~時の足跡~ 1章~5章
1章 ~追憶~
うちの名前は、カナ。
うちには、お父ちゃんもお母ちゃんも居ない。だから、うちには兄ちゃん達が親代わり。
ちょっと神経質でいつも怒った顔で手伝いを言いつけてばかり居る一番上の慎兄ちゃん。
仕事をさせると文句を言って一人ぼやいて何かと面倒くさがりな二番目の健兄ちゃん。
うちは、三人兄弟でお兄ちゃん達とは、歳の離れた末っ子。
お兄ちゃん達は、うちには構ってくれることはしない、だからいつでもひとり家の手伝いばかり
辛くても、寂しくてもお兄ちゃん達には言えない、だからうちはいつもひとりだった
でも学校に行けるようになって、うちには友達ができた
それが、アヤとサチ。
そして、一人だけ年上のアンちゃんが居る。
アンちゃんは勉強が出来て、頭が良い。
ただ何をやるにも行動がスローなのは、ちょっとたまに傷。
だけど優しくて、頼りにしてるんだ。
アヤとサチは、いつも一緒に居る。よく口喧嘩してるけど、10分と持たない・・・。
いつの間にか、笑い声と一緒にはしゃぎだしてる、多分喧嘩するほど仲良しなんだって思う。
こんな三人だけど、うちの一番の友達。
うちの通う学校には裏山があって、よく学校を抜け出しては探検と称して山へ行ってた。
今日も、いつものように裏山へ登った。
山の奥まで登って行くと、奥には大きな大木がいくつもあって、まるで森の中って感じ。
今日のアンちゃんは、口数が少なくて何を言っても、「う~ん」だけ・・・。
仕方ないとは思う、今日は気乗りしない様子だったのに、無理に連れ出したのはうちだから・・・。
「ごめんね」と、口にはしなかったけど心の中で呟いた。
けど、そんなアンちゃんにサチとアヤは、楽しんでいるみたいだった
いつも通りの道を抜けてずっと行くと、うち達が決まって辿り着く場所がある。
そこは生い茂った大木、丈夫そうでたくましくて、うちはこの大木が大好き。
ここはうち達の秘密の場所、そして唯一木登りが出来る場所、
だからそれぞれに好きな木を見つけて木には名前を彫って記しを付けた。
うちは一番に木に登って、それからアンちゃんに声を掛けた。
「アンちゃん~、登っておいでよ!」
サチが「行こう」って言って登り始め、アヤがその声に続いた。
アンちゃんは、黙ったまま立っているだけで動こうとしなかった。
サチが、「アンちゃん~?」と叫んだ・・・。
けど、アンちゃんは何か考え込んでいる様でうち達の声は聞こえていない様子だった。
アンちゃんには、年の離れた妹がいる。
でも妹は体が弱くて、外で遊ぶ事が無いって言ってた。
だからアンちゃんは、妹の事になるといつも一生懸命になる・・・。
そんなアンちゃんに気が付いたら、うちは無理に連れ出してしまった事が後悔に変わって、
登った木から滑り降りた。
サチもアヤも滑り降りてきて、うちは言えずにいた言葉を口にした…。
「アンちゃん、ごめんね。あたし・・・」と言いかけた時―
「違うんだ!ごめん、何でもないよ、だから、カナが謝ることないんだ」って、アンちゃんは言った。
でも、アンちゃんは少しの間・・・うちの顔を見て思いを募らせた顔で、
入院した妹の事で気持ちが沈んでいる事を打ち明けてくれた。うちは、言葉に詰まった。そんな時・・・
「ねぇ、みんなでお見舞いに行こうよ…アンちゃん、駄目かな?」って不意にアヤが言い出した。
うちは思わず、意気込んで「うん、行こうよ、ねえアンちゃん?」ってアンちゃんを見た。
アンちゃんは、目に涙を溜めながら小さく頷くとアンちゃんは
「ありがとう」そう言っていつもの笑顔を見せてくれた。
それから、数日後―
アンちゃんの妹の入院している病院へ向かった。
サチもアヤも少し戸惑っていたけど、思ったより笑顔になってた。
妹と話している時のアンちゃんは、とても嬉しそうで元気を取り戻しているように見えて
うちは来て良かったって心からそう思えた。
その日を境にアンちゃんは、妹の為に空いた時間を費やすようになって、いつしかうち達と居る事も
少なくなってた・・・。
アンちゃんが、うち達の前に姿を見せ無くなってからは、次第に会話も弾まなくなった。
うち達がアンちゃんに最初に出会ったのは、うちが学校に行き始めて数ヶ月が経った頃―
サチにアヤ、うちと三人…校庭にある大木の下で寝そべってお喋りしてた。
そんな時、ふいに木の上を見上げたら突然ー
「うわーぁ!?」って叫び声がしたと思ったら・・・
「ごめ~ん!」って大声を張り上げて、
ドスン!!と木の上から落ちて現れてのがアンちゃんだった。
どうやら木の上で居眠りして居て、滑り落ちたらしい。
