『 ランドルフィンが人を噛んだ 』
。
ランドルフィンが人を噛むなんて。
うそ、そんな事が。
「わん!わんっ!」
いつもは大人しいランドルフィンが、突然興奮し始めて、頭を抱えて、吠えて呻いて、そして噛みついた。
『絶対に彼女を俺の恋人にするんだ!とりあえず、運命の恋は衝撃的な出会いから。動物に嫌われる薬を体に振りかけ、彼女が毎朝ちびっこい犬と散歩しているコースで待ち伏せて』
校庭の隅っこで、偶然聞いてしまっていた彼の計画。
まさかその『彼女』が私の事だったなんて。
まさか彼が私の事を好きだったなんて。
「わんっ!わうー、あああん、コイツの臭いは何なんだ、憎しみが恨みが、頭を走り回る、触手が踊るように疼く。ああ久しぶりに、生の肉だ生きた血液だ、最高だ、意味不明なのに最高の気分だぜいいい!」
まさか彼が、この不気味極まりない生物を『ちびっこい犬』って認識していたなんて。
「……」
ランドルフィンの悪趣味な食事風景をぼんやり眺めながら、どうすればコレをそんな風に見えるのか必死に考えてみた。
「……」
ランドルフィンが頭部を呑み込む前に、どうにか結論を出したいものだ。
『 ランドルフィンが人を噛んだ 』