積乱雲 上

上です。そのうち、中、下もでると思います。暇ならどぉぞ♡

ミステリーかどうかはイマイチですw

過去。


少年は呟いた。
「なんでだろう。」

少年は好奇心旺盛でいろいろなものにすぐ興味をもった。



少年は幼く、なんでも知りたがる年頃でもあった。


どうして?なぜ?というものであふれ、彼の日常は充実しているものかと思われた。

「どうしてテントウムシの模様はちがうのだろう。●の数なんてどれでもいいじゃん。」
「どうして手の指は5本ずつあるんだろう。いっぱいあればもっと便利かもしれないじゃん。」

少年の疑問は子供らしくかわいらしいものだった。
笑って「どうしてだろうね。」と返答できるレベルだった。

しかし、ある日少年は言った。
「どうしてお母さんは死んだの?  どうして?」



そんな重い質問に誰も答えられるはずがなく・・・。
と、その前に皆は「なんて縁起の悪い事を言うんだ。」と言った。


そう、
母は生きていた。


少年はまじめで、普段とびぬけたジョークを言うわけでもなかった。


父は少年に「いつからだ。」と言った。

慶太。

少年は中学2年生となっていた。

「あーぁ、蓮ともおわかれかぁ。」
友達、慶太が言う。
「なんだよ、それw俺死んだみてぇじゃん。メールしようぜ。」

少年-蓮は今日転校する。
父親の麻薬所持が発覚し、しりあいの伯母の家へ引き取られる。

「俺めっちゃメールするわぁwww電話もするからでろよ。」
慶太はもう二度と現れないような大親友といっていいほど仲がよかった。
「なんだよもぅw遠距離恋愛のカップルみてぇだぞwww」


こんな慶太とのふざけた会話も、直接ではできなくなるのだ。
蓮もさみしくないと言えば嘘になったが、彼はそれ以上にこの東京から一刻もはやく出たかった。

蓮にとっては慶太と出会えた素晴らしい場所でもあったが

それ以上の吐き捨ててしまいたい過去があった。
吐き捨てる第一のステップとして、富山にある伯母の家に引っ越すことにした。

「・・・。じゃぁ・・・。な・・・。」
「おぅ。元気でやれよ!」
蓮は明るく振舞って別れを告げ、去った。





慶太はわかっていた。蓮が泣いていた事、ここから出て行きたがっていた事。
そして、自分の汚さも。


彼は蓮からいろいろな物をうばっていた。

 蓮の彼女をよく連れ出し、デートした。
後に蓮は彼女と別れた。
「あいつ、お前に惚れたみてえw責任もって付き合ってあげろよなⓦ」

蓮がそう言ったことを彼は覚えていない。
蓮と彼女が別れた後速攻で彼女を振ったためで、慶太としては彼女の事はどうでもよかった。



 蓮のファッションを真似した。
彼が好みそうな物を買い彼といっしょに出かけた。
次第に蓮は「お前もそうゆうの好きだったんだな。目立ちたがり屋の癖に。俺とかぶりあがってw」

蓮はファッションを変えた。もちろん慶太に気を使ってだ。



 そして、蓮のお金。
これは自分でもよく覚えていない。慶太の家は貧乏で給食以外にまともな食事はなかったかもしれない。
空腹でしかたなかった。おごってくれと言えば飯の1つや2つ、蓮ならおごってくれただろう。
どうしてあんなことをしたのか・・・。後悔でいっぱいだった。
蓮の財布ごと捕ったため自分だと思われてないだろうが、
慶太だって人間であり、心もある。罪悪感は尋常ではなかった。


慶太は蓮がうらやましかった。父親しかいなかったとはいえ、大手企業の社長だった蓮の父。


自分のように食い物ごときで困ったことなどないのだろう。


しかも蓮はそこそこなイケメンだった。ルックスに特徴のない慶太はキャラだけで女子の票を集めていた。
ところが蓮はいるだけで女子が寄ってくるほど。年頃だった慶太。くやしかった。