何だか、そんなアンちゃんがちょっと可笑しくて、三人の顔を見合せながら大笑いしてた。
そしたら何故か、落ちたアンちゃんも一緒になって笑ってた。
その日からアンちゃんとは気が合って、いつの間にか4人で居る事があたりまえになってた。
最初はアンちゃん、妹が居る事、話してはくれなかった・・・。
アンちゃんは、良く考え事をしている事が多かったから気になって、
うちは何気なくアンちゃんに聞いた事があった。
「ねぇ…良く考え込んでいるけど、どうして?」
そんなうちの言葉を、アンちゃんは黙ったまま笑みを返してくれるだけだった―。
けどある時、うちは慎兄ちゃんに…
「もう学校なんて、辞めちまえ!」って怒鳴られてそれでもうちは学校に行きたくて
家を飛び出した、そして学校の校庭の木の下で堪え切れず出る涙を拭ってたら・・、
うちに気づいたアンちゃんが声を掛けてきてうちの顔を見て微笑んで見せた・・。
それからアンちゃんに言われて木の下に座ると少し沈黙の後に、話してくれた、
自分には歳の離れた妹が居る事…そして、
妹は体が弱くて学校に行けないで居るんだって言って、うちを元気づけてくれた。
アンちゃんは、いつだってうちに色んな事を教えてくれた。
うちは、アンちゃんに出会えた事…凄く幸せに思う―。
(今どうして居るのかな―?)
2章 ~孤立~
アンちゃんが抜けてから、3ヶ月が過ぎて…、山に登る事も、いつの間にか減ってしまった。
山の景色も、北風に枯葉が音を鳴らしながら空へと舞い上がって・・、
それはまるでアンちゃんに会いたいと、うちと泣いてくれたように思えた。
うちはアンちゃんが言っていた言葉を、思い出した・・・、
「寂しい時、悲しくて辛くなったら、木の頂上から目を閉じて,大きく深呼吸するときっと
笑顔になれるよ!」って言ってた
その言葉にうちは、アンちゃんに近ずける気がして、一人裏山へと向かった、
そして大木の頂上まで登って辿りついた時、
うちはアンちゃんの言葉を思い出しながら目を閉じて大きく深呼吸をしてみた、だけど
笑顔じゃなくて涙が溢れてきて悲しくなった、
「アンちゃん…うちは、笑顔にも見放されたのかな…?」
そんな事を思ったら、また涙が溢れて止まらなかった…。
(アンちゃんに、会いたい…!)
それから、1年が過ぎた頃―
うちは、慎兄ちゃんに連れられて街へとやって来た。
何も聞かされずに連れて来られて少し不安だった、でもあまり出してもらえなかったうちには
少し嬉しくて、街通りを歩いて居たら不安もどこか薄れてた。
店が何軒も連なった通りを過ぎると、あまり目立たない木造建ての店に着いた、慎兄ちゃんは、
店の前で立ち止ると、
「ごめんください~!」と言って、中へ入った。
すると店の奥から40歳前後の夫婦が出て来て、うちを見るなり…
「あら、カナちゃん?見ない間に随分大きくなって、背も伸びたのね!」
そう言ってうちの頭を撫でた、そしてお兄ちゃんに向かって…
「決めたの?良い子に育てるから大丈夫、心配いらないよ」ってそう言って微笑んで見せた。
慎兄ちゃんは、
「宜しくお願いします」と頭を下げて、うちの背中を押してた
うちは訳が分からなくて不安が恐怖に変わった時、うちは店を飛び出してた。
(うちは、あの夫婦の子になるの?!)どうして・・・、
うちの知らないところで、何もかもが決まっていたかのように…、うちの頭の中を駆け巡りだして
苦しくて街の中をただひたすら走った―。
そのうちに疲れてうちは歩き出した、その時、前をうちに向かって手を振る人に気づいて、見ると
アンちゃんが立ってた、ずっと、ずっと会いたいって思ってたアンちゃんが・・・、
「カナ、元気だった?」そう言ってうちの顔を覗き込んできた。
うちは何も言葉がでなくて黙ってしまったらアンちゃんは、
「何かあった?」って言ってうちの手を取って、「行こう~ねっ?」そう言って走り出した。
そしてアンちゃんに連れられて辿り着いた場所は、学校の校庭にある木の下だった、
アンちゃんは何も言わずに木の上を指さしてうちが頷いて見せるとアンちゃんは笑顔を見せて、二人で木を
登り出した。
木の頂上に着いて、アンちゃんを見たら少しやつれたような気がしたけど聞けなかった・・、
アンちゃんは、
「ごめん、会いに行けなくて・・・、カナ~?妹がさ~死んだんだ、未だ信じられないけど、だから…」
そう言って、うつむいてしまった。うちは(どうして~嘘)信じられなくて、
「嘘、どうして?どうしてよ、だってあんなに元気そうにしていたじゃない!なのにどうして!?」
