせ、引き合い、もしくは反発し合う性質を利用し、新たな流れを生むことを目指す。」


「博士、この本に書いてあること、さっぱり分からなくて・・・ この詩は何なの?」本をそっと閉じてエストロは顔を上げた。
「それでは、次はこっちの本を読んでみい。繋がりが見えるぞ」
そう言って手渡された本はやはり古びている。しかし、さっきの物よりはまだ傷みが軽い気もする。
エストロは本を開いた。


「東の果てを発って幾星霜、私は今、彼の山を越え、西側に足を踏み入れた。どうやらこちらで栄えているものは、私の故郷とは少し異なるものの様だ。
西では4つの元素を配合し、ある物質から別の物を作り出す技術が進んでいる。
東にある私の故郷では5つの力の流れを利用することで、自然現象を操るものであり、新たに物質を作り出すという発想はない。また、どうやら、西の元素と東の力には共通点も多くあるようだ。
しかし、4つと5つ。この数の差異は何なのだろうか?」


「物質を作り出す西と、力の流れを利用する東。4つの元素と5つの力。こっちの本は誰かの手記だよね?でも、さっきの詩にあった地の鍵と天の鍵って一体・・・」考えを巡らすエストロの前に、甘い匂いのするホットミルクが置かれた。
「正直、鍵の話はまだわかっておらん。が、エストロよ。 ここまで文字が読めるようになるとは大したもんじゃ、まぁちょいと一息いれなさい」
「ありがとう、いただきます」一口ミルクを啜り、エストロは聞いた。
「超人類はみんな文字が読めるの?」
「ほとんど読むことが出来ない、どうやら、文字は超能力とは全く別物らしい」
「じゃあ、博士は何で読めるの?」
「わしも始めはな、あの本をくれた者から教えてもらって読めるようになったんじゃ。 ただ・・・」
「ただ?」エストロは首を傾げた。
「同じように教わった者でも、読めるようになった者と、ならなかった者がおった。彼が言うには『血の記憶』によるらしいが、さっぱり分からん。」博士もまた、首を傾げたのだった。


エストロには思い当たる節があった。
博士から文字を教わったのはアクタも同じだったが、いまだに読める兆しがない。そういえば彼がかなり骨を折った地図もエストロにとっては難しいことは全く無かった。
(私の知らない、私の血の記憶・・・)
エストロは心の底よりも、もっと深い所から湧き出る重苦しい恐怖に震えた。

恐怖に押し潰されないように、つまりは、堂々めぐりの思考を打ち切るために、エストロは口を開いた。
「ねぇ、博士・・・その、文字を教えてくれた人ってどんな人だったの?」
「うーむ・・・説明しづらいのぉ、謎の多い奴じゃったし・・・一風変わった旅人でな、まぁ旅人自体が珍しいんだが・・・」ああでもない、こうでもない、といった感じで話し続ける博士を他所に、エストロはやはり考え込んでしまう。

(もしかすると、私は自分の事など、何も知らないのかもしれない・・・)
どうか思い過ごしでありますように、そう祈るしか無かった。

天上塔への侵入者

青年は窓から外の景色を見下ろしていた。はっきり見えるのは、いくつかの街とそれらを結ぶ整備された道。蜘蛛の巣のように張り巡らされた道の交わる所には建物がある。建物ーー関所の向こう、青年のいる場所からさらに離れた所は、濃い霧がかかっている。しかし、そこに街があるのもかすかに見える。
外界を広く見渡せるのは、青年のいる場所が高い位置にあったからだ。


天上塔・・・異常に突起した山頂はまさに、天に届きそうな塔のようだ。
いや、青年は窓から身を乗り出し見上げると、塔の頂上が雲の向こうに隠れている。 つまり、実際、天に届いているのだ。塔の上部に行くことが出来る者は、超人でも限られている。

超人でも、身分によって住む層が決められている。さらに身分の低い者は塔の外の街で暮らす。どうあがいても、差別は無くならない。超能力の力量でひっくり返るほど軽い身分だ、どうってことはない。誰もが差別しあって、ぬるい優越感に浸っている。

そんな超人類の浅はかさを知っていた青年は、霧の向こうに暮らす前人類に哀れみを感じた。
「いや、これも一つの差別だな」と、青年は自身に湧いた苦い感情のやり場に、いつも困るのだ。

青年は待っていた。さっき塔の入り口で起こった事を見ていたから、もうそろそろ、来るはずだと確信していた。

青年のいる階層に足音が響く。濃い茶色のローブを羽織った男、傍には動物がいる。生きている動物を、実際に見るのは青年にとっては初めてだった。
青年は男に向き直る。


「アンタ、何者だ?超人ではないよな」青年は問う。
「なぜ、俺が超人じゃないって言い切れるんだ?」このとき、男の顔を見た。若い。自分と同年代の風貌だが、放つプレッシャーと貫禄ある様子からは意外だった。
「超人に動物は懐かない、絶対にだ。屍なら見たことがあるが、生きた動物は初めて見る」
「そうか、こいつは狼だ、そして俺はただの旅人だ」男の言葉に青年は噴き出した。
「ただの旅人はこの塔に入ろうとしないだろう?まして、下の門番を脅してまで。 あいつら、仕事捨てて逃げてったぜ」青年は窓の外の方に顎をしゃくった。2人の屈強な男が凄い速さで塔から離れていく。よほど恐ろしかったのだろう。
「見られてたか」男は舌打ちをした。「お前、怖くないのか?あの様子を見てたなら、お前だって、あの2人の様に逃げたっておかしくない」
男の言葉は正しかった。あの門番達は、自身の能力をはるか上回る超能力でねじ伏せられた。奴らが死を感じてもおかしくはない程、圧倒的な力の差だった。
しかし青年は笑った。
「あいつら、あんなに速く走れるとは思わなくってさ。笑っちまった、気味が良いや、アンタに興味があったから、待ってた」
「俺はお前に興味はなかったがな」男は冷たく言った。そして続ける。
「ただ、笑った奴は初めてだ。」
男の顔は笑っていた。


