メラン子。

メラン子。

24歳頃に書いた小説。
だいぶこじらせてる。
きっとみんな通る道なんじゃないかと思います。

 最近、どう死ぬかということしか考えられない。

 死ぬということは難しい。
 物理的には簡単だ。飛び降りでも、毒でも別に手段なんかはどうでもいい。
 問題はココロの方。
 自殺はダメだ。自分で線を引くというのはそれはそれで構わないのだが、その自殺は、自分が認める他者や事象によって与えられるものと同価値である必要がある。心の底から信じてた人に裏切られたり、車に轢かれそうな子供を助けたり。そんな死に方ができたら最高だと思う。

 慢性的に吐き気がする。ずっと下痢気味。
 朝、吐き気と一緒に目が覚めて、まったく動く気がしなくてそのまま横になる。
 部屋がやや薄暗い。昨日の夜からiTunesが動きっぱなしだ。PCの電源なんて2週間くらい落としてない。
 ふとんを抱きしめる。やわらかいカバーの感触が気持ちいい。テンピュールの枕が少し固くて、頭を横に落とす。下のふとんに耳をつける。くぅぃーーー、って音が聞こえる。
 部屋が青い。
 時間は11時過ぎ。
 目を閉じた。
 意識を、意識的に消した。
 何も考えたくない。動きたくない。ただ今ある感触の中でじっと丸くなってたい。
 きゅっと身を縮こめる。自分の肩を抱いてみる。なで肩。女みたいだ。
 ぎゅっ、ぎゅっと、太ももを腹の方に押し付ける。間に、少しだけ固くなったペニスが挟み込まれる。あったかい。人間の感触。
 んぁ、と声を出してみる。
 自分の身体に攻められる。鋭くも強くもない、甘くてぬくもった安心できる快楽。
 外で、ざあっと音がしている。雨が降ってるんだか、風の音なのか車の音なのかよくわからない。ただざあっと音がしている。
 暑い。寝汗をかいている。枕が少し汗臭い。
 のそのそと起きる。冷房をつける。21度まで下げる。
 冷たい暴力的な風が部屋を占めていく。
 冷やされてる感触。汗がひいていき、約束された気持ちよさが手に入った。
 寒い。
 ふとんにくるまる。できるだけ、ふとんを身体に密着させる。ぎゅっと、自分の身体を縛るように巻きつける。
 お腹が冷える。トイレに行きたいが、面倒くさい。
 意識を飛ばそうとする。
 時間は11時過ぎ。出社の時間は12時。家を11時半に出て丁度いい。
 意識を飛ばそうとする。
 何も考えたくない。吐き気がさっきより強くなる。動きたくない。ただ時間だけが過ぎ去って欲しい。
 ぎゅっぎゅっとペニスに刺激を送る。慢性的な気持ち悪さと気持ちよさ。
 変な音楽が流れてくる。ピアノの音。夏っぽい。誰も居なくて、カーテンがなびいてる教室があって、乾燥した夏っぽい。
 たしかこないだやったゲームの音楽だ。変なゲームだった。多次元世界に主人公たちが入り込み、なぜか主人公が観測することで元の世界に戻っていくという、やけに哲学だとか量子力学くさいゲーム。
 淡々とした雰囲気が気に入って、何となくサントラをネットで買った。
 どうでもよくなってくる。意識を耳だけにする。
 時間が流れるのだけをじっと待つ。
 丸くなる。音が鳴る。部屋が青い。
 ただ動かないで、時間が流れるのだけを待った。
 2時を過ぎた。
 2、3時間程度の遅刻ならいつものこと。
 のっそりと起き上がって、ふすまを開け、冷蔵庫を開く。
 冷蔵庫の中身は、ビールと醤油だけ。ビールは、6缶セットの残りが4本。
 マンゴーカラーのかわいい冷蔵庫。2ドアで下が冷凍庫。冷凍庫には、氷とコーヒーの粉だけ。
 家で物は食べない。
 腹が減った。
 昨日の夜、職場の先輩と1時間だけ飲んだ。下北沢駅前の沖縄料理の店。そこで軽くつまみを食べてから、何も腹に入れてない。入れたのはビールと焼酎だけだ。
 ビールを取り出し、あおる。
 吐き気がするので、ちょっと流し込んですぐに口を離す。
 少し楽になった。
 身体が冷えている。
 ビールを持って、部屋に戻る。
 PCの前に座る。本体の電源はつけっぱなしで、モニターの電源だけ切ってある。
 電源をつける。
 タスクバーは上にする主義。右上に時間が書いてある。2時16分。
 デスクトップに、天気とPCの情報が常に表示されるようにしてある。
 10月4日。
  0:00~晴れ、0ミリ、21℃。
  6:00~晴れ、0ミリ、20℃。
  12:00~曇り、1ミリ、23℃。
  18:00~曇り、0ミリ、22℃。
 Administator
 OS: WindousXP
 2006 October 04. Wednesday
  Windows Uptime: 13d 21:17
 IP Address: 192.168.1.××.
  Gateway: 192.168.1.▲▲.
  DNS: 192.168.1.▲▲.
 Memory Total: 2.0GB
  Used: 633.3MB 30%
 CPU Usage: 15%
 Net Usage:
  DL: 353.1kB
  UL: 115.7kB
 Drive C: Total 148.0GB
  Used: 126.6GB 85%
 Drive G: Total 232.9GB
  Used: 168.3GB 72%
 デスクトップにアイコンは置かない。散らかってるのは好きになれない。
 右下で、iTunesが動いている。
 吐き気がして、ビールがまずい。胃がぎゅいっと鳴る。足が冷たい。