気づいたら、うちはアンちゃんを責めてた
「あ、ごめんね、アンちゃんの所為じゃないのに、ほんとにごめんなさい・・」
そのあと言葉にならなくて何も言えなくなった、辛いのはアンちゃんなのに、なんだか苦しくなってきたら涙がでた・・・。
いつの間にか空には
月明かりが小枝の隙間から零れて、覗くと空には沢山の星が輝いているのが見えた。
うちが、何も言えずに空を見ていたら、アンちゃんは
「カナありがと、カナに会えて好かった。もっと早く会えば善かったって、そう思うよ」
アンちゃんはそう言って、うちの顔を見て笑った、「うちも、アンちゃんに会えて好かった」って言うと、
「カナ~?何か嫌な事あったの?」そう聞かれて、うちは…
「うん、でも大丈夫!アンちゃんに会えたら元気になれたから、ありがとう!」
うちがそう言うと、アンちゃんは…
「カナ?いつでもここに来るから、何かある時はここで会おう~ね?」そう言って
アンちゃんは夜明け前に帰路へと帰ってしまった―。
一人になったって気付いたら、帰る事が不安で怖くなった。それでも帰る場所は他に無いから…、
そう自分に言い聞かせて、重い足を引きずりながら、家の前に辿り着いた。
気がつくと家の前には、慎兄ちゃんが立って待ってた。
お兄ちゃんはうちの前まで来ると、何も言わずうちの顔を思いきり殴って、言葉を詰まらせながら
「お前のお陰で、俺は恥を掻いたいたんだぞ!」そう言ってまた殴った
うちは悔しくて・・・、
「どうしてうちの気持ちは無視なの?どうしてうちはよその子にならなきゃいけないの?」
言うとお兄ちゃんは、
「お前の為だからだ・・」そう言って家の中へ入って行ってしまった。
うちがその場から動けずに立ち尽くしていたら、健兄ちゃんが家から出て来て、
「家に入りなさい」そう言って声を掛けてきた。
言われるままうちが、家に入ると、そんなうちを見てたお兄ちゃんは居間で腰を下ろした、するとお兄ちゃんは
「お前をこれ以上養っていけないんだよ!だからお前の為だ!わがまま言わずに行け!分かったな」
そう言った。その言葉にうちは返す言葉が見つからなくて・・・、
それから、数日後―うちは、養女に迎えられる事になった…。
3章 ~家族~
冬の訪れは北風が吹きぬけて木枯らしを舞い上げた・・。
いつの間にか三ヶ月が過ぎて、新しい生活に必死になってたうちは、未だにサチにもアンちゃんにも会えずにいる、
(どうしているのかな?)少し寂しく感じたりもしてた…。
けど今のうちは、まだ馴染めないこの家での生活に慣れるのに、考える事も想いも気持ちに閉じ込めてた・・。
うちは必死だった、不安と戸惑いが入り混じって正直苦しかった、でも、
店の手伝いも食事の支度も無心になってこなした、そうしている方が何も考えずにいられるように思えたから、
ある時そんなうちにお母さんは、
「そんなに頑張っていたら、カナちゃんが倒れちゃうよ!そんな気張らなくていいんだよ?もうここは、
カナちゃんの家なんだからね?」って言って笑顔をみせてくれた。
その言葉に今まで張り詰めていたものが解けたようで、胸の奥で暖かい気持ちになれた。
うちは母さんの温もりを知らない、だから本当の家族に近ずけた気がして嬉くなった。
でも分かってた、そんな幸せが、長く続かないこと、うちは知った。
お母さんが、町内の婦人の処へ出かけた日の事、
うちは店番とお父さんの食事の支度で追われた、そんなうちにお父さんは…
「カナ!カナ~!来てくれ、カナ~!」
こんな忙しい時にって、うちは少しムッとなりながらも行ってみた。するとお父さんは…
「遅いぞ~ほれ、肩もんでくれ~それと腰もな・・」
そう言って、うちに背を向けて急かして、終わったと思ったら店番へと追い立てた、でもお父さんは・・・、
「お茶、入れてくれ!」・・・、「新聞持って来てくれ!」うちは、お父さんの世話に追われて一日が過ぎた・・・、
でもそれは、その日だけでは終わらなかった・・、
日増しに、お母さんの留守の合間を、うちを呼びつけては、何かと言いつけるようになった。
ある時うちは、店の奥にある部屋の片づけに入ろうとした時、突然、部屋の中から、
いきなりお父さんに腕を掴まれて部屋の中へ引き込まれた。
うちは悲鳴を上げそうになっら、いきなりお父さんの平手がうちの頬を叩いた、
うちはどうして叩かれたのか理解できなくて座りこんでしまっていたらそんなうちに
お父さんは耳打ちするように、
「お前は、お父さんの為に居させてるんだ、だからお父さんに逆らうな、わかったな!」言って部屋を出て行った、
