魔道書見つけました。

どうも…暇潰し程度にはなるかと…。

魔道書見付けたなう

「なんだこれ。」
死んだじいちゃんの本棚の片付けを手伝っていたら1冊の本が出てきた。
表紙は青色で、少なくも俺が知らない国の言葉でタイトルが刻み込んであった。
裏にはバーコードはなく最近の本では無さそうだな。
「母さん?この本何?」
隣で片付けていた母に尋ねる。
ピタリと片付ける動きを止めてジーと本を見つめながら
「知らない。セインが欲しいなら貰っちゃえば?」
おう、そうか…なら後で調べるか。
普段ならそこで諦めるところだが、何故かその本が気になりあとで詳しく調べてみることにした。



不思議なのことにネットで検索してみても、本に詳しい知人に聞いても分からないと言われた。
本を開いてみてみてもタイトルと同じような文字が連なり、全く読むことが出来なかった。
どうしようもなく途方にくれていると母さんが珍しく
「近くの古本屋のじいさんなら何か知ってるかもよ」
と助言をくれた。
確かにじいちゃんよくそこの古本屋で本買ってたからな。
セインは急いで出かける仕度をはじめる。
「ちょいと出掛けてくるわ。」
玄関で靴を履きながら言う。
「待ちなさい。スマホ持ったの?」
「持ったよ~。行ってきまーす。」



近くに出掛けるだけでここ数年何かと物騒な世の中になっていた。
これはセインのすんでいる町に限ったことではないく関東全域は【危険】と言えるだろう。
60年ほど前、突如東京上空に現れた大きな空飛ぶ島。
その正体は未だに誰も知る者はいない。
現れた直後こそ都心はパニックに陥ったが、それから60年たった今でもただ浮かんでいるだけの島だ。
10年ほど前のこと関東全域に住む住民に避難勧告が出され、自衛隊とアメリカ軍による空飛ぶ島の調査、迎撃が行われた。
しかし…結果は悲しいものだった。
人工衛星での島の撮影は何故か透過してしまい出来ず、同じように電磁波による測定も出来なかった。
また、戦闘機による爆撃は島から数メートル離れた部分で突然爆破されてしまうのであった。
いつしかその空飛ぶ島は透明な島(ファントムアイランド)呼ばれるようになった。



関東全域…何処からでもファントムアイランドは見える。
ファントムアイランドを眺めつつ、急な坂を登りながらセインは思う。
あの島には何があるのだろうか。
何が目的で何十年も浮かび続けているのだろうか。
誰か住んでるのかな~?
そんなことをどうでもいいことを考え込んでいるといつの間にか古本屋の前まで来ていた。
じいちゃんもいつもこんなこと考えながらここ上ってたのかな。
目の前に年期の入った古本屋がたっている。
古ぼけた看板に古ぼけた扉、外には俺とは一生縁のないであろう難しそうな本がいくつか並んでいた。
少しためらいながら扉を開けようとするが…。
ウウィイイィイ
予想外なことに自動扉だった。
この見た目で自動ドア!?
驚きつつも中には入るとそんなこと頭から吹き飛んでしまった。
確かに…古本屋なのだ…奥の方には確かに古本が一杯見えるがそこではない。
目の前の棚には美少女のポスターがでかでかと貼られていた。
「!?」
さらに右を見るとフィギュアの数々が綺麗に並べられ、左を見るとアニメグッズがずらりと…。
古本屋…だよな…!?
「いらっしゃい。」
奥から老人の声がする。
フィギュアとグッズの横を通りすぎ、奥まで行くとカウンターにじいさんが一人座っていた。
「………これ…貴方が…?」
入口付近を指差しながら質問する。
「おお、あんたもこのよさに気付いてくれたのか。」
そこじゃねーよと心で突っ込みつつ、早速本題に入る。
「これ…なんだけど…。」
俺は青い本を見せる。
「これは魔道書じゃな。」
と言われた。
「…今なんと?」
「魔道書じゃ。」
……は?
「真面目に聞いてるんですが?」
「真面目に答えとる。」
俺は腹が立ったので無言で立ち去ろうとする。
が…それを阻むかのように急に本が光だした。
「…ほう…そろそろ時間といわけか。」
「じいさん!なんだこれ!?」
この質問にじいさんは一言
「タイム、イズ、マネー。」
と答えた。


