Truth of war  第二話 ~悲劇のバレンタイン~

西暦2018年2月14日、モスクワ帝国の独立から二ケ月と少し。
モスクワ帝国は目覚ましいスピードで周辺国に攻め入った。
グルジアやべラルーシなど、かなりの領土が占領され、国家存亡の危機に瀕している国家も決して少なくない。
モスクワ帝国の独立は世界中で様々な変貌をもたらした。
日本では自衛隊の専守防衛という形を変え、軍事力を高めようという声が高まり、先進国諸国では、攻め入られまいと核武装へ乗り出す姿勢を見せる国もある。
中にはヨーロッパ全体で一国を作り、モスクワと徹底交戦すべきだ、などという極端な意見までもが出る始末だ。
実際のところ、ロシア東側の政治は安定せず、アメリカの介入なしでは国家存亡すら危うい状況に置かれている。
EU中心国への攻撃を目論むモスクワは、ベラルーシ、ウクライナに手を伸ばそうとした。
国連軍はウクライナで迎え撃つことを決定。結果、これが世界情勢を大きく動かす引き金となってしまった。
この日の出来事はのちに「悲劇のバレンタイン」と呼ばれることになる。------------------------

2018年2月14日、ウクライナのモスクワ占領区近くのキャンプ。
モスクワとの交戦のため、世界中の軍、特殊部隊からエリートが集められた。
デルタフォース、SAS、KSK、フュージリア、グリーンベレー、スぺツナズ、SEALs、レンジャー、コマンドー、GIGN……..ほかにも各国からこぞってエリート兵たちが集められた。
今回は被害を抑えるため、小隊ごとでの編成になっている。
「君がファレイト少佐かな?」
若い---といっても俺よりは年上の----男が話しかけてきた。
「ええ、そうですが?」
「よかった、私はデルタフォースのゴースト・フライ中佐だ。なんでもプレべザの時に参加してたんだって?」

ゴースト・フライ中佐。デルタフォース所属。ギリシャのレジスタンス掃討では一目置かれているらしく、彼の部隊はフォックスハウンドと呼ばれる。-----------------

「ああ!あの有名なフォックスハウンドの!お噂は聞かせてもらっております!」
「いや、そんなにかしこまらないでくれ、今回は配属が同じ小隊でね。その挨拶に来たんだ。」
そんなことを話していると、キャンプの中心にある広場でアンタレス大佐の演説が始まった。
「本日づけで昇進したアンタレス准将だ。今現在からこのキャンプの部隊の総司令を務めさせてもらう。さて、ここには様々な部隊から精鋭たちに集まってもらっている。階級の違いはあれど、君たちはみな世界のために戦う英雄だ。ただし、死んで崇められることは許さん。いいな?絶対に生きて帰れ。かならずどこかで君を待っている人がいる。」
アンタレス准将の演説に兵士が湧きかえる。
言い終えると同時に、無線から連絡が入った。
『ここから西に5マイルほど移動したところにある町でモスクワ軍を確認!至急出動してください!』

ヘリで町まで移動する間、最後の確認を行った。俺たちの分隊は他にフライ中佐、ライフ、グリムだ。
町が見えてきた。煙が上がり、乾いた銃声が聞こえる。
町から600メートルほど離れたところでヘリから降り、周囲を警戒しながらすすんだが、意外とすんなりと町までたどり着けた。
町の様子はひどいものだった。民間人は逃げまどい、そんな人々を気に掛ける様子もなく、モスクワの兵士は銃撃をする。
流れ弾に当たり、一人、また一人と民間人を巻き込んでいく。
「くそっなんだってんだ!あいつら平気で人を殺しやがる!」
ライフが愚痴を漏らす。この場にいる誰もが思っているであろうことを。
「こんなの、無茶苦茶だ・・・!」
グリムが言った。新兵にこの殺戮シーンはきつすぎたかもしれない。
戦闘は熾烈を極めた。
「だめだ!相手の数が多すぎる!増援を要請しよう!」
『いや、その必要はない』
フライの言葉を遮るかのように無線でアンタレス准将が言った。
「なぜです!?部隊を見殺しにするんですか!?」
『そうではない。じきにわかるさ』
その言葉の意味がすぐにわかった。
突如自衛隊のヘリが飛来し、モスクワ兵に攻撃を始めたのだ。
「ど、どういうことだ!?」
ライフが混乱気味に問う。
『君達はきいていないだろうが、自衛隊、いや、日本軍とトルコ軍の応援が得られることとなったのだ』

2018年二月七日、自衛隊隊員たちが武装奮起、大規模ストライキが発生。結果、日本は専守防衛を捨て、軍として形を成した。
その後、急速に力をつけた軍上層部がウクライナでの紛争への参戦を決定。
この戦争の影響で友好国トルコに自衛部隊として派遣されていた部隊を侵攻させたのである。

「フライ隊長!この機に生じて攻め返しましょう!」
グリムが叫ぶ。
「よし、行くぞ!私についてこい!」
フライに続き、敵を掃討する。
モスクワ兵は予想もしない増援に陣形が総崩れになっている。
こうなってしまえばもう展開は早い。逃げまどうもの、泣き叫ぶもの、発狂するもの、次々に倒れていく。
「身勝手なものだな。人は平気で殺すのに、自分達は必至で生き延びようとする」
国連軍が侵攻するなか、アンタレス准将がつぶやいた。
侵攻部隊が撤退を始め、ウクライナでの戦闘はひとまず終了した。
その後も日本・トルコ軍による掃討作戦により、ウクライナの占領は解放された。
この出来事を境に、日本軍の功績がたたえられ、次第に日本は軍事力をつけていった。
誰しもが国連軍の勝利に歓喜し、日本をたたえたことだろう。
しかし、本当に日本の軍事参入は義によるものなのだろうか?………….

~トリカーゼ基地、情報司令部重要ファイル保管庫~
「日本軍の再建・・・なにか引っかかる。」
本来ここはかなりの階級を持つものしかはいれない場所。そこに忍び込んでいたのは
イェーイ先任伍長・・・いや、CIAオフィサーだった。
彼はこの戦争の報告者としてこの基地に送りこまれた人間なのだ。
「これは・・・北方領土返還・・・ロシアへの加担・・・枢軸国?なんなんだ、この資料は?CIAのデータベースにもこんな情報は・・・!?」
パスッとサイレンサー越しに拳銃を放った音とともにイェーイはその場に崩れ去った。
薄れゆく意識の中で見えたものは、日本の軍人だった。
日本軍の動きは世界をどう変えるのか?日本の目的は?そして・・・イェーイ暗殺の理由は?
この世には欲望と陰謀が渦巻いている。その中では本当に信じられるものなどはないのかもしれない。----------------------------------------------------------------------------------

Truth of war file2…西暦2018年二月十四日「モスクワ、ウクライナへ侵攻、通称悲劇のバレンタイン。ウクナイナ占領区奪還、日本軍の再建」

Truth of war  第二話 ~悲劇のバレンタイン~

Truth of war  第二話 ~悲劇のバレンタイン~

周辺国に勢力をのばしたモスクワに対して国連軍はウクライナでの迎撃を計画する。苦戦を強いられる国連軍であったが、そこに謎の増援が・・・・・?

  • 小説
  • 掌編
  • アクション
  • 時代・歴史
  • SF
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2012-02-19

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