その言葉は、うちの幸せという言葉をかき消した・・・。
お父さんは、何かとうちを覗き見ながら何か気に入らないと手をだすようになった。
そのたびに何度も店を飛び出して、店の裏で時間を稼いだ、
でもお母さんには言えない、お母さんに知られたくない、お母さんを悩ませたくない、そう思った、だから、
辛いけど堪えると決めた。
でもそんなある日の深夜・・、
うちは中々寝むれなくて、布団の中もがいてたら、そんなうちの部屋にいきなりお父さんが入ってきた・・・
うちは在ってはいけない事だって思った信じられなくて怖くなって無心に逃げ回ってた、
でもお父さんの異常さに耐えきれなくなって、うちは家を飛び出してしまった。
寝静まった夜の街を、たださ迷いながら歩いた、どれだけの時間をさ迷ってたのか、うちはふと、
アンちゃんに言われた言葉を思い出して学校の校庭にある木を目指した。
人気のない学校は、怖くて少し震えたけど校庭の木の下にたどり着いたら少しずつ震えも収まってきて木に触れてみた、
何だか温かくも思えて木の上に登ってみた
腰をおろしたそこは、何処か心地がよくて、気持ちまでも和らげてくれるようで、うちは樹に寄りかかって目を閉じた。
浅い眠りの中で、何時しか自分に起きた出来事が蘇えってきたら、ふいに目が覚めた、
気づくと、どうしようもない震えがきて止まらなかった・・・。
そんな時、木の下から声が聞こえてきた、「カナ~来てるのか~?」
うちは驚いて木の下を覗くと、いつの間にか空は薄っすらと明るくなり始めてた・・・。
下に居たのがアンちゃんだと分かって、うちは軽く手を振って見せたら、アンちゃんは頷いて木を登ってきた。
アンちゃんは、うちの格好を見て驚いたようだったけど、でも何も聞かずに、うちに自分の着ていた服を掛けてくれた。
「あっありがとう!」て言うと、アンちゃんが
「カナ~何かあったんだろ?辛いこと、いっぱい抱えてるんじゃないの?気になってた、でもカナが
気丈に明るく振舞っているのを見てたら、聞けなくなってさ~ごめん!でも好かったら話してくれないかな?」
うちは言葉に詰まった、アンちゃんの気持が優しさが嬉しかったからそしたら涙がでてきて、でも必死で涙を拭って、
「ありがと!アンちゃんに言うのが少し怖かったから、言える勇気なくて、でももういいのかな、あのね?あたし
養女に貰われたの、だから今新しい家族で暮らしているんだ~、お兄ちゃん達にはもうあたしの面倒は看られないって
言われたから、だから」って言ってしまったら後から後から涙が溢れてきて、言葉が続かなくて・・・、
そしたらアンちゃんは
「そう~カナ~?辛いね・・・」
それだけ言って、アンちゃんは肩を引き寄せてうちの頭を撫で抱きしめた。
うちはアンちゃんの腕の中、暖かすぎてまた涙が溢れだしてた・・、
「アンちゃんに会えて元気貰えて好かった、ありがと!だからもう大丈夫よ!」って言ったら
アンちゃんはうちの顔を見て、
「カナの事気になってて、ときどき合間をみては、カナが来てるか覗きに来てたんだ?だから俺もカナに逢えて嬉しいよ!」
そう言ってにっこり笑った。
でもうちはお父さんのことは言えなかった、アンちゃんの優しさだけで十分だって、そう思えたから・・・。
でもそんな時(もうどれくらいの時間が経ったんだろう?)ってふと気付くと小枝の隙間から陽の明かりが漏れだして
すっかり空が明るくなりだしてた、そんな時アンんちゃんは、
「いつでもここに来るよ、この場所にさ?だからカナ?苦しくなったら会いに来てよ!ね?」
そう言って帰って行った。
アンちゃんが帰ってしまったら、うちは帰るのが怖くて、足がすくんでた、でもお母さんのこと思ったら、
気持を振り切って帰ることにした。
そして店の前まで来た、でも戸惑いが足を止めた、でもそんなうちの前で店の扉が開いてしまって中からお母さんが出てきた、
お母さんはうちを見ると「中に入りなさい。」そう言って、うちの手を引いた。
居間にはお父さんがあぐらをかいて座ってた。うちが何も言えずにいるとお母さんが、
「カナが何処に行ってたかは聞かないけど、心配したんだよ?女の子が朝帰りは感心しないね~、まあでもこれらからは
そんなことしないでちょうだいね?わかった?」って苦笑いしながらうちを見てた、
「すみませんでした」って言うとお母さんは
「わかってくれたならいいのよ、じゃあ店番、頼むね?」そう言うとお父さんと二人部屋へと行ってしまった。
でもうちは、この日を境に少しの合い間も家から出してもらえなくなった
