普通じゃない子

ある日
クラスの担任の先生に言われた心無い一言

「あなたは普通じゃない」

僕には意味が分からなかったんだ…。

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ある日
クラスの担任の先生に言われた心無い一言

「あなたは普通じゃない」

僕には意味が分からなかったんだ…

2

「ほら!やっぱり
あなたは普通じゃない。」

友達とふざけていたら、急に先生が僕をつかんで怒鳴った。

みんながクスクス笑ってる。

「さぁ!みんなでこの子の悪い所を言ってみて!」

みんな笑いながら
僕を指差して言うんだ。

「授業中ふざけてうるさいです!」

「帰れ!」

「もうお前なんか学校にくんな!」

先生は満足そうに微笑んで僕に言ったよ。

【 わかったわね?普通にしてなさい。みんなが迷惑よ。 】



普通?
普通ってなに?

ふざけていたのは僕だけじゃないのに。

今まで一緒にふざけてた友達の気まずそうな顔も
みんなのクスクス笑う声も
授業を進める先生の話も


何も聞こえないくらい
僕は一生懸命考えた。

だけど
わからなかったよ。

普通じゃないってどういう意味なんだろう?

普通の子ってどんな子なんだろう?


授業中ふざけていたのは、いけない事だね。

それはわかったよ。

もうしません。


「学校にくるな」って、言われた。

どーしよう?
お母さん怒るかな?
普通じゃない僕を嫌うかな?