 死を選ぶに値する理由が欲しい。
 今は、特に死ぬ理由すらない。
 死なないから、生きてる。死ぬと終わる、でもまだ終わらせるのももったいないから生きてる。だから何もかもどうでもいい。先のことは特に考えない。そのとき一番楽しめることのみを選ぶ。
 常に死を隣に。だから一瞬一瞬を楽しもうとする。どんな行為だろうと、死んで終わるよりはいいかと思う。充分価値のある理由さえあればいつでも死ねる。死ぬ理由を見つけるために生きている。
 長期的な目標が立てられない。安定を求められない。夢や目的などそもそもない。脊髄反射のみで生きる。
 目の前に盤面が広がっている。現在と言う盤面。あらゆる事象がコマとして盤面に広がっている。周囲の人間、所有物・収入、手持ちのスキル、社会の状況、 感情、天気、現実と妄想。自分がその中心に立っている。戦況を俯瞰で見る。今自分はどう動くのが一番面白いのか。盤面を見て判断する。すべては現在のみ。 現在の自分の気持ちのみ。
 常にゲームを展開している。ゲームをしないよりした方がおもしろいから。まだ生きている。
 終わらせたい。
 早く理由を見つけ、ゲームを終了させたい。

 3時、4時。
 時間が流れている。意識があるようだが、時間の流れを感じてるこの感覚が夢かもしれない。
 動きたくない。ふわふわした感触があるから、今はそれでいい。
 依然、部屋は青い。
 PCのモニターが光を発している。単館でもうすぐ封切りの映画の壁紙。フランスかどこかの映画だ。森の奥にある学園の、少女たちの話。森の奥に向かっていく2人の少女。その閉塞的な画が気に入って壁紙にしている。
 モニターをつけたはいいが、何をするでもなく。ついてると何かができる気になる。それだけだ。
 携帯電話が鳴っている。おそらく会社からだろう。
 朝、アラームが鳴るとき自動的にマナーモードがオフになるように設定してある。そのままマナー設定し忘れ。そのせいで、電話が騒がしく鳴る。人工的な、ジリリリリという黒電話の音。軽く短調の音で、神経に障る。ますます不快な気分になる。
 ジリリリリ、ジリリリリ。
 鳴り止まない。
 済まないとは思っている。電話に出られるくらいならはじめからちゃんと会社に行っている。
 僕の仕事は僕以外にはできない。わかった上で休むから、自分でも卑怯だと思う。
 好きだからというだけでやってきた仕事。当然、誰にも真似できない仕事にもなる。
 僕は作ることしかできない。僕が作りたいものを作らせてくれ、それを利益に転じることのできるトコロを探していた。今居るところとは、非常にいい関係を築けていると思う。利益の一致。とても居心地がいい。
 ジリリリリ、ジリリリリ。
 怒っているだろうか。ついこないだも、少し心が崩れて数日行ったり行かなかったりを繰り返したところだ。もう大丈夫、落ち着きましたと言って3日目にしてまた来ない。それは怒るだろう。会社にとって、僕は有益な存在だと思う。さて、どう出てくれるだろうか。
 ジリリ。
 止まった。留守番電話に切り替わったようだ。メッセージを吹き込む様子もなく、そのまま切れる。
 明日までに安定すれば、ちゃんと行こう。僕だって社会を求める。ちゃんとできるならそれがいい。
 目を閉じる。丸くなる。ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさいと3回唱えて、許してもらったことにする。
 PCデスクの上にあるビールをとる。ややぬるくなっているが、まだ缶に半分ほど残っている。
 一口、飲む。おいしくもなんともない。ごぽりと腹にたまり、感覚を緩くするだけだ。
 腹が減って痛くなってくる。外に出る気はしない。
 何となくブラウザを開いた。Yahoo!が開かれる。新着メール、2通。おそらくスパムメールだろう。面倒くさいのでログインはしない。
 今働いている会社が運営しているページを開いてみる。今日の更新はまだのようだ。ニュースや掲示板を見たりする気にもならないので、ブラウザを閉じる。
 スタートをクリックする。いくつか、インストールしているゲームが目に付く。そのうちの一つを開いた。アドベンチャーゲーム。18禁のいわゆるエロゲー だが、エロシーンはほとんどない。たぶんこの制作者たちはエロゲーを作りたいわけではないのだろう。本当は映画やアニメでも作りたいんじゃないだろうか。
 別にはまっているわけでも何でもないが、惰性で何となくやっている。キャラクターの掛け合いがおもしろく、やってる時は物事を深く考えなくてもいい。自然に時間が流れてくれる。一度攻略し、別のキャラクターの攻略になるので途中の文章はほとんどスキップする。シナリオが分岐し、ライトなエロシーンがあり、エンディング。
 3時間ほど流れた。
 いつから、時間に意義を求めなくなったのか。ただ、退屈にならないように流れていってくれればそれでいい。
 退屈だけが、怖い。何もすることが無くなるというのが怖い。死ぬか何もしないかという2つだけの選択肢。そんな状態で死ぬというのは、少しみっともない。
 あまりにもお腹が空いてきた。冷蔵庫のビールはあと1本しかない。
 この状態で焼酎を入れて吐き気にまどろんで気を失うというのも悪くは無い。けど、1軒だけすごく好きなラーメン屋がある。自転車で5分ほど。家を出るのは面倒くさい。動きたくない。でも、そこのラーメンはその状態を圧してでも食べに行く価値がある。
 髪が変な形にふくれている。身体が汗臭い。着ていたTシャツとジャージを脱ぎ、白いバスタオルを取ってシャワーに入る。
 熱いシャワーを浴びる。どこか温泉にでも行きたくなる。
 濡れた髪のまま服を着て、そのまま外に出る。もう暗い。2階建ての変な形のアパート。無駄な作りが気に入って借りた。
 自転車に乗って走り出す。普段は会社に向かう道。車通りの少ない広い道。常に工事をやっている気がする。
 100メートルほど走って左折する。淡島通りに出る。途端に車の量が増える。最近気がついたが、渋谷にでるには井の頭線より路線バスに乗った方が早かった。井の頭線は乗りたくない。そもそも電車が嫌だ。5回に1回はパニックになる。息苦しいし、温度も空気も不快だ。
 アップダウンの激しい淡島通りを5分ほど走る。右手にある、派手な電飾のラーメン屋。豚骨醤油の、日本でも最高レベルのラーメン屋だ。
 カウンター内にはいつもいる格闘家の角田似の男と、金髪の元ヤン風が2人。もう顔は覚えられているようだ。
 「あの、お好みなんでしたっけ」
 「あ、普通で。油軽く多めに」
 うん、こういうどうでもいいのがいい。中身なんて何もない会話。淡々と事実を。意味しかない発言。
 昔は、テンションがあがらないときは油ものを食べるといいなんて変なジンクスを持っていた。
 ラーメンや餃子といった油ものには、快楽物質を発生させる効用があるらしい。しばらく前に、どこかの新聞かネットで見た。京大の教授がどうだとか書いて あったので、あぁなるほど納得と思った。その快楽は、依存性があるそうだ。たしかにこんな状態でも、惰性のようにラーメンならば食べに来れる。
 食べてる最中に気持ち悪くなった。正確に言うと、食べる前からすでに吐き気がしている。胃の中は空っぽのままひたすら炭酸とアルコールを入れているのでどこまで荒れているのか。