「お前に外の事を少し教えてやる」男は言った。


そこでガウラは体を起こした。
(昔の事を夢で思い出すとは・・・)
今日、エストロに彼のことを少し話したからだろう。

超能力を使えるのに超人類ではない。
「今のわしがおるのはアンタのおかげじゃて、どうしてるかのぅ・・・」

ガウラは初めての友人と、初めての出会った日を懐かしみ。もう少し眠ることにした。

アクタの違和感

パンが入ったバスケットが置かれたテーブルを囲むのは、アクタと父のカーシュ、母のリリコ。いつも通りの朝、その日の天気や、仕事は変われど、それを含めて、全ていつも通りだった。
「父ちゃん、今日の仕事は?」パンをかじりながらアクタは聞いた。
「飲み込んでから、喋りな」リリコにたしなめられたので、ミルクでパンを流し込んだ。
「今日はな・・・麦を狩るのと、鉄鉱探しくらいか、麦の方は近所の皆でやるから、もう人手は足りてる」カーシュが話した。


この町では、いくつかの家で共有した田畑で農耕をする。種まきから収穫まで共同で行い、均等に分ける。
貴重な肉でさえ、皆で分け合う。そうしたくなるのだ。独占したい気がしないのは、前人類の歴史のせいだろう。奪い合うことの無益さを産まれた時から知っているのだ。
肉が貴重な理由は、動物を自分達の空腹を満たすために殺さないからだ。
これも、人類が二分化された時から動物達と前人類の仲間意識、共同体として暮らしているということが大きい。
共通の敵、超人類に対抗するために、染み付いた弱者たちの歴史。

他は各々が、町の外で鉄鉱石や木材、加工しやすい石などを収集する。それらを物々交換すれば、暮らしはそう広くない範囲でも完結するのだ。

「鉄鉱探しの方は手伝おうか?」アクタは言った。
「ああ、頼む、昼からの予定だ」とカーシュは答えた。
「じゃあ、腹が減るまでは、博士の所にいるよ」



「博士?」カーシュとリリコは、口を揃えて、ポカンとした表情をした。
「は?」アクタが不思議そうに声をあげる。
2人は少し考えて、「あ、ああ、町外れの、」「そうだ、ガウラさんの事か」と納得した様子で、そのままテーブルの片付けや、外に出る準備を始めた。

(なんだよ・・・今の。2人して博士の事を忘てたのか?有り得ないだろ)
我が家は皆、博士に世話になっているはずだ。いや、この町の人間皆が博士を少なからず慕っているし、頼りにしているはずだ。
元超人という事で敬遠されることも、昔はあったらしい。その名残で今でも、町外れに暮らしているが、何せ物知りだ。この町の誰より知識も知恵もある。
農具が壊れれば修理してくれるし、ガタついた家の悪いところもすぐに分かる。
博士だって共同体の一員なのだ。知識をくれる代わりに、皆で食べ物を分ける。それくらい町にとって大切な人だ。

(そんな・・・そんな酷いことはない、きっと気のせいだ、そうに決まってる)
アクタは、そう自分に言い聞かせて博士の家に向かった。



この日は博士に新しい地図をもらった。エストロも同じ物をもらって2人で喜んだ。
前よりも、もっと複雑な地図には色々な印が書かれている。町とか森とかを意味しているらしいが、アクタにとっては難解だ。
それでも曲がりなりに地図を読める。
この町で地図を読めるのは、アクタと博士とエストロの3人だ。万が一、他にいても町長の老人くらいだとアクタは思っていた。
文字なんか使えるのは、博士とエストロの2人だけだ。もっとも、町の中で使う機会はないが・・・

エストロは博士にもらった地図を見ながら、あれこれと聞いていた。アクタは地図を眺めるだけで満足だった。
この「世界地図」を。


「腹減った、そろそろ昼だし、今日は父ちゃん達と鉄鉱を集めに行くから、帰るわ」アクタがそう言って、いつも通り博士とエストロに見送られて、家に向かった。

アクタは、その『いつも通り』に安心した。

昼食後、アクタとカーシュ、近所に住む男2人の計4人で、山へ向かった。
木材を探すつもりだった2人の男は、「果物を見つけたら取ってきてやるよ」と言って、茂る木々の中に分け入っていった。



鉄鉱は山の中腹にある。「日が暮れる前に、さっさと終わらせるぞ」とカーシュが言うや否や、アクタは飛び跳ね、木や岩やを越えていた。「父ちゃん、これ鉄鉱だよな?」と呼ばれ、カーシュも軽やかに跳躍し、アクタの所に向かう。
「ああ、それで合ってるが・・・お前速すぎないか?」
カーシュは、アクタの運動神経に驚いていた。大人の背丈ほどジャンプできる者は男女問わず町に何人もいるが、アクタには敵うまい。
「これくらいは簡単だよ、雨で滑るときはちょっと無理だけど」と、自慢げに言うアクタに「まあ、怪我には気をつけろよ」とカーシュは言い、2人はツルハシや杭と金槌を使って鉄鉱を掘り出した。



アクタはカーシュに、博士から教えてもらったことや、地図の話をした。話せば話すほど、自分でもよく分かってないことが分かった。「多分、アレはさ、アレなんだよ、えっと・・・アレ、アレ」と、そんな話をして気が付けば、日が傾いていた。帰る支度をし、山を下り始めた。
「父ちゃん、博士の事、忘れてないよな?」珍しくアクタは不安げな顔を見せた。
「当たり前だ、ただ・・・今朝は一瞬だけ『博士』がなんのことか、わからなかった気がする」カーシュ自身も違和感を感じていたのだ。
「ふーん、変なこともあるんだな」
「歳をとれば、時々ボーッとするんだよ」そう話しているうちに、山で別れた男2人と会った。

「お互い、帰るタイミングは変わらねえな」男達は丸太を担ぎケラケラ笑った。
傍に傷ついた鳥も持っている。
「おい、その鳥・・・」
「あぁ、多分、他の動物と争ったんだろう、この傷は助からないと思う」
「そうか・・・せめて美味い飯にして食ってやるしかないな」
大人達は切ない面持ちで、そう話した。

