搾りとる

誰しもが持つ甘いあまい果実
泣きながら握りしめた手のひらの中
向日葵に追い越された頭の上
毒も蜜も一緒に吐いた舌の表面
どこまでも
どこまでも
なだらかな心は曲線を描いて
私を優しく抱くように転がる
そうっと転がったり 時には跳ねたり
そうして私の中へと融けていく
ほんのり酸っぱさを感じる時間と
痺れるような甘さを堪能する恍惚とした瞳
つややかな色を呑み込み
自分を待たせて煌びやかな世界へ飛び込む
花火のように
どん、ぱら どん、ぱらり と
ぶつかって 笑って
柔らかな闇へと身を投げる
色を失った所で道は消え
輝き 煌めき 暖かさ 道標までも
私を置いて次を待つ
迷子は静かにゆっくり沈んで
鮮やかを抜き取られ
死んだような色の札をつけられ
果実は規則正しく背を蹴られる
熟れた肌と鈍い茶色
値踏みするような空気の線
振られた首の振動は
大きく、大きく、波に乗り
私をきつく絞り上げる
落つる果汁の甘さと苦さ
這い蹲って舐めては首を振り
私は無へと還っていく
甘い汁など出ないというのに

搾りとる

搾りとる

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-01-28

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