翌朝、お母さんはいつものようにうちに店番を頼んで出かけてしまってうちは店番へと追いやられてた、そしてまたお父さんは、
「カナ~!カナ~!カナ~!」(ああ~!やっぱり・・・)「はい~!」うちはしぶしぶ居間へ入った。
お父さんはうちの顔を見るなり、唐突に
「おまえ、男がいるのか・・・?」って聞かれた・・、
うちはなぜ、そんなこと聞いてくるのかが分らなかったけど、「居ません!」って言うと、お父さんは、
「つくるなよ!お父さんは許さん!覚えておきなさい!」って言った。
まだ恋というものを知らないうちにとって男と言われても、うちには理解できなかった。
(そんな事を言うお父さんは変だ・・・)口にはしないけど心の中で叫んだ。
それから一ヶ月が、過ぎた頃に
思いもよらないお母さんの頼まれ事で、うちは外へ出ることを許された。
ずいぶん久しぶりの外の空気は気持が良くて、うちは空見上げて溢れてくる涙堪えながら嫌な事を押し出すように
胸いっぱい深呼吸をした、そしたら嫌な事も忘れられる気がしたから、
穏やかに晴れ渡たった空に向かって吸いこんだ空気は、凍えそうな寒さも、少し和らげてくれるかのように心地いい風が吹いた。
4章 ~家出~
いつの間にか季節も春の訪れを知らせるかのように穏やかな風が吹き抜けて、この町の草木に緑の葉が顔を出してた、
ただ必死に過ごしてきた自分に気づいたら、早くも二年の月日が流れてた・・。
最近、よく出かけるお母さんは日増しに家を空けるようになってうちは絶えずお父さんと二人だけの時間が増えた、
お父さんのうちへ向けてくる視線も行動も過激になりだして、この頃では店の裏でお母さんの帰りを待って店に入るようになった・・。
そんな日々が当たり前のように続いてた今朝、お母さんがいつものように出かけてしまうとお父さんはうちを呼びつけた、
うちの顔を見るなり、お父さんは、
「おまえは母さんがいつも何処へ行っているか、知ってるか?」うちにはお父さんの言っている意味が理解できなかった・・・、
そんなうちにお父さんは、
「母さんにはな~、男がいるんだよ!だから母さんはおまえを貰って来たんだ、おまえのお兄さんだって知ってておまえを
養女に出したんだからな?だからおまえはお父さんの為に居るんだよ・・」「分かるな?だからおまえはお父さんに逆らうなっ!」
何故、今になってうちにそんな話・・、
うちがお父さんの為にってお母さんは知ってるってどういうこと、うちは理解できなかった、頭の中が真っ白になった時考えるのを止めた。
その夜、床に入ってもお父さんの言った言葉が頭から離れなくて眠る気になれなかった・・・、
お母さんの為にと必死に耐えてきた想いは(うちは物でしかないの~勝手にお母さんの事信じてただけなの~)
ずっとお父さんに怯えながら暮らしていくことに意味がないように思えてきたら、お父さんから逃げたい、そう思った、
その思いは次第に大きくなったら、この家から出て行くことを決意させた。
少しずつ貯めてたお金を手に寝静まった深夜、うちは家から脱け出して学校の校庭にある木を目指して走った。
そこしかないって思えたから、その時うちはアンちゃんが居るかもって、ちょっと期待もしてた、居るはずないと分かってても・・、
やっぱりアンちゃんは居なかった(そうだよね・・)分ってた、(それでも逢いたかったな~)
あの家での暮らしも長く続かないって分かってた気がする、お父さんを知ってから、だから今うちはここに居る
もう戻りたくない、戻らない、そう自分に何度も何度も言い聞かせた。
誰もいない校庭は静かすぎて、暗闇は空に輝く星たちが照らしてくれてた、
うちは木の頂上まで登り終えて、張り詰めてたものが抜けてきたら、怖さと不安が一気に襲って体中が震えだした・・・、
この時気づいた自分はひとりぼっちになったんだって、そしたらたまらなく悲しくなって涙が零れた、
夜が明けたらこの町を出て行こうって決めた、(でもアンちゃんに会いたかったな・・)そう思うとまた涙が出た。
うちはお母さんに今までお世話になった感謝の気持ちを、書置きに残した、でもうちには、まだ何を理解すればいいのか分からない、
ただ分っているのはうちは物じゃないってことだけ、それでもお世話になった感謝の気持ちは伝えたいって思ったから・・。
空が明るくなりだして、うちは始発の電車に飛び乗った、行くあてなんて無いけど早くこの町から出たかったから、初めて一人で乗った
電車の中は人がいる所為か温かくて心地よく感じさせてうちは心細さが少し和らいだ気がした
そんな時電車の中で、ふいに誰かがうちの名前を呼ぶ声がして聞き慣れた声に慌てて振り返って見た、すると