これが動物の肉を食べる、いつも通りのやりとりなのだと、自身に言い聞かせるしかなかったが、弱々しく動く鳥にアクタも切なくなった。


(『いつも通り』だって意識すればするほど、『いつも通り』からは遠く離れるんだぜ。何せ、いつもは考えないような、当たり前のことが集まって『いつも通り』なんだからな)
アクタはその声を確かに聞いた。
カーシュ達は何も変わった反応をしていない。
初めて聞く声に、アクタは恐怖より怒りを感じた。

一瞬、エストロの顔が頭に浮かんだ、今日、博士の家を出るときに見た、いつもよりぎこちない、エストロの笑顔を。

エストロの違和感

エストロは鎌の刃の部分に紙を巻いて、鎌全体を紙で包んでから手提げの鞄にいれた。
「アクタのおじさんたちに届ければいいのね?」
届け先を確認した後で、「それじゃ、博士、行ってきます」と言って小走りで家を出た。
エストロと博士の住む家は、一軒だけ町外れにある。理由は、やはり博士が元超人だったからだ。小さな町という閉鎖的な場所では、無害であれ、誰もが距離を置くのも無理はない。というより、どういった距離感が丁度いいのかお互いに分からないのだろう。だから、町に馴染んでいる今でも、博士はあの家に落ち着いている。それはエストロ自身もそうだった。

アクタの家にはすぐに着いた。
(走ってくる必要もなかったかな・・・)
そう思いながら、ノックをして「頼まれてた鎌です、ぐらついてた刃は柄の部分を削ってもう一度はめ込みました、あと3、4回なら同じように治せるそうです、ただその度に柄は短くなるのでご注意を、とのことです」エストロは家にいたアクタの母、リリコに説明した。
「あぁ、ありがとう、いつも悪いね、ついでで悪いんだけど、裏の麦畑にいるうちの旦那に渡してもらえる?」
「はい、わかりました」とエストロが出ようとしたが、リリコは、待ってと止めた。
「エストロ、最近、アンタやガウラさん、あとアクタに、変わった事は起きてない?」リリコの表情は少し動揺を含んでいて、それ自体が変わった事に見えた。
「いえ、特には・・・あ、最近、アクタが家の屋根ならハシゴを使わずに登れるようになったみたいです」そういうと、リリコの頬は緩んだ。大きな溜息は安堵からくるものだった。「全く、あのバカ息子は・・・何もないならそれでいいの、ゴメンね」
「博士にこっぴどく叱られてましたけど・・・」
「いいの、いいの、なんならゲンコツの1つ2つお見舞いしてもいいのよ」
高笑いするリリコに会釈して、「では、おじさんに渡して来ますね」といってエストロは麦畑に向かった。



見たところ、アクタの父、カーシュの姿がないが、作業をしている人が数人いる。
エストロは声を上げて「すいませーん、お届けものでーす」と叫んだ。
作業をしている人たちは顔を上げた。アクタの家族と田畑を共同で耕している人たちだ。見覚えがあった。
彼等もエストロのことを知っているようで「やぁエストロ、おはよう」と手をあげながら声をかけた。
「これ、カーシュさんに頼まれた鎌の修理、博士からのお届けものです」


全員が「博士?」と首を傾げた。「誰のこと?」という言葉さえ聞こえた。

(・・・なんで?皆どうしたの?)
エストロは戸惑い、驚きのあまり声も出なかった。

後ろからカーシュの声が聞こえた。「エストロ?ガウラ博士に頼んだ、鎌を届けに来てくれたんだな、ありがとう」

同時に皆が、弾かれたように、「あぁ、町外れのおじいさんだ」とか「そうそう、なんでか頭に浮かんでこなかった」とか話した。
エストロは不思議に思いつつカーシュの方を振り向いた。様子を見ていたカーシュの顔は初めて見る険しい表情だった。

不安に駆られたエストロは「おじさんは、博士の事、覚えてますよね、忘れてないですよね」と泣きそうな声で聞いた。
「大丈夫だよ」とエストロの頭を撫で、「アクタが博士の家に行くって言ってたけど・・・」とカーシュは言った。
「どこかで入れ違いになったみたい、じゃあ私、戻ります」ペコリとお辞儀をしてエストロは駆けて行った。

カーシュの表情は明らかに「大丈夫だよ」と思えるものではなかった。


帰り道でアクタと会った。彼なら、博士の家に着いていてもおかしくない、エストロに不安がよぎった。
アクタも博士のことを忘れてしまってはないか、と。
「博士の家に行く途中はいつもわざと、岩とか川とかを飛び越えてさ、鍛えるようにしてるんだ、楽しいし」
どうやらただの道草らしい。
安心したエストロは「博士が今日は凄い地図をくれるみたいよ、きっと凄く難しいけど、それだけ凄いのよ」
「凄いってどんな風にだよ?」
「さあ?楽しみにしておけ!って言うもんだから、わたしも想像できない」


「博士!凄い地図ってどんな奴!?」
開口一番アクタは聞いた。
「ただいま帰りました」とエストロが続く。
博士から2人に渡されたのは、今までより、大きくて、立派な地図。見たこともない印がたくさんある。

「これはお宝の地図ではない、むしろ、この地図そのものがお宝じゃ。町の外、そして、大陸全体の『世界地図』じゃ!」

外の世界、町からは到底見えない所に広がる世界。2人は胸を躍らせ、大喜びした。
博士は地図に描かれた印の説明をしていたが、アクタは途中で分からなくなったのか、地図をニコニコしながら眺めるだけだった。

家の絵は、そこに町がある印。木々の絵は森がある印。そんなことを教えてもらっているうちに、アクタは「腹減った、そろそろ昼だし、今日は父ちゃん達と鉄鉱を集めに行くから、帰るわ」と言って支度をし始めた。

いつものように博士とアクタを見送る。


エストロはカーシュの険しい顔と、麦畑のことをふと思い出して、顔が強張るのを自分でも感じた。

ガウラの罪悪感

ガウラは、近ごろ毎夜、夢を見ていた。

天上塔で出会った男に文字を教えてもらったこと、いつの間にか数人が彼の周りに集まり、皆で外の世界への憧れを話し合ったこと。
東の果てにある故郷から、地図を複製し、持ち出して大陸を巡っている話。
犬を拾ったつもりが狼だったと知った時の話。
そんな懐かしく微笑ましい夢を見る日ばかりなら良かった。

大方は、悪夢だったのだ。思い出したくもない記憶、超人の頃の自らの罪に苛まれる夢。
(自業自得だ、あの罪は死ぬまで背負わければ・・・)ガウラは自分を戒め、言い聞かせる日が多くなった。

エストロに「夕べ、うなされてたけど大丈夫?」と心配そうに聞かれたが、問題ないと、答えた。


しかし、問題ないわけがない。そんな感じがする。予感よりも確信に近い、災厄の第二波が迫っているのを感じる。


(罪の意識に苛まれている?)
うるさい。
(死ぬまでその罪を背負うのか?)
うるさい!
(それに見合った償いもしていないのに)
黙れ!!
(塔から逃げ出した?超人類を呪った?違うだろう?自分自身を呪い、自分自身から逃げ出した!卑怯者だ!)
やめてくれ!!!