勉強、運動、なにも慶太が勝てることはなかった。


慶太には大した特技もなかった。


ただただくやしかったのだ。


どうしてそんな事をしたのか などと聞かれても慶太は具体的にはわからなかった。


ただ彼がわかっていることが1つあった。

・・・
あの事があってからの衝動的な物。

富山。


蓮は電車に乗っていた。

隣に座る高校生らしき青年がこちらをやけに気にしていた。

高校生なのだから俺の気持ちくらい察してくれ。と心で呟く。
富山についてもこんな目で見られるのだろうか。
少し憂鬱にもなったが、東京よりマシかと気持ちを入れ替えた。
・・・といってもそんなことどうでも良かったのだが。



伯母と会うのは何年ぶりだろうか。
あの頃はなんでも気になって仕方なくて、伯母に「どうして星空文庫は星空なの?」と聞いた記憶がある。
今はそんな単純な疑問持ったことがあっただろうか。星空でも青空でもなんでもいい。


そんな事を考えるうちに、目的地、富山に着く。駅で伯母とその娘さんが出迎えてくれた。
「おっきくなったねぇ。蓮くん。元気にしてた?」
「はい・・・。まぁ。それなりに。」
伯母の娘・麻友は恥ずかしがって伯母のTシャツの裾をずっと握っている。
どこかで見たことがあるような、懐かしく微笑ましい光景に感じた。

「麻友。挨拶して、トランプ一緒にしてもらうって昨日言ってたのに。」
伯母さんは蓮にごめんねと言って笑った。
「じゃ、帰ろっか。」

帰り道も伯母は父については何も聞いてこなかった。
子供がいたからかもしれないが・・・伯母に深く話したくはなかった。
近所でも有名なほどお喋りですぐ噂になる・・・と・・・。

父からその話を聞いていた蓮は
父の姉であり、自分の身内のことなのでそこまで噂になることもないだろう。
と思っていたため話す準備はできていた。



それにしても・・・。やはり人目に付くのだろうか、自分は。
伯母が「富山の人はあったかくていい人ばかりよ。」と聞いたが
蓮にはそうも思えなかった。


ただ東京都の空気の違い、景色の違いどちらかと言えば富山のほうが、土地としてはいいように思えた。
富山というと人が全然いなくて田んぼと山だけというイメージが強かったが、そうでもないようで、
駅の近くには大きなデパートらしき建物もあった。

人も思っていたより多く、視線をかんじながら歩いた。

いまさら富山でやってけるのか、不安になりつつも一歩そしてまた一歩と伯母と娘と共に伯母の家へとむかった。

封筒。

「蓮くんは明日から△△△中学校にいくんだよ。きちんと準備しておかないとね。蓮君はひとみしりとかあるの?」
さっきから同じような質問を違う言葉でしてくる伯母。ある意味プロだ。
そのたびに適当に答えている。

娘の麻友ちゃんはあいかわらずで、あまり寄ってこない。
この春買ってもらったばかりのキレイな赤いランドセルからなにやらプリントをだしている。

伯母さんは「あ、そうそう。昔浩二が使ってた部屋があったからそこをつかってね。ある程度かたづけてあるから。」
と言うとその部屋を案内してくれた。


ギシギシと急な階段を上るとポスターやらカレンダーが張りっぱなしの部屋があり、どこか父を感じさせた。

自分の荷物を片付け、父も使っていたというベットに仰向けになって寝転がった。


掃除機をかけ足りなかったのか、ほこりが舞っていた。


今頃慶太は何をしているだろうか、
いつもだとこのくらいの時間になるとメールが来るものなのだが・・・。

そう思いだし、pcの電源を入れる。
≪新着メッセージ0件≫の文字。

仕方なくまたベットへと逆戻り。夕飯まではまだ時間があると伯母が言っていたので、
ただすることもなく、仰向けになりこれからの事などいろいろな事をぼんやり考えていた。


