『 乳脂肪分4.5の罠 』
。
一時間と少し。
私は便座から立ち上がれないでいた。
全ては特濃牛乳のせいなのだ。
お腹に優しい牛乳しか買わないようにしていたのに、
彼女が間違えて特濃を買ったから。
いや、美味いんだよ。
好きなんだよ。
でも体質的に受け付けない。
大丈夫かと思ったけど、やっぱり。
『……壊され……我らのヒーロ……』
テレビの音が何となく聞こえた。
ヤバい、早く行かなければ、悪の怪人が、怪獣が街を。
「ヒーローが来ないんだって」
ドアの向こう。
笑いを堪えたような彼女の声。
「ねえ、ヒーローが」
ドアの向こう。
堪えようともせず、笑い出す彼女。
「あはは、どうしてだろうね」
……まさか、彼女は。
『 乳脂肪分4.5の罠 』