ガウラを夢の中で責め立てるのは、1人の青年。
東の果てから来た男と出会った頃のガウラ自身だった。


(あの実験は失敗だった、結果は成功だったが、実験そのものが失敗だったよ)
「わかっておる、あれは完成させてはいけなかった、もっと早く気付くべきだったのだ」


「だから今、償うためにこの町にいるのだ、2人に教えるべきことは全て教えなければならない」


ガウラに残された時間は、もう少ない。

町の異変と2人の動揺

世界地図をもらった翌日、アクタとエストロは2人で外を散歩していた。

「・・・アクタは世界地図の印、何個か覚えた?」
エストロの質問にアクタは即答した。
「無理に決まってんだろ、まだ森の印一つだけだ」口を尖らせながら言う。



「ねぇ、アクタ・・・どうして地図を読むのに凄く苦労したり、博士に教わっても文字が読めるようにならないの?」
沈痛な面持ちで、申し訳なさそうに、決して怒らせまいといった聞き方。
何かがアクタはカッとさせた。
「なんだよ!?自分が出来るからって、馬鹿にしてんのかよ!?とにかく、わかんねぇんだよ!わかんねぇ理由もわかんねぇんだ!」アクタは息を荒げ、肩を上下する。

エストロは、からかうことはあっても、人を見下したり馬鹿にする事は絶対に無い。アクタは、怒鳴りながらも理解していた。分かっていても怒ってしまうのだ。


「ごめん・・・そういうつもりはなかったの」エストロは静かに涙をこぼした。

アクタは、その場の感情に任せて叫んだりしない。
博士のイタズラじみた策に怒ることはあっても、いつだって陽気なはずだ。
それなのに今、目の前には、両目いっぱいに涙を溜めているアクタがいる。

2人とも何か底知れぬ不安に襲われていたのだ。
「悪い・・・昨日、父ちゃんと母ちゃんが、一瞬だけなんだけど、博士のこと、忘れたみたいになったんだ、それが怖くて、悲しくって、気が立ってたんだ」アクタが先に口を開いた。

その話にエストロは凍りついた。
「おじさんも?」カーシュの険しい顔が鮮明に蘇る。

「『も』、ってどういうことだよ?」
「昨日、博士のおつかいで、麦畑に届け物をしたの、おじさんの姿が見えないから、作業してる人に声をかけたら皆が博士の事を少しの間忘れてたの」エストロは動揺のあまり、どんどん早口になる。
「皆、一斉によ?『誰だ?』って言う人もいたの。なんだか頭に思い浮かばなかった、って言う人もいたけど、やっぱりおかしいよ。 博士のこと、アクタは忘れてないよね?私、凄く不安で・・・博士も寝ている間、うなされる事が多くなって・・・」エストロはついには、その場にしゃがみ込んで、声をあげ、泣き出した。
「エストロ、落ち着け。俺は絶対に博士を忘れない。絶対だ。だから、頼むから、ちょっとでも落ち着いてくれ」

エストロの肩を握るアクタの手は震えていた。それでも、エストロにとってはとても頼もしい、温かい手だった。

「一度、博士の所に行こう」アクタはエストロの手を引いた。
「町の人皆に博士の事を聞いても、余計に不安が大きくなるだけかもしれない。とにかく、まずは博士に話すべきだと思う」
涙をこぼし、頷きながらアクタの手を力いっぱい握った。


(皆から、博士が消えていく・・・)
大切な人の存在が消えていく・・・
エストロにとってこんな恐怖は今までなかった。

事件

遠くに博士の家が見えると、アクタはエストロの手を離した。
「エストロ、ここで待ってろ、いや、隠れた方がいい」
突然の言葉に困惑しながら「どうして?私も行・・」エストロの言葉をアクタは遮った。
「いいから!少しの間動くな!」
アクタはそう言い放ち、走って行った。
「待ってよ!置いていかないでよ!アクタ、アクタ!!」
もう聞こえない。全力でアクタが走れば速さで追いつける者はこの町にはいない。
それでも、エストロは博士の家を、アクタの後を目指して走った。



同時刻、博士の家に2人が訪れた。
アクタより幼くみえる少年は白色の、横の女は赤色のブレスレットをそれぞれ左手首につけている。
「博士、あなたを塔に連れ戻すように言われてましてね、探しましたよ」と女は淡々と言った。
「ずいぶん、この町にいらしたようですね。 ゴミ達からあなたの記憶を消すのに、手間がかかるほど馴染んじゃって」嫌味たらしく女は続ける。
「記憶を消すじゃと!?そんなもの五行の力の範囲外のはずじゃ!」ガウラは声を荒げた。
「そんなに頭が悪くなっちゃって、どうしたんです?あなたじゃないんだから五行の外の能力なんてないですよ。ワイズマン。あぁ、そう呼ばれるの嫌なんですよね?」女は笑った。
「クレオ、誰かここに向かってる」と少年が言う。
「足止めしなさいよ、アシュル」
「もう無理、アレ、凄く足速い」