*⁺+₊*₊⁺⋆+⁺*++*⁺*₊



蓮にメールしようかと思い、本文を打とうとするが、
なんだかそうする気もせず、pcの電源を切る。
先ほど蓮にしたことを考えてしまったからなのかもしれない。


しかし、距離をおいたものだからもう関係のないものだとも思い始めていた。
どこか気になるのだが、どこかどうでもよく・・・。


とりあえず、普段は自らしようとはしない、宿題に手を付ける。
忘れよう。忘れるんだ。もう会うこともない。
蓮がメールしてこない限り、自分からメールなんてしないでおこう。


ピンポーン  インターホンが鳴る。
母は毎日パートで忙しく、夜遅くまで帰ってこない。
父は世間でいうニートというやつで、一日中pcに向かい株やらなにやらカチカチしている。

仕方なく玄関へ向かい、戸をあける。
「どちらさまですか・・・。」

・・・・・・・・・・。誰もいなかった。近所の子のイタズラかと思い戸を閉めかけると
1つの封筒が目に着く。
宛名もなければ差出人の名前もない。家の前に石でおさえておいてあったため、自分の家宛だとは思うのだが・・・。
とりあえず家に持ち帰り、封筒を開ける。

「なんだ・・・。コレ。」
*⁺+₊*₊⁺⋆+⁺*++*⁺*₊

「いただきます。」
「遠慮しないで食べてね、成長期なんだし。」
「あ・・・。はい。頂きます。」

箸を持ち、茶碗を手に取る。
なにやら魚がはいっている炊き込みご飯らしく、゛手作り゛という感じがした。

蓮は父と二人暮らし、兄弟もいなかったためコンビニのおにぎりやインスタントの食べ物ばかり食べていた。


手作りの温かみを感じながら食べ進める。他にも富山は魚がおいしいらしく、新鮮な刺身もあった。
自分が来たことによる歓迎なのか、心なしか豪華にも感じた。

「麻友、好き嫌いしないで食べないと蓮君みたいにおおきくなれないよ。」
子供にとっては淡白な白身魚はあまりおいしく思えないらしい。
「・・・だってぉぃしくなぃもん。」
「なんてこと言うの!!一生懸命作ったのに・・・大体麻友はね・・・。」
ありがちな親子喧嘩。普通だと今日来たばかり数年ぶりで記憶も薄い甥に家族喧嘩をみせるのか・・・。などとイライラするのかもしれないが、
蓮には微笑ましく思えてならなかった。どこか羨ましくも感じ、なぜか落ち着いた。

そんな時、インターホンが鳴った。
伯母の家は伯母の夫のかえりが遅く、このぐらいの時間にならないと帰ってこないそうで、
誰もがお父さん(伯父)かな と思った。

「あら、帰ってきたのかな。」
少し声色が変わる伯母。玄関へと向かう。

麻友ちゃんが口に含んでいた魚をティッシュへと出す。
少しこちらを気にしているが・・・。



「なんなのかしらね・・・。コレ。」
伯母が戻ってくる。そしてその手には封筒。


「伯父さんじゃなかったんですか。」
「・・・違うよ。」
まるで分っていたような口ぶりで麻友ちゃんが答える。
何気に初会話である。


「それなんですか?」
封筒には切手も貼ってなく何の表記もなかったため、少し不自然に感じた。

伯母はよくわからないと首をかしげ蓮に封筒を手渡す。
蓮がそれを開け、目を見開く、鼻で笑う。
「伯母さんこれ、俺あてみたいです。もらっていいですか?」
「あら、そうなの。蓮君のなんならどうぞ。」


「ごちそうさまでした。美味しかったです。」
「そぅ、よかったわー。麻友!!!まだ食べ終わらないの?早くそれ食べなさい!!」
「・・・だって。」
親子喧嘩の再発。それを横目に蓮はさきほど寝転んでいた、自分の部屋へと戻る。