 プロザック。ルボックス、デプロメール、パキシル、セレキサ。SSRI系精神薬。副作用が少なく、大量に服用してもわりと安定している。
 特にプロザック。魔法の薬。
 日本ではまだ認可が下りていない。購入するには、ネットなどで個人輸入を探すしかない。購入、個人での服用までは合法。国内での売却・譲渡は違法。わけがわからない。
 個人売買で物を購入する場合のコツは、とにかく比較だ。買えるからといってすぐに飛びつかない。同じものがほかではどう値段をつけられているか。3、4倍の違いはザラ。よほど希少なものでない限り、即買はしない。
 二十歳くらいから、しばらく服用したりやめたりを繰り返している。副作用の少ない精神薬は、効果があらわれるまでに大体2週間程度はかかる。
 僕がはじめて飲んだときは、効果が全然わからなかった。
 ただ、落ちるのがつらくて。ただハッピーでいたくて。
 効果を実感したのは、服用をやめたときだった。しばらく感じなかった無気力感。急激におそってきた最低期。不安。焦燥。
 飲むと薄っぺら。飲まないと空っぽ。
 どうすれば良かったんだ。

 体がもう覚えているのか。
 緑と白のカプセル。薄いピンクに紺で印字された箱。それを見ると、少し安心する。
 薬は、酒で飲むと効かないらしい。それは精神薬もそうなのだろうか。
 ビールで一錠流し込む。薬は気持ちの問題だ。きっと。
 最近、プロザックには自殺を助長する可能性があるという調査結果が出たらしい。それは違うと思う。きっと、もともと自殺する可能性の高い人がプロザックに手を伸ばすんだ。自殺因子を持ってる人たちなんだ、きっと。
 自殺は、良くない。取り返しがつかない。後戻りがきかない。ダメだよ、自分には逃げ道を残さないと。死からは逃げるんだ。徹底的に逃げ回るんだ。死は楽じゃないよ。楽じゃない。楽じゃない。
 まず親に申し訳が立たない。友達からは忘れ去られる。社会から消える。死は、流れていく時間軸上今後すべての盤面において自分の価値をゼロに落とし込む。あまり美しくはないし、意味がない。
 躁に転じるのを待つんだ。躁はいい。楽だ。何をしても楽しい。おもしろい。どんなことにも、楽しいという意味づけができる。やった! 何で仕事してる の? 楽しいから! なんでゲームしてるの? 楽しいから! 何でセックスしてるの? したいから! 楽しいから! 気持ちいいから! それでいいじゃ ん、と。生きる意味ってそれでいいんじゃないか。快楽だよ、快楽。悦楽。目の前の気持ちよさ楽しさの徹底追求。そんだけ。躁状態は、全肯定。もしかした ら、最高の躁状態ですっぱーんと死んだら、それは極上の快楽なのかもしれない!
 くるり、くるりと意識が回る。
 心臓がどっくんどっくん鳴る。
 目が爛々と光ってる。いや自分で自分の目は見れないけど。光ってると思う。

 10月7日。
 実家に帰ってきた。
 一人はよくない。何も食べない。アルコールを切れない。吐き気。下痢。激しい動悸。眠れない。吐き気。
 家でやることないのはいやだから、PCを持って帰った。でもこのPCはまだ動かない。こないだ、職場の人から買い取った自作PC。HDDとグラボ以外、セットで格安で譲ってもらった。今はHDDがないので買ってこなくちゃいけない。
 実家。ご飯が出てくる。ランドリーに行かなくていい。朝起こしてもらえる。なんだこの安心感は。
 これで僕も、立派なニートだ。やった! それでも、下北の一人暮らしのアパートはキープしてるので、家賃はかかる。実家にいるのに家賃がかかるという不思議。なんとか1ヶ月以内に戻らなくちゃいけない。銀行のお金が消える。

 心臓がばくばく鳴っている。神経が昂る。眠れない。眠れない。体は眠い。ぎらぎらと、体内で欲望だけが蠢く。
 は、ぁぅ──。
 ぎらり、ぎらりと。
 沸々と心臓が。
 神経が、空気中に剥き出しに。外で音がするたびに、びくんびくんと反応する。
 どく、どく──。
 ざわざわする心臓。身体が小刻みに震える。
 かたかた。カタカタ─。
 喉はからっからに乾いている。
 眠ってしまいたい。