アクタが駆け込んできた。
「お前ら、なにしてんだよ」
「いえ、特に何も?」女、クレオはシラを切る。
「嘘つけ、お前ら見てると、なんでか凄えイライラするんだよ、ただの物盗りじゃないだろ?超人か?」言葉とは裏腹に、アクタの声は至極落ち着いている。
「物は盗りませんよ、このおじいさんを引き取りに来ただけです」
「ふざけるなよ・・・博士はこの町に大切な人だ」
「あらあら、ワイズマン、すっかり人気者ですね、あなたを忘れてないゴミがいるとは」クレオは博士に向き直る。
「記憶を消すってやつ、見ます?脳に電気を流すんですよ。ゼロ距離でやると死んじゃうかもしれないですけど」
「アクタ!逃げろ!」博士の叫びは遅かった。
クレオが少年、アシュルの掌を触れる。素早くアシュルはその掌をアクタの額に押し当てる。


アクタの体が硬直しその場に倒れた。
「複合か・・・!」
「まぁ、ちょっとなら私達でも水の力も使えますしね。後は火と金を分担して。あなたなら1人で出来ると思いますよ?」
「クレオ、早く帰りたい」アシュルは言う。
「でも、アイツ、様子おかしい」


アシュルの視線の先で、アクタが体を起こした。

事件後

対超人反応・・・超人類が近づくと、他の生物は普段とは違う行動とったり感情に駆られたりする。
博士は、意識が戻ったアクタやエストロ、町の人達にそう説明した。

超人類の接近を感知したアクタは、対超人反応ゆえ、激情に駆られ敵意を見せたが返り討ちにあったらしい。
博士を襲撃した超人は、超人類が暮らす大陸中央部に来るよう言い残して去っていったそうだ。

町から出て行け、と誰かが言った。
そうするつもりだ、と博士は答えたし、他の町人は誰も引きとめようとしない。

もう誰も博士を覚えていないからだ。

町にとって超人から狙われるような人間はただの厄介者でしかない。
博士は、町を出る前にアクタとエストロと少しの間話すことを許してほしいと、町長に頭を下げ頼んだ。
町長は頼みを渋々受け入れた。

アクタとエストロ以外から、博士の思い出はなぜか消えてしまったようだ。

最後の話を聞きに博士の元へ向かう途中、エストロはアクタの顔を見ないまま言った。

「どんなことがあっても、博士は博士のままだし、アクタはアクタのままだよ」

アクタはアクタのまま、という部分に疑問を感じたが「そうだな」とだけ答えた。

最後の話

「アクタ、体は大丈夫か?」
町外れのいつもの場所で待っていた博士は、最初にそう聞いた。
ただ、いつもの場所にもうあの家はない。超人の襲撃によって焼き払われたからだ。
「大丈夫だよ、だけど、どうして、こんなことになったんだろうなぁ」
焼け跡を3人で眺めながら、しばらく沈黙が続いた。


「博士、塔に行っちゃうのか?」アクタがまず、口を開いた。
「ふむ、このまま行方をくらませば、この町にまた奴らは来るじゃろうからな」
「そうか、俺さ、やられちまったのに、そいつらの顔とか、何されたかとか、全然覚えてないんだ」
「そういう攻撃じゃったから仕方がない、何より無事ならいいんじゃよ」
博士とアクタが話している間、エストロはまだ、かつて自分が暮らしていた所をぼんやり眺めていた。

「博士が、この町から出て行ったら、エストロは・・・」
「私も、博士と一緒にこの町を出る」
アクタが話し終わる前に、エストロは表情一つ変えず、焼け跡を眺めながら答えた。
「ダメじゃ」博士は冷静に言った。
「私には、親もいないし、もう家もない、この町も博士と暮らした町じゃない、だから博士と一緒に行く」
「エストロ、聞き分けてくれ、もう一緒にいることは出来んのじゃ」
「イヤよ」無表情だった。顔も、声も、目付きも、全てから感情が欠落した人形が話しているようだ。
「おい、エスト・・・」アクタが言いかけた時、初めての怒鳴り声が響いた。
「お前が付いてくると、足手まといなんじゃ!邪魔だから絶対についてくるな!」博士の初めての怒号にも、エストロは動じなかった。
「博士!こいつだって、何もかも失くしたんだぞ!?ワガママってのはわかるけど、そんな言い方することないだろ!?ちょっとは気持ち考えてやれよ!」
「何もかも失くした!?アクタ、お前、本気でそう思っているのか!?エストロ、お前もそう思っているのか!?答えろ!!」
博士のその言葉にアクタは悟った。
そして、エストロは自分よりも先に同じことを思っていただろうということも分かった。

「わしら3人から、1人だけが消えるだけじゃ、お前達2人はお互いにとって、お互いが大切な存在じゃろう?」
博士は嘆くように、呻くように、声をひねり出した。


しばらくして博士は話し始めた。
予想外の内容に2人は驚くことになる。

「わしと一緒に行くのは出来んがな・・・お前達2人でこの町を出ろ、頼みがあるんじゃ」

最後の頼み

「町を出ろって何で・・・」

「この町でわしの事を覚えているのは、お前達2人だけじゃ」
アクタとエストロの前で初めて感情を昂らせた博士は、少しずつ落ち着きを取り戻した様子で話し続けた。


「昔、わしは中央の塔、天上塔で超能力の研究をしておった、この大陸の超能力は2通りある。五行力と錬成術と呼ばれるものじゃ」
「ちょっと!待ってくれって!訳わかんねえんだけど・・・」アクタが耐えきれず口を挟んだ。
「いいから聞け、五行力は火、木、水、金、土、5つの力の相性を利用して自然現象を操る、この町に来た奴らもその力を使う者、お前達が言う超人類じゃ」
「頭がついていけねーんだけど・・・」
アクタが唸る一方、エストロは冷静に聞いていた。
「超能力でも、錬成術を使う人達は超人類じゃないの?」エストロの様子もさっきまでとは違う。人形から人間に戻ったように感情が蘇った。
「そう、錬成術は異なる物を組み合わせて、別の物を作り出す能力、正確に言うと誰でも習得出来る技術じゃ」
「じゃあ、俺でも使えんの!?」
「訓練次第じゃ、とてつもなく過酷で、習得するのもかなり難しい」

「で、それと私たちが町を出るのとどう関係があるの?」エストロは聞く。博士の話の本題はここからだ。


「わしは両方の力を使えた、そして、あの塔で行った実験、その後始末をつけねばならない」
「何を・・・したんだよ?」恐る恐る聞く。
「五行力の錬成、つまり、人工的に超能力を作る実験じゃ」