封筒をもう一度開き、中身を読む。

蓮は再び寝転がり、今度はうつ伏せになって静かに笑っていた。

学校。

気付くと朝であのあとは寝てしまっていたらしい。

はぁ・・・。学校か。
実は転校はこれで3回目。少し慣れてきたところである。
歩いて15分ほどの場所に新しい中学校がある。

とりあえずゆっくり準備を進める。
「・・・ごちそうさまでした。」
1階にいくとちょうど麻友ちゃんが朝ごはんを食べ終えたところだった。

「あらおはよう。蓮君も食べちゃって。」
「ぁ・・・はいいただきます。」

朝ごはんを食べ終え、学校へと向かう。


*⁺+₊*₊⁺⋆+⁺*++*⁺*₊


『今日からこの学校で皆と一緒に勉強することになった、御神 蓮くんです。』
よし、来たこのパターン。通算3回目w

「御神です。東京から諸事情あって富山に来ました。わからない事があったら勝手に聞くんで、教えてください。」
と少しウケを狙いながら自己紹介した。

早くも女子はテンションが上がっており、男子も転校生が珍しいのか明るい表情で笑ってくれた。

とりあえず初日というのと転校3回目で少し慣れていたためということもありにぎやかに過ごせた。
授業のペースにも全然ついていけた。

あいかわらず視線は感じたがまぁこの程度ならよしとし・・・


しかし、彼のいないところでは、生徒たちはやはりあの話をしていた。
『なんでだろ。あぁゆうのって生まれた時からなの?』
『そうなんぢゃない?かわいそぉ。御神くん超イケメンなのにぃ。』
『それより、なんなのぉ?杏奈ぁ♡やっぱり一目ぼれッ???』
『ちっちがうよぉ。そんなんじゃないッてぇ////////・・・・・』
『何照れてんのぉ。もう素直じゃないんやから。』


[おい見た?転校生。]
[あーあれだろ?御神 蓮イケメンなんだってな]
[いや、それもなんやけどよ。]


*⁺+₊*₊⁺⋆+⁺*++*⁺*₊

やっぱり見られてたな。
でも何も気にしてないふりして普通に、普通に過ごす。
それが一番いいのだろう。

そんな事を思いながら若干ではあるが覚えてきた帰り道を歩いていると、
「ねぇねぇ転校生ッ!」
明るく軽い感じの声がしたので俺も明るい声でかえす。

「ん、何?誰?」

振り向くと同じ学校の制服を着た少女が立っていて不思議そうにこちらを見ている。

「転校生の右腕どこいったの?」

・・・・・・・・・・・・・・・。ここまでダイレクトに聞かれたことはなかったため少し驚きつつ
「ぁ、それ聞いちゃうカンジ?」とこれまた軽く返すと

「聞いちゃうカンジ❤」と答え少女は笑った。


蓮は話せる範囲だけ違和感の無いように話した。
少女の先ほどの軽い顔はどこかへ消え、とても真面目に聞いてくれた。
話し終えると

「ふぅん、そっかぁ・・・。ジュースおごってあげよぉか?」

少女はそういって近くにあった自販機に駆けて行った。
・・・。この子は何を考えているのかわからない。
というか初対面の人に・・・右腕、どこいったのって聞くか?
少しぼやいていると少女がもどってきてサイダーを投げた。

「あ、投げちゃった。開けるとき気を付けろよ☆彡」

慣れたように蓮は器用にあける。

案の定開けるとあふれでたがそこまでひどくはならなかったので、とりあえずありがとうといった。
少女はううんと笑い自分のオレンジジュースを開け、飲んだ。

「プライベートを名前も知らない人に話したのは初めてだよwww。」
そう言うと
「じゃあ、あたしの事も教えてあげるーwww」
「え・・・。そういうつもりじゃ。」
「中二、女、ショートカット、まつげながくって目おっきくて」
「ちょい待ちwwwそれはどれも見ればわかるじゃんw」
そういって蓮は笑った。富山に来てこんなに笑ったのは初めてだ。