 翌日、久々に車を運転した。
 国道沿いの電気屋に、内蔵HDDを買いに行く。運転はなんとなく身体が覚えてはいたが、元々あまりうまくはない。一度思いっきり事故って車を半壊させて以来、親は心配で僕には使わせたくないらしい。まぁ、15分くらいでつく近場ならば問題はないだろう。
 運転は何ヶ月ぶりだろうか。ちょっと不安なので車間をとるようにして走らせる。人や自転車が車道を通っていると、きゅっと緊張する。
 テレビがどんどん安くなっている。薄型液晶32インチでもう10万をきっている。
 僕は全然テレビを見ない。一人暮らしの部屋の方には、はじめから線すらつないでいない。あの時間の浪費感がどうしても嫌なのだ。時間の意味を自分で選ん でいる気がしない。あらかじめ与えられた選択肢の中からひとつ選び、決められた時間を与えられた娯楽や情報で消費する。ニュースやドキュメンタリー系の番 組は嫌いではないが、それならばネットや本を読む方がいい。ココからココまでの時間内で一定の情報を供給しますよ、とあらかじめ決まっている感じが嫌なの だ。何だろう。刺激というエサを与えられている気分。
 もっと競争が激しくなってくれば変わるだろうか。番組の数が爆発的に増えて、誰でも簡単に発信できるようにする。本や映画、ゲームを選ぶような感覚で、自分が観る番組を決める。うん。そうなってくれればテレビもすごくおもしろくなりそうだ。
 HDDを買ってきて、コードをつなぐ。マザーボードは譲ってもらった状態で載せたまま。CPU、メモリはすでに載っている。ビデオボードはたしか高いや つだから外すって言ってたような気がするけど…なぜかついたままだ。いいや。多分忘れてるだけだろう。とりあえずこのまま。HDDはつないだ。モニタは 持って帰ってきたものにつないだ。24インチ、コントラスト比1000:1エイサー。OK、起動。
 ピッ、ピッ。
 ─ふおぉぉぉぉぉぉぉー。
 よし、問題ない。DELキーを押してBIOS画面起動。BOOTのプライオリティをDVDドライブからにし、WindousのCDを入れて再起動。ちょっとケチってhome editionにしてしまった。別に問題ない。
 あとはほぼ待機。途中ちょっと入力項目があるだけで、しばらく待てば終わる。
 最近やけに金回りがいいようで、やたらに気前のいい父親と話す。僕はこんな状態で帰ってきたから少し肩身が狭いわけだが。そのあたりは深刻にならない程度にはぐらかしながら当たり障りのない会話。

