森のつくりかた
最近はえらく無頓着になった気がした。一つ一つの言葉に重みが無くなったような気がした。今までは大事に大事に選んで使っていた言葉を、このごろは軽率に外に出しているのではないか、そんな不安がふいに襲ってきた。
「そんなことないさ。数が増えたからって、軽くなったわけじゃないよ。相対的に見てどうするんだい」と彼は笑いながら言った。
そうかもしれないが、木を隠すには森、と言うだろう。森を作ってしまったら木が隠れてしまうのは当然じゃないか、と諦めたように私は言った。しかしこの問いに彼は答えない。腕を組み、手で顎を触りながら口をへの字にしている。やっぱりそうなんだ。言葉は選んで、選び抜いたものを出すべきなんだ。やかましいのはよろしくない。私が満足気に反芻をしていると、彼が口を開いた。「でも木々が生い茂る森が出来たら喜ぶ人もいるだろう。それに木を選んでしまったら森なんて出来やしない。林を作ってどうするんだい」なるほど彼には敵わない。
森のつくりかた
乱りに植樹することを促しているわけではありません。適度に間伐しましょう。
小説家になろうと重複投稿しています。