「もうッッッ最後まで聞いてよw中二で女で・・・あれ?どこまで言ったっけ?」
「まつ毛長くて目おっきい。つか目は認めるけどまつ毛俺より。」
「うるさーーーぃ!!!メイクすればあたしのほうが長いもん!!!」
「そりゃそうだろwwwwつけまつけるんだろ!?」
蓮はまたも爆笑。少女は頬を膨らませるが嫌なわけではないようだ。

蓮が笑い続けるので少女もつられて爆笑。



*⁺+₊*₊⁺⋆+⁺*++*⁺*₊

「じゃあ、あたしこっちだから」
「送ろうか?」
「言ってみたかっただけでしょwww道全然わかんないくせに。」
「ぁ図星だwでも気を付けろよ。」

少女・・・花嵜 愛唯(はなさき めい)は大丈夫と笑って手を振った。

「俺も・・・帰るか。」

封筒の中。

はぁ・・・。

このごろ家計がさらに苦しくなってきた。

私だって働けるところがあれば・・・。

夫の収入もここの所、不景気で安定しない。


麻友も小学生になり必要なものだって増えた。


コンセントにプラグを指す。


そこにあんな中坊がくるなんて・・・・・。



伯母、麻美子は頭をかかえる。
大体浩二が何をしたのか、私は1つも聞かされてないのに。
聞きづらいのかと思ってあっちから話してくれるんまっとるんに。
何なんよ。浩二は何をしたん?


掃除機のスイッチをオンにする。騒音が鳴り響く。


麻美子と浩二は小さいころ仲が良く、一緒にイタズラをしたものだったが
現(元)浩二は社長として成功し日々を裕福に暮らせているというのに   
自分は収入は安定していると言う夫の専業主婦。家計も厳しい。

今だとどこの家もそうではないか。
・・・しかし弟の存在がそう思えなくさせていた。

小さいときは一緒にお母さんの料理は泥の味とか言ってたっけ。
今食べれば普通においしく感じる。

弟なんか水道いつも出しっぱなしで水道代が2ヶ月で60000円になった事もある。

そんな弟がなぜ成功?自分は危ない生活を送っているというのに。


掃除機の電源を切り、プラグを抜く。



つい最近までそう思っていなかったのに、いきなり親権を渡され
面倒を見ろ、なんて言われて、緊急事態というからとりあえず面倒を見ることにしたのだが。



それにしてもやはり中学二年生の男の子。
部屋は片づけたつもりらしいが、主婦としては少し汚く思え、勝手に掃除機をかけた次第である。


「よし、これで綺麗になった。」


ふと机に置いてある昨日の封筒に目が留まる。
少し悪い気もしたが、違和感のある封筒だったため中を見てみた。


中は・・・・・何もなかった。
蓮君が中身を持ち去ったのだろうか。


「1階の掃除もしちゃうか。」
掃除機をもって階段を下りる。







ドサッッッッッ。


麻美子は階段を踏み外し・・・、転落した。

誰の血?

気が付くと、午後3時になっていた。



階段を踏み外し、掃除機が自分に降ってくる。
恐かった・・・。

かすり傷程度で済んだのは奇跡なんだか、体型のせいなんだか・・・。
おもい体を起こし、なんとなく心までおもくしてリビングへ戻る。


ガチャ。
「ただいま。」

麻友の声。
「おかえり、宿題はどのくらいでたの?」

そう言いかけて麻友を見て驚愕した。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
麻友はただ黙ってこちらを見ている。