 波状で押し寄せてくる無気力感。
 あくまでも唐突。突然、どぱあぁん、と。
 …。
 …………………………。………。
 脳が緩慢に。
 明日もあるのか。はぁ。何をすれば楽しい。世界の精彩が、どんどん薄れて。はぁ、ぁ─。時間、流れて欲しい。早く。退屈で。退屈で退屈で退屈で退屈で退 屈で退屈で。刺激って何。何をすれば僕は楽しい。退屈だ。退屈だ退屈だ退屈だ退屈だ退屈だ退屈だ。何も別にいらない。いらないから、ちょっとのものを楽し めるようにさせて。頼む。お願い。お願いお願いお願い。助けて躁の神様。惰性しかない。ただ単に、惰性でする。やめるのも面倒くさい。別に新しいことをし たからおもしろいわけではないし。もう何も感じなくなりたい。アルコールが欲しい。退屈すら感じないようにして。わけわからなくなってくれ、頼む。頼む。 本気で。何かをしようと、考える。外に出よう、ビデオでも見よう、ゲームでもしよう、誰かに電話しよう。…何をしても楽しくなさそうで。いい。このまま惰 性で。寝るのすら面倒くさい。寝ることすらできず、サイクルは無茶苦茶だ。一日が30時間くらいの使い方。いつまで続くんだこれ。僕がつらい原因は何だ。 「うつは必ず治ります!」「『がんばれ』はタブーですよ」「いいんですよ、サボっても」「がんばらない努力をしましょう」。うわぁぁーい。ありがとうあり がとう先生たち。そう言ってくれるとがんばろうってキモチになるなぁ。治るんだね、この状態って。治るんだね。本当だね。ちっちゃいころから、定期的に台 風が来てたボクでも治るんだね! うわぁぁーい、早く治せよ、治してよ先生アホぉーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!
 こんにちは。24歳ニートです。あ、そうです、ニートです。NEETです。N・E・E・Tニートです。働いたら負けかなと思ってます。趣味は、コピペ系 ブログにコメントをつけることです。あと一桁ゲットです。好きな新ジャンルは渡辺さんです。あの人たちは、ネタはおもしろいけど実際会ったら絶対避けま す。僕ですか? そうですねー、ジャニ系って感じですか? あ、堂本光一っぽいよねって言われるときありますね。こないだ、横顔が柳楽優弥くんっぽいねな んて言われちゃいました。アハハ。髪がちょっとのびちゃって、フけて見えるんじゃないかって心配なんですよー。黒い部分がどんどんでてきちゃってますし ね。まぁもともと軽いクセっ毛で、パーマっぽくなるからいいんですけどね。あははっ。まだ19とかでもいけちゃうんじゃないですかねー? 5歳サバよんだ りしてみて。してみて。学生服なんて着ちゃったりしてね。あ、ブレザーの方が似合うかなボク? コスプレですか? ありますよー、興味。ありまくりんぐ。 実はコレ内緒なんですけどね。先月、ちゃんと働いてて先々月の繰越なんかもあって、結構収入あったんですよ。で、ついつい。ついついネット通販で買っ ちゃって。え、何を? やだなー! 聞くんですか? 聞くんですか、も~。マジで? マジでわかんないっすか? 決まってるじゃないですか、定番ですよ、 て・い・ば・ん。え、みなまで言わすんですか。だから、アレですよ。品女の制服。ほら、あるでしょ。黄土色のブレザーに、赤い格子のスカートのあれ。あの 制服。着てみたくってさー。買っちゃった。ついつい。気づいたらカートに入れて、フォーム入力終わってた。ついでに人生オワタ。やっほー! もうね、ドキ ドキですよ、届くまで。