「カナ~カナじゃないの?」ってそう言ってサチが手を振ってた、うちはなんて切り出そうか焦って出た言葉は、
「こんな早くに、どうしたの?」って聞いてしまった。(それはうちも同じだったね?ごめん)そう思い反したけど口にはしなかった、
するとサチは
「わたし住み込みの仕事するの、だからこれからその仕事先に行くところよ?でカナは何処へ行くの?」って聞かれて、
なんて言ったらいいか迷ったけど、
「あたしもこれから仕事探しに行くとこ!」って言うと、サチは少し驚いた顔して何か考えてるようだった、そんなサチにうちは
何か聞かれるかなって構えてしまってた、するとサチは
「まだ決まって無いなら、私と行かない?住み込みだけど!」ってさらりと言った、
願ってもないサチの誘いはうちには嬉しくて思わず、「うん行きたい!あっでもいいの?あたしが一緒でも」って言ったら
「全然構わないよ!一緒にいてくれたらあたしも心強いから、嬉しい」そう言ってくれるサチの言葉が嬉しくて「ありがとう!」って返した。
こうしてサチと一緒に職場へと向かう事になった。
サチは絵の勉強をしたくて自分で仕事してお金貯めるんだって話してくれた、親に反対されたけど、説得して出てきたって言った。
そう話してくれたサチを見てて、うちは思い出した・・、
サチは山へ行く時はよくノートを持ってたなって、山に登ることに夢中だったから、うちは気にも留めてなかったけど、
サチはずっと前から自分の夢を持っていたんだ。そう思い反していく内に、サチって凄いな~って改めて思う。
気づくとうちは夢なんて考えた事もなくて、少し寂しい気持ちになった。
そんな事思い巡らせている内に電車は、四つ目のホームに辿りついた、その時サチに
「此処だよ!」って、サチはうちの手を握って歩き出した、サチに手を引かれるまま忙しいホームの中を抜けて駅に着いた、
そこからどれくらい歩いたのか分らないけど、ずいぶん歩いた気がする、
気づくと町からだいぶ離れた辺ぴな場所、家が何軒か並んだ先に見えたアパートのような建物だった。
そこは四階建てになってて三階から上が寮になってる、職場は一階だけ、それでも中は広くて働く人も多いように思えた、
いきなりだったうちなのに、すんなりと働ける事になって、うちにも出来るのかなって不安はあるけど、でもサチの喜んでる笑顔は
ひとりぼっちだって思ってたうちにとって、なによりも心強くて、今では寂しさも不安も、嬉しさで何処か吹きとんでた。
その時なってうちは改めて、此処から新しい生活を始めるんだなって、実感できたように思う。
5章 ~友達~
朝日が顔を出した頃に、乗り込んだ電車の中でうちは偶然にもサチに出会った、
そして思いがけないサチの誘いで、うちは居場所と仕事に辿りつけた、
辿りついた町は辺鄙な場所だけど、落ち着く場所になったのは最適な気がした、サチとふたりで入った職場は男の人も
女の人も皆が一緒に働いてて、歳の差はばらばらな気がするけど、でも明るい人達ばかりで、少し気持ちも和らげた、
仕事は手作業で数人に分かれての流れ作業、でも仕事は思ったよりも手間のかかる作業でうちは苦戦してた、
でもサチはそんなうちとは違って器用にも難無くこなしてるのが見えて、自分んがちょっと情けなくなったりもしてた、
何もが初めてのことばかりで戸惑いも大きいけど、それでもサチと一緒に始めた仕事は、うちには今までにない幸せを感じさせた。
与えられた部屋は、三階の三つ目の部屋、窓際に面してて窓からの眺めはそれなりに楽しめる、サチは仕事から帰ると、
早々と決ってた事のように窓から見える景色のスケッチを始めた、うちはそんなサチの書く絵をちょっとだけ覗き見たりしてた・・、
サチはさらさらと画きはじめて、紙の上で景色が形になっていく、そんなサチの絵につい見惚れてしまって居る内に、サチの描く絵が
見事に仕上がって行くのを思わず(凄い!)って叫びそうになってうちは慌てて口元を押さえてしまった。
(サチには言えないよね、見てた事知ったら怒られそうだし・・)
季節は、いつしか春の終わりを知らせるかのように虫たちが泣き出して、静かな夜を賑やかにしてた、日を増す毎に
窓から差し込んでくる日差しは眩しくて、いつの間にか町の景色も色ずいたように思う・・・。
この町で働きだしてから初めての休日、でもせっかくの休みなのに何もすることも無くて、サチとふたり暇を持て余してた、
そんな時、持て余した時間をうちは窓から町を眺めてたら、ふいにこの町に来てからまだ、何処も出てない事に気づいて、