明日から【普通の子になります】って言いたいけど、
“普通の子”がよくわからないよ。

【この世に同じ人間はいない。たった1つの大切な命。】

前に先生が言ってた。
それはわかるよ。

だから、イジメや自殺はいけない。

戦争もなくさなきゃ。

でもね、
今日先生が言った
【普通じゃない】
の意味がどうしてもわからないんだ。


悲しい気持ちで、
いつもの道をとぼとぼ歩いて家に帰った。

家に帰ればお母さんがいる。

お母さんは何でも教えてくれる。

だけど今日のは訊けないな…。

だって、お母さん哀しむに違いない。

僕だって…
意味がわからない僕だって、
こんなに悲しくなるんだから。

3

家につくと、
お母さんがいつものように忙しそうに弟の世話をしていたよ。

「あのね…」

小さな声で話しかけたけど、お母さんは気づかなかった。


「あ!お帰り。手を洗ってうがいしなさい!」

いつもの口調で僕を急かす。

僕は忙しい時のお母さんを、イライラさせてしまう天才だから。

怒られないように、急いで手を洗ってうがいをしたよ。

「あぁ!もう!なんでこんなにビチョビチョにするのあなたは!
ほらほら!早く着替えなさい!」

気をつけていたのに、洋服を濡らしてしまった。


忙しそうにお母さんは着替えの服を出してくれて、
弟と僕のおやつを準備してくれた。


「おやつを食べたら遊びに行くんでしょ?」

お母さんに訊かれても答えなかった。

「聞こえてる?返事は?」


お母さんがちょっと怒ったような大きな声で言った。

僕は
「今日は遊びに行かないよ」
一言だけ言って、テレビをみている振りをしたんだ。


だって先生から電話がくるかもしれない。

以前
僕が友達と喧嘩したとき、
先生から電話があって
お母さんが

「申し訳ありません。ご迷惑をおかけいたしました。」

と何度も何度も謝っていた。

今日友達と喧嘩しちゃったよ。

先生にまた怒られたよ。

僕は友達がズルをしたから、
注意したら怒って叩いてきて、
だから喧嘩になっちゃったんだよ。

お母さんに話そうとしたその時に…
先生から電話がかかってきちゃったんだ。

電話が終わって、
お母さんが怒鳴る口調で言ったよ。

「なんでそんな事したの?
もぅ!恥ずかしいじゃない!先生から電話がくるなんて!」

僕は何も言えなくなってしまった。

お母さんは
「理由を答えなさい!」
と怒鳴ったけど
何も言えなくなってしまったんだよ。

そして思ったんだ。

僕はお母さんを悲しませるだけの子供だ。

僕がこの家族に生まれてこなければ、
この家はもっと幸せだったんじゃないかな…ってね。

だけど
僕はお母さんが大好き。

お父さんも弟も大好き。

大好きなのに…。

4


先生の電話を泣きそうな気持ちで待っていたよ。

お母さんは今度こそ僕を嫌いになるだろう。
“普通じゃない子”なんかいらないって言われたらどうしよう…。

夕飯の時間になっても
お風呂の時間になっても
先生からは電話はかかってこなかった。



とうとう寝る時間になって

明日の時間割をそろえながら、
明日の学校に行っていいんだろうか?と思ったら急に怖くなった。

そしたら、
どんどん怖くなって

吐き気がしてきたんだ。


「お母さん…気持ちが悪い」


弟を寝かしつけているお母さんは忙しいから怒るかな?って思ったけど
本当に吐きそうだったから、ガマンができなくなって声をかけたんだ。


「大丈夫?熱はないみたいね?他は頭痛い?お腹は?」


僕の額を触って、ホッペやお腹を触ってくれたお母さんの手が、
凄くあたたかいから
涙が出てきて止まらなくなってしまった。


お母さんは、
寝てしまった弟をベッドにそっと寝かして
いつものように

「おやすみ。大好きだよ。」

とキスをしてから、
僕のところに急いできてくれた。

5

どうしても涙がとまらない僕に

「どーした?なんか学校であったの?」

とギュッと抱きしめてくれたんだ。

僕は頑張って声をだして言ったよ。

「普通じゃないってどういう意味?」

お母さんは一瞬キョトンとした顔をしてから笑って言った。

「普通じゃないって誰かに言われたの?」

僕は小さな声で言ったよ。

「先生に…先生が普通じゃないって。

そしたらみんな笑いながら学校にもう来ちゃだめだって言うんだ。

普通の子ってどんな子?」


ちゃんと説明できなかったよ。


いつものように、
お母さんに怒られると思ったから。


よけい涙が止まらなくて、
声もどんどん出なくなってきちゃった。


お母さんは深いため息をついてから、
ニッコリ笑って言ったよ。


「お母さんも普通じゃないからわからないな。」


え?

思わず顔をあげて、お母さんをみた。


「それにお母さんは普通がいいとは思ってないしね。」


お母さんは笑ってた。


いつものように怒った顔ではなかった。


「なんでそんな事を先生は言ったんだろうね。」


いつものように質問責めではなく、独り言のようにお母さんは言った。


「僕が授業中ふざけて友達と騒いだから。」


お母さんは笑ってる。


怒ってないみたいだけど、僕は小さな声しか出せなかった。


「そっか。授業中ふざけて騒いだらいけないね。」


僕は思わず、

「それはわかるよ。それはわかった。
だからもうしない。」


大きな声でお母さんに言った。


「そりゃあ良かった。今度から気をつけてね。
でもね…たしかにお前は普通じゃない子だ。」


え?
やっぱり僕は普通じゃない子?
やっぱり僕はダメな子なの?


不安を口にする前にお母さんは僕を強く抱きしめて言ったよ。
 
「お前は特別な子だよ。
普通なんかじゃない。
お母さんの宝物。
お母さんの大切な大好きな特別な子供だよ。」

6

気がついたら
さっきまで吐きそうだったのに
すっかり吐き気は治ってた。


「先生だって神様じゃないからね。
間違える事もあるよ。
本当いうと…

お母さんは物凄く先生に頭にきてる。
明日一番に文句を言いに行きたいくらい。
でもね、
何もこの世に学校の先生はあの先生1人っきりじゃない。

絶対お前の良いところを見つけてくれる先生だっているよ。

学校だってね、
何もこの世に1つしか無いわけじゃないんだからね。

友達だってね、
まだ本当の友達に巡り会ってないだけだよ

だからどーしても辛くなったらお母さんに話してね。

お母さんとお父さんがなんとかしてあげる。
そうだよ。なんとでもなるよ?

だから大丈夫だよ。」


自信満々なお母さん。

なんでかな?

なんでそんなに自信満々なの?


僕もなんだか、
くすぐったくなって

可笑しくて
笑ってしまった。

「明日学校やすんじゃう?」

冗談みたいに言ってくれたお母さんに、元気に答えたよ。

「大丈夫!行くだけ行ってみる。」



7

いつもより早く目がさめてしまった。

顔を洗ってたら、お父さんがきて
何も言わずに頭を撫でて、行ってしまったよ。

ごはんを食べて
学校に行く準備をしてたら、
お母さんが小声で言った。

「先生に文句言わない方がいい?」

僕は思わずふき出してしまったよ。

「お母さんの迫力に負けて先生きっと泣いちゃうよ?
どっちでもいいけど。」

お母さんもふき出して、

「そーだね。
今回は見逃してやるか!
でも今度お前を傷つけたら許さない!」


まるで悪巧みをしている2人みたい。

ニヤニヤしながら玄関で靴をはいたら


お母さんが、弟にするみたいに

「大好きだよ!」

ってホッペにキスをしてきた。

「やめてよ!恥ずかしい!」

思わず言っちゃったけど…

本当いうと
とても嬉しかったんだ。


「行ってきまーす!」

車に気をつけてね!

お母さんの声と同時くらい

ドアがしまる寸前に、
早口で言ったから聞こえたかなぁ?

「お母さん大好き!」


今日はいい天気。

すごくいい天気だよ!

普通じゃない子

2007年に初めて「携帯小説」という(当時)新しいカタチで何か残したくて書き込んだ処女作です。

魔法のi らんどで公開してから沢山の方々に読んでいただけた思い入れの強い作品です。

読み返せば修正したい部分も多々あるのですが…
この作品はこのまま 魔法のi らんどから移してこちらでも公開することにしました。

* 行間などの修正を少ししましたが、文章はそのままです。

普通じゃない子

2007年の処女作。SONYdigital entertainment serviceで公開していただいたりした思い入れの強い作品です。

  • 小説
  • 短編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-01-27

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

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