なんか気づいたらコスプレ衣装通販サイトの会員になってて。ポイントたまっちゃった。やべ、これまたなんか買うしかないじゃん。ポ イントもったいないじゃん。チャイナ欲しいなぁ、チャイナ。スリット。スリットだよスリット。で、3日ほどで届いたわけさ。ピンポーン、ペリカン便でー す。はいはいはい。きましたよと。サインする手ももどかしく、って感じでね。ダンボールに、直接マジックでウチの住所と名前書いてあるんですけど。そんく らいコンピュータ処理しようよ…、まぁどうでもいいけど。無茶苦茶どうでもいいけど。テープの端が剥がしずらいやつでね。ほら、あるでしょ、透明のぴっち りくっついてて剥がしずらいやつ。あれ。でまぁ、ハサミで、開いてびーーって。テープの真ん中ね。びーーってやって。開いて。もう桃源郷だね。なんじゃこ りゃと。笑うわ。笑うわ。ふたを開けたら桃色吐息ですよ。ピカアァァーー!ですよ。翁が竹をかっさばいた感じ? コス・プレ・です!!と絶叫のたもう制服 様が鎮座ましましてるわけですよ。爆笑ね。一人で大爆笑。もうなんかココロ踊りに踊っちゃって。ワクワクドキドキが止まらなくて。あ、ボクてばひとつ見落 としてた。ブラウスがないや。ブラとパンツもルーズと鞄も買ってこなくちゃ。てへ。一人でドキドキはぁはぁしながらね、とりあえず、袖通してみちゃった。 これは…クるねッッッッッッ!! もうズキューーンですよ、ズキュウゥゥゥーーーン!! ぞわ、ぞわっぞわって心底から。震えちゃうねもう。で、でもまぁ ここまではまだ序章。つ、つつつ次は、すすスカートですよ。あ、ちなみに、ボクそのとき全裸。制服のみで、生の素材の良さをそのまま生かしたかったので す。するりと足を通して。腰のチャックを閉めて、ん~、ちょっと長いかな、3回ほど折っちゃおうかな。…。……………。完全武装完了。僕はこの瞬間大地震 が起きたらという妄想に心底震え、そして一抹の期待を抱き。そこには、一人の女子高生姿の青年がいた。髪が明るい色で長く、なで肩のため女に見えなくもな い。しかし、顔つきは結構しまっているためこれはれっきとした男であった。うん。男はうなずき、鏡の前に立つ。顔を映さないように斜めに自分を配置。ス カートの端を持ち上げてみる。ゾクゾクゾクゾク…ッ! えもいわれぬ快感が背筋を走り抜ける! 髪をふぁさっ…と揺らし、ゆっくりと肩を露出してみる。ぞ わわわわわと。ぞわりと全身が粟立ち、男は恍惚とした吐息を漏らす。堪えられぬ感触。自分に欲情する背徳感。どくん、どくんと。自分の鼓動が脳内にこだま する。ぺたりと座り込んだ男はぼうっと放心し、早くブラウスと下着を買ってこなくちゃ…と、やけに現実的なことを考えていたのであった。
 以上をもって、ご挨拶にかえさせていただきます。皆様、ご清聴真にありがとうございました。それでは、しばしのご歓談を──。
 ワーーーーーーーッ……………!!! パチパチパチパチパチパチ───!!! ヒュー、最高ッ! アンタのスピーチは紫綬褒章級やぁッ! あ、どうして かしら目から汗が…。長生きすれば、いいもんがいっぱいみれるけぇのぉ…、気張りいゃ。うん、おじいちゃん、ボク、絶対生きるよ!来週手術受けるっ! あ なたっ!かけるが手術を受けるって…! おぉ…、かける、絶対勝つんだぞ。あのお兄さんのようになるんだ。うんパパ、ボク、絶対勝つッ!こんな病気になん か負けないんだっ! 
 スタンディングオベーション! スタンディングオベーション! アンコール、アンコール、アンコールっっっ…!!!

