黄金の樹
ーある村に昔から伝わる1つの伝統があった。
それは、村にたっている一本の木の話だった。その一本の木の下には1つの家が建っていた。そこに住んでいるのがレトロニーニャ・レーガンとその弟のフロルだった。フロルは恥ずかし屋がりで幼く、姉のレーガンは大人しく常に冷静だった。「聞いてくれよ!姉さん!この木の話は本当だったんだよ」フロルが学校から帰ってきたようだ。「フロル、少し熱でもあるんじゃないか?ふふっ」そう言うとレーガンは戸棚から風邪薬を取り出した。「フロル、この薬はとても効くから」そして、コップに水を汲んでフロルに手渡した。するとフロルがいつもどおりのように「僕、この風邪薬苦手なんだ。オブラートに包んでくれる?」フロルは、もう10才というのに未だにこの薬が飲めない。「フロル、私は、3才でも飲めたんだぞ?なのに、フロルは飲めないのか?」そうは言いつつ薬を棚に戻して、「フロル、そろそろ買い物の時間だ。寒くないように支度をしなさい。」わたしとフロルは、コート、マフラー、手袋を着けて家を出た。いつものロナ商店街へ行く。「レーガンお姉ちゃん!!」この幼い子は、ロナ商店街のギンザー家のクロニーニャさんの子供「レナ」だ。いつも、ここに来るとフロルと遊ぶのだ。「姉さん、レナと遊んでくるね」そう言うとフロルはレナと走ってどこかに行ってしまった。フロルにはレナという友達がいる。私には友達と言えばやはり、「アロマ」だ。ディエ・モルガンといういきつけの店の手伝いをしている。「いらっしゃい。レーガン。今日は何を買いにきたの?」赤髪で笑顔がとても可愛らしい女の子だ。「今日は、クロワッサンとジンジャー、オレンジピールにジャスミンエッセンスを頼む。」「何か作るのかしら?」「ああ、ジンジャーとオレンジピールのジャスミン砂糖漬けかな」趣味がお菓子作りのレーガン。作ったものは村の人、アロマ、レナにあげている。たまにバザーに出すこともある。「ねぇ、レーガン。このチラシ見た?」アロマが私にチラシを見せるなんてなんとも珍しい。何かあったのか…。私は、珍しく緊張しながらチラシを受け取った。その内容は…。「ぶっっはっ!なんなのだ?これは?」その内容は、「黄金の樹の真相を探せ!!参加費無料!皆も黄金の樹の秘密を知りたくないかい??知りたいだろう?知りたいならこの黄金の樹探検ツアーへGo!!」と、なんとも馬鹿らしいことが書いてあったのだ。「アロマ、もしかしてこれに行きたいのかい?」アロマは、少しの間黙って、「レーガンは知りたくないの?」知りたくないわけでは無いが昔からこの話のことを信じたことなんて一度もない。そんな私が、興味も持つはずがない。「知りたくないわけでは無いが、知る必要性は無いと思うが?」これは私の中では模範解答だ。「そっか、そうだね。ごめんね。変なこと聞いて…」アロマは少し肩を落とすと「もう、休憩の時間だわ。レーガン、もし良かったらクランクレストへ行ってお茶をしない?」「いいが、フロルとレナも一緒に行ってもいいかな?」「ごめんなさい。すぐ終わるわ。二人きりにしてくれるかしら?」…不思議だ。いつものキラキラしてて、笑顔がとても可愛らしい彼女が肩をずっしり落とし、笑顔どころか泣きそうだ。「アロマ、何があったんだ?」聞かずにはいられない。なんせ、私のたった一人の大切な友達なのだから。「レーガン。ずっと好きだったの。大好きよ。」そう言うと可愛らしいアロマの顔に大粒の涙が溢れる。「アロマ、どうしたんだい?話してごらん。」そう言うとアロマを抱き寄せしっかりと抱きしめた。「レーガン、私、今度、ハラナサの西町へ引っ越すことになったの。」なんだって?!ハラナサの西町はこの国「ラナタマ」の中でも有名な大金持ちが集う街だ。「アロマ…。」いや、私には友達も言えるのはアロマしかいないというのにアロマがいなくなったら…そう、1人だ。いくら冷静な私でもこれはさすがに耐えられることじゃない。「あ、あ、あアロマ!お、おち、落ち着こう!!」1番落ち着いていないのは私じゃないか。
黄金の樹