「初めましてご主人様。」
ちょこんと目の前に俺と同じぐらいの女の子が奇妙な服を着て現れた。
「 うわあぁぁああ!? 」
俺は突然の出来事に発狂する。
「おお、グリモアールちゃん。久し振りだな。」
そして何故か平然と対処するじいさん。
てか…久し振り!?マジか…知り合いかい。
グリモアールという女の子は腰を抜かして倒れてる俺を見て一言。
「フフフ…貴方のおじいさんにそっくりね…。」
「俺の…じいさん?」
「そうよ…前の本の所有者は貴方のおじいさん。そして私はグリモアール。直訳すると魔道書って意味ね。」
「古本屋のじいさん!?全然状況が分からないんだけど。」
うんうんと頷きながら話すじいさん。
「そいつは魔道書といってな、所有者は魔法が使えるようになるんじゃ。」
ペコリと俺にお辞儀をするグリモアール。
「魔法が使える!?馬鹿いうなそんなわけ…わけ…。」
目の前でグリモアールが風の魔法を使っているのを見てセインは黙り混む。
美少女ポスターがヒラヒラとグリモアールが手を動かす通りに宙を舞った。
「ワシの嫁がああぁぁ。」
喚く老人、腰を抜かし倒れてる少年そして魔法を使う少女。
もしこのとき他の客が入ってきたら間違えなく警察に通報されていただろう。



それから1時間もの間、俺vs古本屋のじいさんの口論が行われた。
結果は俺がおれる形で…
「よく分からないが…要はこいつの面倒みればいいんだな。」
凄い雑なまとめ方をした感じがするが 、じいさんも「まあそういうことだ」と納得した。
じいさんと話してこんでいたらいつの間にかグリモアールがいなくなっていた。
ガラス越しに彼女が外にいるのが見えたので追いかける形で本を持ち外に出る。
外に出るとすでに暗くなりはじめていて、綺麗な夕焼けが目の前に広がっていた。
彼女の白い服もそれに反射されキラキラとオレンジ色に輝いていた。
「どうしたんだ?」
空に浮かぶ島を指差しながら彼女は答える。
「昔…貴方のおじいさんとあの島に調査しに行ったことがあるの。」
「あの…島に…!?行けるのか?」
「行けるわ。魔道書があれば。」
「そうか…行ってみたいな…。」
俺も島を見る。
誰も行くことが出来なかったはずのファントムアイランド…それにじいちゃんが行ったことがあると聞いて驚いた。
「やっぱりそっくりですね。」
懐かしそうに俺の顔をグリモアール覗き込む。
「そうか~?全然そうは思わなかったがな~。」
「そうか…行ってみたいな~とかセリフそのまま貴方のおじいさん言ってましたわよ?」
「マジかよ…うわぁ…なんか悲しい。」
「で、何処にいますか?」
「何処って?」
「何処って…おじいさんですよ。」
セインは今まで気が付かなかった。
グリモアールはまだじいちゃんが生きてると思っているのだ。
「グリモアール…。」
「なんだご主人様?」
「じいちゃんは…死んだんだよ…一か月前に…。」
「え…。」
グリモアールはそのまま固まってしまった。
「私は…約束も守れずに…。」
しくしくと泣き出すグリモアール。
俺にはどうすることもできない。
ただ、背中を撫でてあげることぐらいしか出来なかった。



「じゃあな。古本屋じいさん。また何かあったら行くよ。」
「おうよ、元気でな。」
「死ぬなよな。」
「勿論。ところで、グリモアールちゃんは?」
俺は手に持っている青色の本…魔道書を指差す。
「大分ショックだったみたいで本の中に戻っちゃった。」
「そうかぁ…そうだろうな。親友を一人無くしたようなものだろうからな。」
ごそごそとじいさんが本棚をあさると一冊の本を出す。
茶色くボロボロの本だった。
「これは時が来たらお前さんが読みなはれ。」
そして引き出しから1枚の手紙を取り出す。
「これはグリモアールちゃんに…これも時が来たら渡してくれ。」
「分かった。」
「じゃあ元気でな。」
セインはじいさんに本を片手に手を振りながら坂道を下る。
来るときに見た島も違った風に見えたであろう。