「まッッ麻友??!ソレ・・・。誰の血・・・?」



麻友が驚いた様子でこちらを見る。


麻友の服は赤いブラウスかと見間違えるくらい真っ赤だった。
白く綺麗にあらってあった、麻友お気に入りのブラウス・・・。

血にみえたのは私だけだろうか・・・。
麻友は話しずらそうに目を逸らし、部屋へとさってしまった。


・・・・まさか。麻友が、人を?小学1年生の女の子が?
ありえない。あの麻友が・・・。

麻友は好き嫌いも多く、頑固なところもあったが、根はとてもしっかりしていて勉強だって自分の子とは思えないくらい頑張っている。


そうだ。麻友がそんなことをするわけがない。
そう自分に言い聞かせるが、どうも真っ白なブラウスがあのような赤になるわけがみつからない。

部屋の異臭にも気づく。階段から落ちたせいか全然ニオイに気付いていなかったのだが・・・。
異常なまでの臭い。耐えられず窓を開ける。


学校に問い合わせるかどうか、迷った挙句、
帰り道に犯したという可能性があると怖いので連絡はしないことにした。


麻友の事もあってか頭がぼーっとしてクラクラする。

少し寝ようかな。



*⁺+₊*₊⁺⋆+⁺*++*⁺*₊

なんだったんだろぅ。あの声。
なんだかお母さんみたいな感じがしたけど。

あ・・・。そういえばお母さん、どこだろう。なんでいないのかな?
いつもなら家にいて宿題は?って聞いてくるのに・・・。

まぁいいか、近所でまた喋ってるんだろうな。
遊びに行ってもいいかなぁ。


さっき由紀ちゃんから遊ぼうって電話あったし・・・。
手紙でも書いてあそびにいってこよぅ。


*⁺+₊*₊⁺⋆+⁺*++*⁺*₊

「おじゃまします。あ・・・。ただいま・・・か。」

帰ってくると、伯母さんはいなかった。

部屋も真っ暗で人の気配がしない。


電気をつけると紙が目に付いた。

この字は、麻友ちゃんかな?


〖ゆきちゃんちにいってきます。しゆくたいはおわりました。5じにかえいます。〗

とっくに5時は過ぎもうすぐ7時といったところか。



なるほど・・・。何らかの理由で伯母さんが留守にしていた間に、麻友ちゃんはゆきちゃん家にあそびにいってしまった。
そして5時になっても帰ってこない麻友ちゃんを心配した伯母さんが探しに出かけて行った。

鍵も開いていたのはよっぽどあわてて出て行ったからであろう。

・・・などと言っている場合かよ;;;

自分も伯母さんがだどっただろう経路で慌てて通学鞄をおろし外へ出る。
そういえばゆきちゃんって誰だろう。
引っ越してすぐの蓮は何もわからない。
実際道もわからないので麻友ちゃんを探して自分が迷子、というのもあり得るのだが。
そんな事考えてられない。麻友ちゃんは小学一年生だ。
自分より何倍も危険は多い。



蓮はとりあえず走る。子供がいそうな公園などをかたっぱしに探していくが、
公園がどこにあるのかさえもわからない。

塾帰りらしい小学生を見つけ、話しかける。
「ねぇ君ッ。このくらいでブラウス着た2つ縛りの女の子みなかった?」

必死に朝みた麻友ちゃんの特徴を述べる。

「・・・。赤いブラウスを着たまゅちゃ・・・女の子なら。」
「麻友ちゃん??!麻友ちゃんの事知ってるの?」
「はい。あたしの友達ですけど・・・。なんかあったんですか?」

麻友ちゃんより何歳か年上にみえるが、知っているなら話は早い。



「帰ってないんだ。心当たりある?いきそうな場所とか。あ、道も教えてほしいんだけど。」
麻友ちゃんの友達(自称)は「交差点を右に曲がった後まっすぐいって左のマンションの裏にある公園でブランコにのっていた。」
と教えてくれた。


そういえば赤いブラウスというのがどこか引っかかるが・・・。
そんなことは今どうでもいい。
交差点を右に曲がるとすぐ左にマンションがあった。
フェンスもあったが蓮ほどの身長なら飛び越えられる・・・がとてもではないが麻友ちゃんにはムリかと思われる。
よほどのジャンプ力もしくは腕力がないと・・・。