アクタ、エストロ共に凍りついた。出すべき言葉も分からない。

「結果は成功じゃった、前人に超能力を移植して、超人を生み出すことにも成功した、しかしじゃ、その被験者の能力が桁外れに大き過ぎたのじゃ、恐れたわしは被験者を五体の別の存在にバラバラにした、それが精一杯じゃった、そして塔を出た」
アクタの怒りが爆発した。
「何だよ、それ、どういうつもりだよ!博士は俺らの敵を作って、怖いから逃げてきたって事か!」
「そうじゃ・・・」
「卑怯者!嘘つき!」アクタは罵り続けた。「落ち着いて!アクタ!」とエストロが何度言ってもやめなかった。


「否定はせん、だから、わしは今こそ、その過ちを正しに行く、バラバラにした五体の分裂体を・・・破壊する」

博士は続けた。「お前達への頼みは、2人の天才にこの事を伝えて欲しい。アルベラという男と、ダリアという女、2人に会ってくれ」

見送り

「でも手がかりがねぇと見つけられないだろ?」
アクタの質問に博士は答える。
「ダリアの方はすぐには見つからんとは思うが、アルベラは木の国におるはずじゃて、近くの町をしらみつぶしに探すとじきに見つかる。」
「木の国ぃ?」アクタが首を傾げる。
「この辺りのことじゃ、エストロ、世界地図を渡したときに話したことは覚えているな?」
「うん、でも、家と一緒に燃えちゃった・・・」
「アクタのがあるじゃろう」
「でも、俺読めないんだけど、」アクタがたじろぐ。
「だから、お前達2人で行けと言うとろうが!」博士はピシャリと言った。
アクタはあぁ、と納得する。
「国境線でこの町を含んで囲まれた地域にアルベラは必ずおる、そして、あいつは探されたり、噂をされたりするのを嫌っとる」
「え?でもそれじゃあ逃げられるんじゃ・・・」今度はエストロが戸惑った。
「いたずら小僧の発想じゃ、アクタよ」
アクタは笑って博士に答えた。
「有る事無い事、噂をたてればあっちから出てくるってことか、あぶり出し作戦か、単純な奴だな」

「お前とよく似ておるからな」博士はカッカッと笑った。なんだと、とアクタが怒る。それを見てエストロが笑う。
これが、これまでの3人の日常だった。
3人でその最後を噛み締め、博士が口を開いた。

「ダリアの方は、わしにもわからん。ただ、アルベラなら知っておるかもしれんし、奴ならすぐにダリアを見つけられる」
「その2人ってどんな人なの?」
「アルベラは五行力の天才、しかし超人類ではない特殊なやつじゃ。ダリアは錬成術を使いこなす天才、自身を錬金術士と言っておったな。」

「それじゃあ、わしは行くぞ」
去ろうとする博士にアクタが真剣な顔で声をかける。
「待て、本当に塔に行くのか?」

ふふっと笑って博士は答える。
「塔には向かう、じゃがな、ただでは捕まらんよ、中央部で逃げ回って時間を稼ぐよ」
「それじゃ、いいや、また会えるよな」アクタは笑っている。となりのエストロも。
「あぁ、約束するとも。あ、貧困街には気をつけろよ、どんなところかはエストロに説明しておる、じゃぁな」
「またな」「絶対、会いに行くからね、私たち」

博士を見送った後、アクタとエストロで話した。
「いつから出る?」
「決まってんだろ」
「ふふ、そうね、アクタ、夜明けの旅とか好きそうだもん」
「ああ、明日の明け方、出発するぞ!」

旅立ち

(置き手紙とか用意した方が良かったかな・・・)
アクタはそう思いつつ、何を書けばいいのか分からないまま、空が白み始める前にエストロの元へ向かおうとした。

テーブルの上に紙切れが置いてある。
「あの老人の後を追うのだろう。お前の事だ、無理はするな。体に気をつけて行って来い。 父カーシュ 母リリコ より」

「全部バレてたか・・・親には敵わないのかな」アクタは両親の手紙に書き加えた。
「行ってきます。2人とも元気で。育ててくれた恩を返しに、元気で必ず帰ります。 アクタより」

家を出ようとして、アクタに疑問が浮かんだ。
(なんで、父ちゃんたちも文字が書けるんだ?イヤ、確かに今、俺も読めたし書けたよな・・・どういうことだ?)
不思議に思ったが、時間がない。
そう思ってアクタは家を後にした。

鞄には、地図とコンパス、水の入った水筒だけを入れた。食べ物は自生している植物に頼るしかない。これ以上、町に迷惑をかけたくなかった。

エストロは、地図は燃えてしまったが、コンパスは肌身離さず持っていた。

「こんだけで、大丈夫か?」
「うーん・・・私も不安だけど、この町から一番近い町はすぐに着くはずよ、ちょっと地図見せて」
アクタの地図を見ながらエストロは説明する。
「この町が、このバツ印、ここから南、少し下の方に家の絵があるでしょ?ここが別の町、そんなに離れてないわ。ただ・・・」
「どんな町か分からなくても何とかなるだろ。エストロは心配しすぎなんだよ、いつも」アクタがあっけらかんとした態度で言う。エストロにとって、いつものアクタ。
「そうね、まずは向かってみようか」エストロの顔から不安が消えた。

「よし、馬と大鳥を呼ぶか。ちょっと待ってろ」
アクタは指笛を吹く。
前人類は動物に懐かれる。動物たちと協力し合えるから、圧倒的な力の差があっても、数の力で超人類になんとか対抗できているのだ。

「エストロは馬の方がいいだろ?」
そう言ってアクタは身の丈の3倍は上を飛ぶ大鳥の足に掴まった。
エストロも軽やかに馬にまたがる。

「まずは南の町に行こう、エストロはコンパスで方角を注意してくれ」
「コンパスが小難しいから、押し付けたのね」エストロは少しからかった。
「うるせー。じゃあ、出発だ!」

