神様がいる街
人間が神さまと自由に話しができたのは、昔むかしのお話し…。
1
あるところに
まいにち毎日
お祭りをやっている街がありました。
たくさんの下げ飾りが社のまわりの道まで飾ってあって
とても華やかで賑やかなお祭りの街です。
観光地にもなっているその社は
とてもとても
小さくて
お祭りを見に来くる観光バスを近くにとめるところさえもなく
外国からの観光のお客様も多いために
社を新しく広く大きな所へ移す計画が立ち上がりました。
2
昔々
ある神さまがその土地を守っていました。
神さまはその土地のお祭りがとても好きで
お囃子がはじまると
必ずその土地へやってきては楽しまれ
そして
楽しんだ御礼に…と
災害や疫病などの悪いものたちから
その土地を
その土地に住む人々を守っていました。
神さまは
万難を排する力をもっていました。
そして
いつでも
【自由】にその土地へ来れたのでした。
3
ある時
神さまの力を恐れている悪いものたちが、人間たちに嘘の知恵を授けました。
【 この土地に住む者たちは 神さまをお祀りしなければならない
社を建てて お祭りが好きな神さまのために毎日お祭りする。
きっと神さまも喜んでくれる
きっと神さまは もっともっと守ってくれる
きっと 神さまはこの土地と人々に幸福と富をくれるだろう。】
4
いつもより華やかに賑やかに行われたお祭りの日
いつものように 神さまは喜んでやってきました。
いつものように
嬉しそうにハシャぐ子供たちを笑顔で見つめていました。
『神さま!一緒にお菓子をどーぞ!』
『神さま!一緒に楽しみましょう!』
声をかけられて
神さまは勧められるままに 小さな小さな部屋へ入りました。
その途端
神さまは外へ出れなくなりました。
神さまを退屈させてはいけない
神さまが外に出れなくなったことに気がついてはいけない
だからそこでは毎日お祭りが行われるようになりました。
【お祀り】をするのは
神さまを閉じ込めておくための大切な儀式。
【お祭り】をするのは
神さまが気づかないようにするための大切な歓待
しかし
時代と共にそれは薄れて
儀式は省略され
その街で行われているお祭りの本当の意味もだんだん薄れて
神さまの為ではなく
観光客を集めるためだけのものになってしまいました。
5
ある日
神さまが社に閉じこめられてから
ずっとずっと見守り続けていた狛犬がいいました
『神さまが本当に気づかなかったと思うのか?』
狛犬は 自分は神さまの見守り役ではなく
【見張り役】だったと まるで自分の立場を哀しんでいるようでした。
『 神さまは気づいていたよ…最初から。
それでもなお この土地を守ってきた。
なぜだと思う?
時代と共に変わってもずっと気づかないフリをして
ここを守ってきた神さまも
社を壊せば解放される
【自由】になれる
そのとき神さまは いったいどーするのかな?
まだ神さまを見ることができる人間がいるかな?
神さまの声が聞こえる人間がいるかな?
そして
また再び
神さまが人間に姿を見せることがあるだろうか?
解放されたその時
神さまは誰にも気づかれることもなく
消えてしまうのかもしれない
そして
もう二度と姿を現さないかもしれない
それなのに
私は最後の時を 見届けることができないかもしれない。 』
狛犬は誰に話すと言うわけではなく
独り言のように
誰かに届くよう願って
誰にも聞かれないように願って
小さな小さな
呟きを風にのせた
―
神さまがいた
小さな街の昔むかしのお話し。
神様がいる街
とても印象的な不思議な夢をみたので、絵本風にお話をまとめたものです。