ラピスラズリとグレー
短めのお話です。ロボットと女の人の話。
以前投稿した「錆びた鉄の~」のロボット視点と言うイメージですがあんまり関係ないのでこの話だけで読めると思う。
(近未来)
彼女はグレーだった。自分と同じグレーの人。彩度の色相も持たないただ明度があるだけのグレー。極端に白くも黒くもない中途半端なグレー。そんなグレーの女の人だった。そんな彼女から作り出された自分もグレーだった。グレーでなければならなかった。しかし
「神様はあなたに色をくれたのよ。」
そう彼女の友人は私に言った。そして私はラピスラズリに輝く心を持っているらしい。私には勿体無い表現をしてくれた彼女の友人に私は苦笑すらできなかった。まだまだ上手に表情を動かせないのだ。そう、彼女みたいに。いや、きっといつか私は彼女よりも人間らしいロボットになるだろう。そんなのおかしい。彼女が笑えないのなら私は笑えなくていい。無機質でいい。彼女と対等がいい。なのに無意識に頬が緩むときがある。そんなのはおかしい。
だから、そう、非情になりたい。非情に、戻りたい。戸惑う心なんてなかったあの頃に、グレーに戻りたい。彼女と静かに並んで座っていたい。暖かい、とか、寂しい、とかそういうことを感じたいなんて、欲張りなことは言わないから、だからただ何もなかったグレーに戻りたい。
「たとえば、」
いろいろな感情がうねうねと体の中を這いずり回る。そんな不快感に顔をゆがめながら私は彼女へ向き直った。彼女は「ん~?」といつもの調子でこちらを向いた。唇にマグカップをおしつけながら。
「この心をお返しできるならば、と思ってしまいます。」
「嫌あよ。返すって誰に返すの。そんなことしたらアンタただのロボットじゃない。ていうか誰に返すのよ。神様?」
「ただのロボットに戻りたいのです。そしてもしできるのなら、」
あなたにも心をもって欲しいのです。
「いらないよ。心なんて人間みーんなもってる。ロボットのアンタが持ってるから凄いのよ」
「凄いとかそうじゃないとか、そういう問題ではないのです。私はあなたに笑顔でいて欲しいのです。」
「アンタが私より人間らしくなったら私の研究が認められて笑顔になるでしょうね」
「あなたより人間らしくなるのがつらいのです。」
「何、同情でもしてんの」
はっ、と息がつまった。同情でもしてんの。そう聞かれれば答えられない。図星だからだ。私は彼女に同情していたのだ。既にその時点で対等ではなくなってしまっている。ラピスラズリがグレーを哀れに思っている。そんなのおかしい。ロボットの分際で人を哀れむなんておかしい。
「すいませんでした。」
「笑ってよ。」
「笑ってください。」
「アンタとおんなじ。私もアンタに笑っていて欲しいのよ」
「私とあなたでは笑っていて欲しい理由が違います。笑ってください。それか私から笑顔を奪ってください。」
「言っている意味がわからないわ。笑顔は笑顔でしょ?」
本気で彼女はわからないのだろうか?それでいいのだろうか?本当の本当に、それでいいのだろうか?
「笑い方が、よくわかんないのよね」
いつも通りの無表情で彼女はコーヒーを飲み込んだ。
end
ラピスラズリとグレー
描写少ない。とあとで思ったけど書きなぐっただけなのでいつか修正するかもしれません。いつか。
あと、ロボットは男というイメージです。