南下

大鳥の足に掴まって、アクタは上空から地上を見渡す。
右手に天上塔、その周りには濃い霧が見える。
「なぁ、塔の麓って何があるんだ?霧が濃いんだよあそこら辺」アクタは地上のエストロに尋ねた。
「それは貧困街っていうところ。超人類と前人類の住む地域の境目よ。前人類が多く住んでるけど、少数の超人類に虐げられているらしいの。それで治安も悪いから、危険だって博士に聞いたわ」
アクタはそれを聞き、濃い霧を睨みつけた。超人類に対し、込み上げる怒りを抑えて、色んな方向を見る。
少し先に、町が見える。
「エストロ、町が見えるぞ。あっち側」
アクタが指差した方向とコンパス、地図を見て、エストロは頷いた。
「そこが、今向かってる町ね。南方向、地上からでも見えてきた。アクタ、何か変わったことはない?」
「いや、近づいても大丈夫そうだ。大鳥も落ち着いてるしな。こいつら、俺たちよりずっと勘がいいから、変なことがあるとすぐ気付くぜ」
(そっか・・・動物も対超人反応を示すのよね・・・)
エストロはそう思って、自分が乗る馬が、暴れずに走ってくれていることに感謝した。

町の入り口で、2人は動物たちと別れた。アクタが礼を言うと、応えるように彼らは鳴き声を返し、去っていった。
「じゃ、町に入ったら、すぐアルベラって人の悪口でも言いふらすか」
悪戯めいた顔をしたアクタに呆れながらエストロは言う。
「まずは、普通に聞き込みで探すの!博士に協力してもらうんだから、いきなり悪口はダメよ」
「やっぱ、印象悪い?」と、苦笑いするアクタ。
「そうよ、そもそも一つ目のこの町で見つけられるか分からないし。さ、行くわよ」
珍しく、エストロの後を歩くアクタだったが、以前のエストロの揚々とした雰囲気が戻って来ていることに喜んでいた。

アルベラを探せ

「アルベラ?知ってるぞ。この町じゃ有名だな、少なくとも。他の町は知らんが」
手がかりは簡単に見つかった。
何と、町に入って1人目に声をかけた男がこう答えたのだ。
「名前が同じだけかも知れねぇし、念のために、どんな人かも聞いておこう」
行き当たりばったりな性格の、アクタの口から「念のため」という言葉が出る程だった。

「どんな奴って、ちょっと変わってるけどいい奴だよ。気が短いが、頭はキレるし、色々物知りだしな。行商人が集うこの町じゃ、知識は重宝されんだよ」
男は、そう言った。

この町は、アクタたちの町よりも大きく、かなり賑わっていた。所々に交換所があって、行商人と町の住民、行商人同士で物々交換しながら足りない物を補い合うらしい。別の町から物を交換するために来る人も多いということは、情報も聞き込みやすいはずだ。

「おーい、そこの親父さん!アルベラ、どこにいるか知ってるかー?」
アルベラを探していると伝えると、男は別の男に声をかけた。
「アルベラ?今日は見てないなぁ、お前、見たか?」
「アタシも見てないわねー、あの人のことだし、集会所か酒場にいるんじゃないかしら」
様子を見るに本当に有名らしい、男女関係なくアルベラを知っている。

「まず集会所に行ってみるといい、酒場はまだ開く前だからな。まぁ、アイツなら上がりこんでそうだが」
男はそうアドバイスをくれた。
「酒場なんてあるんですか?」
エストロが尋ねた。自分達の町では、食糧は基本的に分け合うもので、飲食を提供する場があるとは思ってもなかった。
「酒場っつっても、自分達で持ち込んだ食い物を料理して、みんなで飲み食いして騒ぐ場だよ。行商の町ではよくあるらしいぞ。この通りをまっすぐ行くと少し大きめの建物がある。それが集会所だ」
「わかりました、ありがとうございます」
エストロは礼を伝え、2人は集会所に向かった。

集会所でもアルベラは有名だった。人々に印象を聞くと「変わり者、物知り、単純、短気」そんな言葉が必ず出るので、探している人で間違い無いと2人は判断した。

「アルベラ?集会所には来ていないな」「酒場はどうだ?」「いやまだ開いてないだろ」「用があるときに限って出掛けてたりするからねぇ」「まぁ、少なくとも数日間、町にいれば会えるさ」そんな会話が自然と起こるほど、アルベラという男はこの町に馴染んでいるようだった。

「イヤ、北の方で昨日煙が上がってたろ?アルベラの奴、珍しく真剣な顔をしてたぞ」と1人の男が言い出した。
その言葉に頷く声が続く。
「そういや、何か考え込んでる様にも見えたな。珍しく」

アクタとエストロは「北の方の煙」に反応した。
(昨日、北の方で煙が上がる事といえば、博士の家が焼き払われた超人たちの襲撃・・・)
「お前達、用があるなら伝えておいてやろうか?まあ、今日会えるかは知らんが」

「お願いしてもいいですか?」と、エストロが、アルベラを探していると言おうとすると、アクタが遮った。
「今晩、この集会所の前で待つ」アクタはそう言って集会所を出た。エストロが急いで後を追う。

「アクタ!今晩会えるかどうかは分からないのに、あんなこと言って大丈夫?」
「アイツは絶対来るさ、顔は覚えた」
自信に満ちた表情のアクタだが、エストロには、その自信の出処が分からない。アクタは、察したように、得意げに指を立てて話した。
「いたずら者の発想じゃ。木を隠すなら森の中、人を隠すなら人混みの中にいれば良い。あの集会所にいたんだよ」
「でも、誰も今日は見てないって言ってたし・・・」
「博士が言ってただろ?探されるのが嫌いだ、って。それなら周りの人間に、こう頼めばいい『アルベラを探している奴が現れたら、知らんぷりをしてくれ』ってな、俺なら思いつく隠れんぼの手段だ」
「でも、あの場にいたかどうかまでは・・・」
「エストロ、博士からコンパスをもらうまで東西南北って知ってたか?」
「私は、博士から話は聞いてたから、方角のことは知ってたよ」
「あぁ・・・そう・・・」アクタの得意げな表情は苦笑いになったが、エストロもアクタの言いたいことに気付いた。
「あの人かもね、『北の方』ってサラッと言ってたし」エストロはニコッとした。
「うー、まぁ、そういうことだ」高くなった鼻をおられたアクタは、少し不満げに頷いた。