「ねえ~サチ?町の探索に行ってみない?この町の事何も知らないでしょうどうかな?このまま何もしないでいるよりは、
いいと思うんだけど、ねえ?探検して見ない?」って言うとサチは
「そうね~、いいかも、行こうか~?」って言ってくれて二人、さっそくこの町の探索へと出る事にした。
ここに来てから初めての外は、青空が広がって、空気が気持ちよく思えた・・、
サチとふたり、探索に胸を膨らませて歩き出した、初めてこの町に来た日に、歩いたあの長い道を辿りながら歩いて行く内、気づくと
やたらと坂道が多いのと、目立って店らしい店も無くて、何より近いようで遠くにあるって知った山、次第に期待も何処か薄れてしまったら、
サチと二人思わず「はあ~!」って同じため息を漏らしてた。
でも唯一救いだったのは、粘って歩いてやっと見つけた二軒のお店とそれからその先に公園らしき広場を見つけた事、でもその公園は、
ポツンと長いベンチが置いてあるだけの目立たない公園、(ちょっと寂しいかな~・・)そう思いながら仕方なくサチとふたり、
そのベンチに並んで腰かけた。
うちは今まで居た町を思い浮かべて想いにふけっていたら、不意にサチがうちの頬っぺたを摘まんで、
「何考えているの?」って聞いてきた、
「別に何もないよ~?」って言って頬っぺたを擦ったら、サチは、
「カナ~?一緒に来てくれてありがと!本当言うとね?親に担架切って出てきたけど、わたし一人は正直心細かったの、だからね?
カナが一緒に来てくれて嬉しかった、だから~ありがとうカナ?」って言った、
改まって言うサチの顔を見たら、うちは苦しくなった、うちの方がサチに助けられたのに・・・、
「そんなことないよ!あたし本当は家出して正直行くとこなかったの、だからあたしの方がサチには感謝してるの、ありがと~サチ?
今まで黙っててごめんね?」って言うとサチは、黙ったまま何か考え込んでしまった、ちょっと気まずいなって思ってたら、サチは、
「カナ~わたし聞いてたの、カナが養女になったってこと、本当言うとね~?わたし家を出る事でカナに相談したくてカナの家に
行ったんだ~?その時、聞いてたの!ごめんね?わたしも黙ってて!」
って言って苦笑いになってた、
「これじゃ~一緒だね!あたしもサチに逢いたかったんだけど、でもできなくて、こんなあたしじゃちょっと気まずくなっちゃって~、
だから会いに行けなかった、ごめんね?」って言ったら、サチは慌てたように、
「わたしにとってカナはカナだよ!どんな事があってもわたしの友達だよ?だからそんなこと言わないで?寂しいでしょう~?」
そう言ってサチは目にいっぱい涙を溜めてた、
そんなふうに言ってくれるサチの気持が嬉しくてうちまで涙が溢れて、鳴き声になってしまったけど、「ありがとうサチ!」って
小さく呟いたら、サチはうちの顔を見て何も言わなかったけど笑顔を返してくれた。
その日の夜、サチとふたり、町の探索で疲れてたはずなのに、つい話しに夢中になってたら、疲れも忘れて話しこんでしまってた、
そして翌朝、起きれずに寝過して慌てて仕事に着いた。
仕事を終えて二人部屋に戻ってから、思い出したら可笑しくなって二人顔を見合せて大笑いしてた。
それから半年が過ぎて・・、
いつの間にか遠退いてしまった故郷、でもうちが思い出すのは、あの山が恋しくなることくらいかなって思う、
この町からは遠い山の景色だけで、見渡す限り小さな工場が見えるだけ、それでもサチといるこの町は今のうちには居心地が好かった、
そんないつもの夕暮、サチとふたり仕事を終えて部屋へ戻って来た時、扉にサチ宛てに手紙が射し込まれてて、それに気づいたサチは
手紙を抜き取ると部屋へ入るなり手紙を読みはじめてた、
誰からの手紙なのかは教えて貰えなくて、うちは何も聞けず窓の外を眺めた、でも何処か気になってサチに視線を向けたらサチは
少し険しい顔でうちをみてた、何か言いたげなのに、でも何も言わないサチに、
「サチ?どうかしたの?何かあった?」って聞くと、サチは開いたままの手紙を何も言わずにうちに手渡してきた、焦って
「あたしが読んでもいいの?」って聞くとサチは、何も言わずに頷いて見せた、何だかサチの顔を見てると読ませて貰うのがちょっと
気が引けてしまったけど、でもサチの深刻な顔に引かれるように手紙を読みはじめて、読み終えた時、うちはサチの顔色が変わったのが
うちの所為だって事に気づいた、
手紙はサチのお母さんからだった、慎兄ちゃんが、サチの家を尋ねて来たって、だから「サチの働く場所を教えたから尋ねて来ると思う・・」
