あめのほし

あめのほし

このほしは、陽が暮れると雨が降る。
夜のあいだずっと、冷たい雨が降る。



はるかとおい昔、このほしの夜は、金剛石であふれていたそうだ。
あるとき、その金剛石を手に入れようと、ひとりの男が空へはしごをかけた。

ひとつ、ふたつ、みっつ。

そうだ、はしごをかけろ、
その様子をみていた人々は、次々に金剛石を夜からうばった。

なんてうつくしいんだろう、もっとほしい、もっと、
いつしか空いっぱいだった金剛石は、最後のひとつを残すだけになった。



それまで、夜はただ静かに、人々のするにまかせていた。
そして、ひとが最後の金剛石を手にしたとき、冷たい雨が降りはじめた。

金剛石がなくなった空は穴だらけになっていた。
そんな空に夜は、雨を注ぎはじめたのだ。


人々ははじめのうちは気がつかなかった。

十回めの夜がきて、少しずつ気がつきはじめた。
三十回めの夜がきて、もう一度はしごをかけることにした。
でも、はしごは雨に濡れて、足がすべって、もう、もとには戻せなかった。



そうして、このほしはあめのほしになった。
いつか、あふれて、誰もいなくなるだろう。

「やぁ、こんばんは。今日はいちだんと冷えた雨ですよ」

あめのほし

あめのほし

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-01-27

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