喰い損
Phase:1-1
雲ひとつない空の下、波と岩がぶつかり合い、細かい水しぶきを立てている。
海岸にはじりじりと太陽の光があたっており、うっすらと蜃気楼を起こさせる。
ごく当たり前の光景であるこの海を見ていると、自分を縛り付けるものも全て忘れさせてくれる。
今でもそれは変わらず、どんなに苦しくたって海を思い出せばなんでも楽に思えた。
その海の優しさを知った時だろう、家族を家族であると思わなくなったのは。
相変わらず夏は暑いものだ。冷房をかければ解決するのだが、それは部屋の中にいるとき満足するだけで、ひと度外へ出れば、30分もすればすぐに日焼けしてしまう程の日光が体を照りつけるのだ。毎日これが続くとさすがに慣れる、とまではいかないがイライラすることはあまりなくなった。
それを生まれた時からずっと体験してきた僕は夏が大嫌いだった。だけども、そんな夏でも唯一好きな要素があった。海だ。あの海を見れば、その瞬間だけ全てを忘れられる。僕はその場だけ忘れられればいい、なんて楽観的な考え方は基本的に嫌いだ。だけども、それを嫌っていながらもそうしてしまう自分も嫌いだ。
いい加減な生活ばかりしてきたからいい加減な思考回路を持っている、と現実逃避する毎日だ。いい加減どころじゃ済まないのかもしれない。犯罪者に分類されるくらいなものだ。
思い出すだけでも既に死んだ人への殺意を抑えることができない。死ぬべき人間はいくらでもいる。俺はそれを、世の中の驚異を取り払っただけ、正義を振りかざしただけだ。正義を振りかざして、自分にとって不都合なものを取り除くことを世間一般的には“悪”と呼ぶのだ。戦隊シリーズとはまさにそれだ。
喰い損