学校なう

家に帰ってたセインはそのあと夜ご飯を食べてからそのまま寝てしまった。
朝起きたらまあ、そこには悲惨な光景が広がっていた。
「おはようございます。ご主人様。」
眠そうな顔をしながらセインはグリモアールを見つめる。
それから部屋を見渡す。
「………むにゃ!?」
昨日寝たときは綺麗だったはずの部屋には本が散乱していた。
学校の教科書から隠しておいたエロ本まですべてが床に転がっている。
「ご主人様?駄目ですよ?こういうえっちい本を隠してちゃ。」
おううぅぅぅ。
絶望の2文字しか出てこない。
「あ、の、な?プライバシーってもんがあるだろ?」
「いや~すいまんせんね。流石に数十年ぶりの外なんでテンション上がりまくりで。」
「だ、だからって。」
チラッとエロ本をを見る。
するとグリモアールはその本を持ち上げてしみじみと言う。
「いや…でも印刷技術の発達は凄いです。こんなにしっかりとカラーでうつってるなんて。」
「そこ…感心するなよ。てか…返せええっぇい俺のたからじゃぁぁ。」
その時ガラッと扉が開く。
「セイン…?なに朝から一人で喋って…。」
部屋の散らかってる本に目をやる。
偶然にもひょいと薄い本を…。
「……セイン?」
ペラペラとページをめくりながら低い声が俺の耳に響く。
「セイン…?こ、れ、は、何かしら?」
「お、お母様…こ、これは…。」
俺は怒られることを覚悟した。
しかし現実はそう甘くはない。
「あんたいい趣味してるね。」
「はい!?」
予想外の答えにセインは唖然としてしまった。
「まあ、こういうの買うならこう堂々と出しておかないでよね?」
「は、はい。」
そのまま薄い本をもって出ていく母親を手を振って見送る。



「で、何でグリモアールは母さんに何も言われなかったんだ?」
落ち着きを取り戻したセインが質問をする。
「え?ああ…ご主人様以外の人には私は見えないのです。物理的干渉は可能ですが…。」
俺はグリモアールをぺちぺち触ってみる。
確かに物理的干渉はするようだ。
「セイィィン?朝ごはん早く食べなさい?早く来ないと薄い本を捨てちゃうわよ?」
突然下から母の声がする。
「おいおい、近所に聞こえるだろ?」
「そういえばご主人様はまだ学生でしたか。」
「あ、そうだが…。学校はどうするか。」
「お供しますが?」
「でも魔道書持ち歩かなきゃいけないんだよな~。」
机にあるやけに派手で青色をした魔道書に目をやる。
「ああ、それも問題ありません。それはご主人様の意思で拡大縮小が可能です。」
「へぇ~便利だな~。」
「セイイイィィン?本当に遅刻するわよ?」
「うわぁぁぁもうこんな時間だ。」
時計はすでに8時30分頃を指していた。
ドタドタと魔道書片手に下に降りて行くセインであった。



パンを食べながらは走るという行為がいかに楽かということを今セインは身を持って体験している。
「なんで今日の朝ごはんラーメンなんだよ!?」
カップラーメン片手に走るのがやはり無理があるようだ。
熱いお湯が跳ねて手や顔にかかる…そして何より美味しく食べれない。
「ごめんね~冷蔵庫が空でね?でも朝ごはんは食べなきゃ駄目よ。」
という母の言葉をまともに聞いたらこんな悲惨なコトのことなってしまった。
「それ…美味しそうですね…私にもくれませんか?」
「あいよ。」
小さくなって鞄に入っているグリモアールに一口与える。
魔道書を小さくしたらグリモアールを小さくなるから驚きだ。
彼女が言うには魔道書と表裏一体の存在だから魔道書に起こった現象は私にも反映されるとのことだ。
まあつまり、魔道書が無事な限り彼女は無敵ということだ。
「お~い。また面白いことしてんるんけ?」
信号待ちをしていたら後ろから同じクラスのケンがやって来た。
「お前も遅刻組か?」
「いや、俺は家近いけ。」
そう言って学校から50メートル位は離れた家を指す。
「いいないいな~俺なんて30分はかかるぞ。だから今日なんて遅刻しそうで…こうやって…カップラーメンを…。」
カシャカシャ。
「おいまてケン!?」
「ふふふ…カップラーメンを食べながら登校するばか丸出しの写真を学校じゅうに…ばらまいてやるけ!!」
青になった信号を駆け出すケン。
「あ、おいちょっとまて。」
慌てて追いかけるセイン。
ケンのお陰でこのあと遅刻が間逃れたことは言うまでもない。
が…写真はばらまかれていた。