その晩、集会所の前に行くと、男はいなかった。そのかわり、壁に紙が貼られている、エストロは読み上げる。

「勘のいいクソガキども、用があるなら酒場で待つ 口を滑らせたアルベラ様より」

「あの野郎ー!」と怒るアクタと、「博士の言った通り、似た者同士だね」と笑うエストロだった。

超人類の目的

「君達だね、奥でアルベラが待ってるよ」
賑わった酒場に入ると、きれいな髭を蓄えた、気の良さそうな男が迎えてくれた。どうやら彼はマスターと呼ばれているらしい。
マスターが指差したのは、アクタ達が入ってきた入り口とは反対側にあるドアだった。

アクタが鼻息荒く入っていこうとしているのを制止して、エストロはドアをノックした。
「アルベラさん、集会所で言伝を頼んだ者です。失礼します」
ドアを開けると、男が待っていた。
博士よりもずっと若い、暗い茶の短髪で無精髭を生やした壮年の男だった。
やはり集会所で会った、あの男だ。
彼は2人に目を配り、口を開いた。
「俺がアルベラだ。お前達、名前は?」
「俺はアクタだ」
「私はエストロです」
そう答え、エストロは続けて話した。
「博士・・・ガウラという人からアルベラさんを探すよう頼まれ、北の町から来ました」
「昨日、アンタがみた北の方の煙は、その人の家が超人に焼き払われたからだ」と、アクタが不躾に言う。

「アレクセン・ガウガメラ」
話を聞いたアルベラのはじめの一言だった。
「は?」と、2人は首を捻る。
「その、ガウラとかいう男の本名だ。天上塔から、実験資料の持ち出し及び損壊、逃走で超人達には指名手配されてる。まあ、ガウラってのは偽名だろう」
「偽名・・・」淡々と話すアルベラに2人は呆然としていた。
「まぁ、アレクが偽名を使ってたのは仕方ない。アイツは重罪人でも特殊だからな。捕まったら死刑より重い罰が待ってる。そして、おそらく災厄の第二波が来るだろうからな」

「博士の罪って、超能力を錬成するってやつだよな?災厄の第二波って・・?」
アクタが首を傾げる。エストロもまだ事が理解できていない。
「まぁ聞け、小僧」「アクタだ!」
「わかったわかった、アクタ。アレクが塔でやらかした事を知っているなら話が早い。もしお前達が超人で、実験によって超能力を作れたとする。どんな能力を作る?」
「超人をぶっ飛ばす能力」アクタは答えたが、アルベラは呆れてため息をついた。
「世界中の前人類を支配できる能力・・・ですか?」今度はエストロが答えた。
「惜しい。前人類も超人類も動物や自然、全てを支配、統率できる能力だな。前人類を支配する能力も通過点として錬成するだろうが」アルベラは言った。
「そんなこと出来んのかよ?」
「天上塔の馬鹿どもは、出来るまで、アレクにやらせるのさ。そして、実験体は何を使うと思う?」
「まさか・・・」アクタもエストロもすぐに理解した。
「前人類を使うつもりですか?」
「そのはずだ。貧困街から前人類は仕入れれば良いし、足りなくなれば、ここみたいな塔から離れた町からでも攫えば良い」
珍しくエストロが激昂した。
「そんなこと!許されるわけがない!どれだけ犠牲にして、そんな存在を作って何がしたいんですか!?超人類はそんなに崇高なものなんですか!?」
アルベラは落ち着いたまま言う。
「俺に怒んなよ。許されようが許されまいが、やる気はあるんだろう。だが、塔の馬鹿どもの計画は、途中で必ず失敗する。果ては世界中から生命という生命全てが消えるだろうな。それが災厄の第二波だ」
「失敗するって言い切れる理由は?」アクタが聞いた。
「実験の性質上、強力な能力を持つ者が途中で何人も作られる。しかし、そいつらはただの通過点だ。しかも元々前人類で、その記憶が残ってたとしよう。そうすれば、超人類と、元前人類の人工超人の大戦争が起こる。能力と能力をぶつけ合うわけだ」

アルベラは至って淡々と続ける。
「塔の馬鹿どもは、自分たちを過信している。アレクが俺達を呼び出して、3人がかりでも、最初の被験者を五体に分裂させるのが精一杯だった、しかも分裂体も行方不明、アレは化け物だ」
アルベラの言う、もう1人はおそらくダリアという人のことだとはアクタ達もわかった。

「で、超人類がアレクを見つけ、本格的に捕まえにかかった。アレクや人類を救いたければ手伝え」
アクタもエストロも覚悟した。
博士の最後の頼みは人探しにとどまらず、世界を救うことだった、と。

「当たり前だ、博士とまた会う約束してるし」アクタは迷いなく答えた。
「私だって、博士と会いたい。育ててもらった恩を返したい」エストロも答えた。


アルベラは初めて笑った。
「よし、動き始める前に、お前達にこの大陸について、もっと詳しく教えてやる」

星降りの夜

星降りの夜

小型の隕石群が降り注いだ大災厄「星降りの夜」 人類も含め、多くの生物の命は瞬く間に消え去った。 一部の人間はその中で特異な能力に目覚める。 火や水を操る超能力を身に付けた、進化した人類「超人類」と進化できなかった人類「前人類」との長きにわたる戦争が起こった。 超人類の圧倒的な勝利で終結した戦争から500年。 少年アクタと少女エストロは町を出て世界を巡る。 ー星降りの夜はまだ明けていないのだからー

  • 小説
  • 短編
  • ファンタジー
  • 冒険
  • SF
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-02-10

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted
  1. 進化と抵抗
  2. 何気ない日常
  3. 知らない記憶
  4. 天上塔への侵入者
  5. アクタの違和感
  6. エストロの違和感
  7. ガウラの罪悪感
  8. 町の異変と2人の動揺
  9. 事件
  10. 事件後
  11. 最後の話
  12. 最後の頼み
  13. 見送り
  14. 旅立ち
  15. 南下
  16. アルベラを探せ
  17. 超人類の目的