僕らが見た空
貴女に出会うまで、僕は前向きに日々を過ごすことは無駄だと思ってた。
貴女と出会った日、貴女は澄んだ青空を見ながら言った、
「この青空をずっと見るためには、すべてを受け入れて、
前向きに過ごすしかないんだよ?」 と。
日常
清々しいくらいに晴れている。
「んんっ」
ベットの上で背伸びをしたら、
僕の日常が始まる。
部屋着から制服に替え、朝食の匂いにつられて階段を下りていく。
「おはよう、リョウ。ご飯出来てるよ。」
「おはよう、母さん。」
リビングに入るとまず台所の母さんが目に入る。
僕はそのまま食卓テーブルの椅子を引き座る。
「いただきます。」
そして、ご飯を食べる。
ただいまの時刻は7時15分
45分までに食べ終え、50分に家を出る。
「はい、お弁当。中に薬、入ってるから忘れないようにね。」
「分かってる、ありがとう。」
「あ、帰りにお醤油買ってきてもらえない?」
「いつもの?」
「そう、切らしちゃって。」
「分かった、御馳走さまでした。」
食べ終えたらまた、部屋に戻りカバンに荷物を入れ
このチェックが終わって、歯磨きその他もろもろの身支度をして
リビングのドアを開けて、
「いってきまーす。」
と叫びながら靴を履く。
ドアを開けておいたのは、今下りてくるであろう妹のためだ。
「お母さん!何で起こしてくれなかったの?!」
「母さんは起こしてたよ。じゃ、お先。」
「ごめん!朝ごはんいらない、お弁当頂戴!!」
「もう、気を付けて行きなさいよ。」
こんなやり取りも日常。
こんな日常を送れるのはいつまで何だろう?
発作
「おっス!悠樹先輩、元気っすか?」
「おっス!って。おはようとかもっとなんかないのかよ(笑 」
「一番これがしっくりするっス。」
「まぁ、元気でいいか。」
僕は部活をやっている、正確に言うとマネージャーだが。
それでこの応援団みたいなのが後輩の一人。
「悠樹せんぱ~い!!助けてくださ~い!!!」
この声は… と嫌な予感を抱きながらも振り返った_
「おいっ、ちょっと待てよ!ぬっ、すばしっこい奴め!」
_ のが間違いだったようだ。
逃げよう。よし、逃げよう。
かと言って俺は走れない体になったため、前にいる後輩たちの間をすり抜け
足早に逃げる事しかできない。
やっぱり所詮は歩き。
走っている奴に勝てるわけがない。
「せんぱい!ハァ ハァ ハァ ちょっと酷くないですかぁ?」
「気のせいだよ、酷くなんかない。気のせい、気のせい。」
こうしてるうちにも冷や汗が出てくる。
ん?冷や汗??
「先輩?!大丈夫ですか?!顔真っ青ですよ!!」
「え? あっ_ 」
まずい、薬飲まないと。
あれ?
「な…い?」
お母さん入れたって、俺も確認したよな?
やばい、倒れる_
「おいっ悠樹!」
「龍…翔?」
「薬口のなか入れるぞ。」
うゎ、苦い。 と思った瞬間今度は水を流し込まれた。
貧血で朦朧とした目は宙を彷徨い空の一点で止まった。
「龍翔、ありがとう。もう大丈夫。」
起き上がりながら体を支えていてくれた親友 日向龍翔(ヒュウガリュウト)に礼を言った。
まだ心配そうに俺を見ている龍翔に「大丈夫だって!」って言って
「いっで?!」
背中を叩いてやった。
「先輩…ごめんなさい!俺の所為でまた発作起こして、本当にごめんなさい!」
「大丈夫大丈夫、気にするんなって。俺はそこまで弱くないってーの(笑 」
「でも…」
「早く教室行かないと遅刻にされんぞ。」
俺の周りに群がっていた後輩などを遅刻を口実に立ち去らせる。
「はぁぁぁああ。」
「ったく、溜息吐きたいのは俺の方なんだけど。悠。」
「ごめんごめん。」
「遅刻になる前に行こうぜ。」
「あ、うん。ってか何で龍が薬持ってんの?」
「おまえ、鞄開けっ放しで来てただろ。校門に落ちてて担任から届けろって貰ったんだよ。」
あ、そういえば薬探すときにはもう開いてた気がする。
「さんきゅー、俺の命拾ってくれて(笑 」
「お前マジで気をつけろよ?今は俺がいたから良かったものの、
俺が居なかったら逝って帰ってこれなくなるぞ。」
「大丈夫だって。俺強いから(どやぁ 」
しーーーーん…
「ぶっ、滑ってやんの(笑 」
「うるせーよ!」
「赤面とか、マジうける(笑 」
「い、行くぞ!」
「おう(笑 」
なんとかって言うかめっちゃ滑り込みセーフで一限目には間に合った。
友人
「ねぇ、」
「ん?」
授業が始まってから30分が経とうとしてた時
隣から話しかけられた。
「どうした?加奈。」
「朝、倒れたってホント?」
「え?あー。そうだけど?ってか今まで忘れてたよ。」
「最近さ、」
「?」
「ねぇ、気が付いてる?発作、先月より圧倒的に増えてるよ?