ゆきちゃんも一緒なのだろうか。時刻はもう7時30分をまわろうとしていた。子供が遊びまわる時刻ではない。

公園・・・のベンチ。麻友ちゃんが座っていた。
というか寝ているようだ。

そっと起こさないようにおんぶする。
友達の姿は見当たらない。蓮は道を忘れないうちにさっさと歩き始めた。

それにしても伯母さんはどこへいったのだろう。
自分より早く探しだすことはできなかったのだろうか。
土地やいきそうな場所だって蓮より何倍も知っているはずだ。


そう深くは考えずに歩いていると
「ん・・・。」
起こしてしまったらしい。
「どこ・・・?」
「もうすぐ家に着くよ。」
「・・・・・・。ヒッぅっひッッッくっぁ・・・ひっくひっく・・・。」
・・・?泣いているのか?
「どうしたの?何かあったの?」

麻友ちゃんは何も言わずただ静かに泣いていた。
麻友ちゃんは5時までに帰る、と言っていたしこんな遅くまで小学1年生が1人で出歩こうと思うだろうか。
自分なら暗くなったら怖いからすぐ帰るのに・・・。そう思いながら麻友ちゃんをおぶったまま家に着く通りへとさしかかった。

「・・・・・・・・・。お母さんは?」
「家にいなかったよ。麻友ちゃんを探しに行ってたんじゃないかな。」

そのうち帰ってくるさと麻友ちゃんをなだめ、玄関の戸を開ける。
電気は点いておらずあいかわらずひとけもなかった。

8時をまわり、さすがに腹も減ったので冷蔵庫を開けさせてもらった。
ファストフードやインスタントもよく食べていたが週2くらいは(おこづかいをためるために)自分で作っていたこともあった。
ある程度の簡単な料理は作れる。・・・が冷蔵庫の中はすっからかんだと言っていいほどに何もなかった。

・・・これでは何も作れない。
あるのはお茶、梅干し、伯父さんのビールと焼酎くらいだった。
お茶と梅干し・・・せめて米があれば・・・。
「スイッチ押すね。」
麻友ちゃんが炊飯器のスイッチを押す。
どうやら米をといでくれたらしい。

「ありがとう。」そう言うといつもだもんと言って麻友ちゃんは恥ずかしそうに笑った。

しかたなく梅干しと白米を食べていると、インターホンが鳴った。
あたしが行く。と言って玄関へ走っていく麻友ちゃん。
8時30分・・・。伯父が返ってくるには早い気がするが・・・。

「ただいま。」
「お父さんっっおかえりぃ☆」
「麻友、お母さんは?」
「ううん。いないの。知らない?」

伯父だった。そういえば昨日も「ちがうよ」・・・とまるで分っていたように言っていた。
なにか合図でもあるのだろうか・・・。

それにしても・・・この部屋おかしい。
くさいのだ。なにか腐っているような変な臭い。

それに麻友ちゃんはあんなに黒っぽいブラウスをきていただろうか・・・?
なんだか血のような・・・。

だとしても誰の・・・。
伯母さんはどこへ行ったんだ・・・。

謎が謎を呼び、自然と眉間にしわがよる。
そのようすをみていた伯父は気を使って

「どうした、蓮くん。それにしても久しいな。」

「あ、はい。お久しぶりです。あの・・・それで伯母さんは・・・?」

「・・・・。おかしいよな。でもこの時間なら警察に届けてもまともには扱ってくれないだろう。」
伯父さんいわく、福井の伯母の実家、ばあちゃん家にもいっておらず電話もない。
あるとしたら、まだ麻友をさがしているのか、電車にのって福井にむかっているか。

「心配はいらないだろう。大丈夫さ。」

「・・・はい。」
麻友ちゃんはつかれたのかソファで寝ていた。

俺も寝ようかな・・・。

積乱雲 上

積乱雲 上

父親の麻薬所持が発覚した、主人公、蓮。 蓮の秘密。友人慶太の秘密。 そして謎の封筒。 封筒のもつ意味とは・・・?

  • 小説
  • 短編
  • 青春
  • ミステリー
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2012-02-20

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted
  1. 過去。
  2. 慶太。
  3. 富山。
  4. 封筒。
  5. 学校。
  6. 封筒の中。
  7. 誰の血?