昼休みにでもなると学校中に拡散されたみたいで誰か廊下ですれ違うたびに「よう、カップラーメン。」とセインはばかにされていた。
「カップラーメンの何が悪いんだ…。」
ぶつぶつと文句を言うセイン。
「まあまあ、別にいいじゃないけ?」
「よくないだろケン!?てかお前のせいだぞ!?」
「まあまあ…これでお前も有名に慣れたんだけ感謝しな。」
「そんなんで有名になりたくないわ。」
ぷいっと窓をむくセイン。
「分かったよ。何か奢るからさ。」
しかしセインはまだ窓の方を見ていた。
「なんだ!?不満け!?」
窓の方を見ていたはずのセインは窓の外に目がいっていた。
「お…おいケン?あれはなんだ?」
プルプル震える指の先をケンも見る。
「なんだって?…はん!?」
校庭に数人の全身黒い格好をした連中が歩いていた。
「なぁ…セイン?これはなんの冗談だ!?あいつらライフル銃持ってんけ。」
AK-47をもった…武装集団。
雰囲気からして明らかに訓練ではなさそうだ。
「い、急いで先生に知らせないと。」
「そ、そ…うだな。急がなけ…。」
その時一発の銃声が響いた。
楽しい昼休みが地獄に代わる合図だった。
ピンポンパンポーンというチャイムと共に先生の声がする。
「た、ただいま…不振人物が校内に浸入しました。生徒の皆さんは訓練の時と同じように………え!?…うぎゃあぁぁあ。」
マイクから悲鳴が聞こえてきた。
ざわめく生徒達。
「ザザ…ガガ…ザァ~あ~あ~よし。学校にいる皆さんこんにちは。信じられないとは思うが我々はこの学校をジャックした。我々の目的は金である。生徒一人につき家族に300万円を要求する予定だ。君達がおとなしくしていれば殺すつもりはない。校内にいる生徒およびその関係者は体育館に来なさい。期限は30分以内だ。それ以内の来なければ見つたものから殺していく。以上だ。」
放送が終わるとクラスはお葬式ムードになっていた。
もしここにお経で聞こえてきたら涙でも流れてきそうだな。
セインもまた言葉を出せずにいた。
「おい、体育館にいこう…。」
ケンがポツリと言った。
「そうだな…いこう。」
「ま、まてよ。さっきの言葉を信じるのか?」
反対する者やつ。
確かあいつはクラス委員だったな。
「信じるしかないだろ?」
なだめるようねケンは言う。
「まずは警察だ。」
そいつが110番通報をしようとスマホを取り出す。
「……ん……電波が…。」
セインもスマホを見る。
「はん?」
誰のスマホにも電波は入らず連絡をする事は不可能だった。
しばらく硬直状態が続いたが、訓練とかでは絶対にないということだけは誰もが理解できた。
「体育館行きますか…。」
「そうだな…このままじゃ…。」
一人また一人と教室を出ていった。
そして最後に残ったのはケンとセインだけになった。
「ケン…先いっててくれ 。」
「セイン?何か馬鹿なことやろうとしてないか?」
「大丈夫だ、少し考えたいことがあるだけだ。」
そうか、と一言放ち不安そうな顔をしつつもケンは教室出ていった。
さてと…動くか…。
「ご主人様、頑張りましょうね。」
「グリモアール?本当にいけるのか?」
ニコニコと元の大きさに戻ったグリモアールは答える。
「まあご主人様次第ですね。」

魔道書見つけました。

魔道書見つけました。

  • 小説
  • 短編
  • 青年向け
更新日
登録日
2015-02-04

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  1. 魔道書見付けたなう
  2. 学校なう