前は2週に一回とか走ったらとかだったけど、今日とか走ってないでしょ?
なのに発作ってもう一回びょう_ 」
「大丈夫だよ、このままで。重い病気じゃないって言ってたし、
大丈夫だよ。俺は死なないよ。」
加奈には笑って見せたけど、ホントは怖い。
まだ龍を除き他の人には本当の病名は告げてない。
もし知られたら、俺の学校生活が音を立てて崩れていくような気がしたから。
って言うかきっと、入院が必要になるまで、いや死ぬまで言えない。
朝とは違うどんよりとした雲が空を支配したまま、午前の授業は終わった。
「りゅ~う、飯食おうぜ~。」
「おう!あ、俺パン買ってくるわ。いつもの場所で待ってろよ。」
「りょーかい。」
いつもの場所とは、この学校で一番空に近いところだ。
軽快に階段を一段一段上っていく。
もう、この階段を上がれなくなるのも時間の問題だろう。
「ふぅ…疲れた。」 ガチャッ
ドアを開けると心地よい風が体を通り抜けた。
「涼しい。」
ドアを閉めいつもの特等席に向かう。
「は?」
俺が見たのはフェンスの先に裸足で立つクラスメイトの英瑠雨(ハナブサルウ)だった。
「え?ちょっお前、何してんの?!」
「え?あー、安心して。飛び降りようなんてしないから。ぷっ、なにその顔(笑 」
「え?あー、そうですか。」
なんだよ心配して損した気分。
ってか、なんで裸足なんだよ?
まぁ良い事なんだろうけど。
年々自殺者が増えるこの国にとっては良い事だと言える。
「じゃあ何でそんなとこにいるんだよ?」
「暑苦しいのよ、学校も、教室も。」
「まぁ、夏だからな。…って、は?」
「え?戻ったらいけない?」
「あぁ、だから裸足なのね。」
裸足の理由、それは転落防止の為についているフェンスをよじ登るためだった。
納得。
「悠お待たせ_ 邪魔だったか?」
タイミング良く龍翔が扉を開け放った。
何を想像したのかニヤニヤしている。
「キモイぞ、龍。ニヤニヤすんな。あー、腹減った腹減った。早く飯食うぞ。」
「キモイって何だよ。ま、俺よりお前の方がキモイ自信あるけどな。」
「なんだよそれ、そんな自信あってもどうしようもねぇだろ(笑 」
「良かったら、一緒に昼飯食うか?」
龍翔が瑠雨に話を振る。
「え?あー、ごめん。先客が…」
「じゃあ、しゃあないか。」
キーン コーン カーン コーン
「「「え?!」」」
「昼終わり?!」
「龍、お前購買行くのに何分かかってんだよ~!」
「仕方ねぇだろ?!混んでたんだからよ!」
「次の授業何だっけ?」
「「「……」」」
「黙ってる場合じゃないでしょ?!覚えてないの?!」
「覚えてる訳ないだろ?!優等生じゃないんだし。」
「お前、人の事言えねぇだろ?!」
とはいえ、このまま此処に留まっていても時間の無駄だ。
「龍、先行ってて。俺らゆっくり歩いて行くから。
あ、移動教室だったら荷物頼む!」
「はぁ?!なんだよそれ、まぁ良いけど。分かるとこ歩いてろよ。」
「りょーかい。」
そして龍翔は走ってこの屋上を出てった。
「さてと、行きますか?俺らも。」
「そうだね。」
彼女が走り出したとき、彼女が屋上を出てった時、不意に涙が頬を伝った。
こんな生活も、別れを告げないと行けないのか?
バスケ部
無事に午後の授業も終わり、残るは部活のみとなった。
帰宅部が帰り、部活動の生徒はそれぞれの活動場所に散ってった廊下は静かだった。
外からは野球部と思われる声が聞こえてくる。
俺はいつまで此処に居る事が出来るんだ?
卒業はしたいな。ベッドの上でも、何処でもいい。
でも、生きて卒業したい。
「先輩?」
呼ばれて振り返った先に居たのはバスケ部のマネージャーだった。
「どうした?」
「あの、バスケットゴールが下がらなくって。」
「あぁ、またか(笑 すぐ行くから。」
「すみません。」
うちの学校は決して新しいわけではない。
このようなことは日常茶飯事とでも言おうか。
「いそがないと_ 」 ガシャンッ
再び歩き出そうとしたとき外から何かが割れる音と
「いったぁ」
声が聞こえてきた。
窓を開けて外を確認すると、手から血を滴らせてる同級生と思しき人が立っていた。
「大丈夫?!」
「え?!大丈夫です。」
僕らが見た空