ってあった、(お兄ちゃんがここへ来る・・)うちを探して此処まで来るのかもしれないって思ったら不安で手が震えだしてた、やっとあの家から
逃げて此処まで来たのに、やっとなれた生活が壊れてしまうかもって思った、その時サチが、
「カナ~?もしかしてカナの事で?ねえカナ、ここ出てくの?でもお母さんにはカナと居る事は話して無いから大丈夫だって思うんだけど、
あ~んわたし何が言いたいのか、わかんなくなっちゃった、ごめんね!」って自分の頬に両手をあててうつむいてしまった、
「ありがとう~サチ?でもあたしのことなら大丈夫だよ、迷惑かけちゃってごめん?」って言ったら、急にサチが不機嫌になって、
「カナ迷惑だなんて思ってないんだから~そんな事言わないでよ~!」ってサチは叫んでた。
そんなサチの優しさが嬉しくて、
「ありがと、少し様子みてからどうするか考えてみるよ、いい?」って言ったらサチは、
「カナがそれでいいならわたしは、だけど一人で居なくなったりしないでね?」って言われて、
「わかった、ありがとう!」って言うとサチは頷いて笑ってくれた。
そして翌朝、サチと二人いつものように職場へ行くと、駆けこんできたおばちゃんが声をかけてきた、
気さくな人で何かと気に掛けてくれて時々差し入れを持って来てくれる同じ階の人、そんなおばちゃんがサチの顔を見るなり
「あのサチさん~?表玄関に友達が来てるわよ~いい人かしら?」ってにこにこしながらサチの顔を覗き込んでた、
でも意味も分からずサチは「えっだれ~?」って聞くと、おばちゃんは何だかがっかりしたような顔して
「さあ~会えばわかるって言ってたからね~?それじゃ~ね、伝えたわよ?」そう言って手を振って仕事場へと歩きだした、サチは
「ああ~どうもありがとう」ってそう言ってから、なにか考え込んで、うちを見ると
「カナごめん!ちょっと行ってくるね?」そう言ってうちが何も言わない内にさっさと行ってしまった、
それから数時間経ってサチは嬉しそうに戻って来た、そんなサチが気になって、
「ねえサチ~?誰だったの?」って聞いたらサチは、にこにこしながらうちの顔を見て
「あ~それがね~誰だと思う?アンちゃんなのよ?ちょっと驚いちゃったけどね、アンちゃん、カナの事が気になってたみたいで、
カナの事聞きに来てたの、だからカナはわたしと一緒に居るよって教えたら、分かったって言ってそれだけ言って、さっさと帰っちゃった、
それでカナに宜しくだって?・・」って言いながら苦笑いしてた、
うちもアンちゃんだったのはちょっと驚きだった、それ以上に逢えなかったのは凄く寂しい気がしてた、そんな時サチが、
「引きとめたんだけどね~?いいんだ元気でいたならって、それにサチも一緒だから安心だしね、じゃ~?とか言ってあっさり帰っちゃったのよ、
「もしかするとアンちゃん、カナが家出したの知って心配してくれてたのかもしれないわね?でもよく此処が分かったよね、驚いちゃった~
あっそうだ!カナに手紙渡してくれって頼まれたんだ、はいこれ!」って手紙を差し出された、
思いもしなかったアンちゃんからの手紙に驚きのあまり、つい焦って
「ああ~ありがとう」って慌てて受け取ってしまった、変にサチが誤解してほしくなくて、ぎこちない気もしたけど笑って見せてから
うちは手紙を開いて読んだ、
手紙には、サチの言うようにうちの事が気になってたあった、詳しくは分からないようだけど、うちの噂が気になって探してたってあった。
うちの噂って何・・(お兄ちゃんがうちを探しているのはその所為?)不安が募りだしたら、ついうつむいてしまった、
するとサチがうちの顔を覗きこんできて、
「カナ~どうしたの?変だよ?アンちゃんの手紙、何か気になる事書いてあったの?ねえカナ~?」
そう言って少し寂しげな顔でうちの顔を覗きこんだ、
「アンちゃんにも心配させちゃったなって思ったらつい、ごめんね?」うちは手紙の内容までは言えなくて、誤魔化してしまった、
だってサチにはこれ以上は・・、するとサチは
「そう~ね~?ああ見えてアンちゃん心配性なとこあるから、でも嬉しいよね?こうして来てくれるのって、やっぱり友達っていいなって
思えるもん、ね?だからさ~そんなに気にしなくていいんだよカナ~?」って笑って見せた、
そんなサチにはやっぱり何も言えないって思った、だから「うん、ありがとサチ」って笑顔を作ってた。
何故かサチの言った(友達)って言葉がうちの中に響いたら、やっぱりアンちゃんに会いたいなって思う・・。
~時の足跡~ 1章~5章