 眠れない。
 眠れない眠れない。
 つらすぎる。酒を飲んでも飲んでも眠れない。目をつぶってじっとしているだけでつらい。内部からの鈍い圧迫感。死ね。早く死ね。つらいだろ? 憂鬱だ ろ? ほらほら、あせれあせれ。おまえがこうしている間に、世界はどんどん動いてるぞ。新しい、才能のある人間はどんどん成長してる。おまえはずっとこの ままだ。世界はおまえに用がないんだよ。
 身悶える。丸くなる。うめく。うぅ。うぅぅぅ…ーっ。
 寝かしてくれ、頼むから。
 じとりと汗が。息が苦しい。
 かはっ…。ふぅっ…、はぁ──。
 ふとんをかぶると暑い。剥がすと少し寒い。
 ゆさゆさ…ゆさゆさ…。
 あぅ…あぅ…。…ぎゅっ…。
 時間は…まだ3時。早く経て。寝なくてもいい。早く時間経ってくれ。
 眠れない。全然眠れない。

 家にいてもやることがない。ネットは一通り見た。朝に3時間ほど眠れたが、目が覚めた後はまた全然眠れない。昼寝するほど眠くもない。不健康な顔色。
 時間が経たない。親の前だ。日が出ている間は酒を飲まないことにした。かわりにひっきりなしにコーヒーを摂取している。
 アキ・カウリスマキの『浮雲』を観てみた。なぜか家にあった。失礼、これをおもしろいと言うやつには精神科をお勧めする。15分で断念。
 本屋に行こうと思った。
 僕は、昔から物事に裏づけを求める。大学は1年ほどで行かなくなったが、学問的な理論付けというのはどうにも好きなようで。自分が考えてることをほかの人がどう考えているのか知りたかったり、単純に知識や技術を求めて理論を欲しがるときもある。
 とりあえず、本屋にはいろいろな人の考えが転がっている。人が考えてきたこと、知と経験がいろいろな形態をもって交錯している。低俗からご高尚まで。マンガから専門書まで。
 知識が欲しい。技術が欲しい。他者の経験を知りたい。
 今のこの状態。知識面からねじ伏せてやる。
 調べるんだ。理論で武装するんだ。強力な波が来ないうちに。
 いつ襲ってくるかわからない無気力の恐怖。知識があれば、立ち向かえる。分析して、解決法を導ける。
 無知は罪だ。知らないことは、弱いこと。
 知識と経験を徹底利用。世界の全知は僕のためにある。
 「自転車借りるよ」
 「ついでに買い物してきて。かつおぶし。」

 天気がいい。10月だというのに、半袖で過ごせる。
 自転車で10分ほど走ったところに、中堅サイズの本屋がある。デパートの中にある本屋的なサイズ。品揃えも悪くない。
 久々だ。広い店内。なんとなく懐かしい。
 雑誌コーナーから巡ってみる。軽いファッション系の雑誌。痛い…痛いよっ…。必死だな乙。新書。京極夏彦の新作が売り切れていた。ハードカバー。最近、 宗教が裏にありそうな啓発系の本が増えてきてる気がする。文庫。『精神科に行こう!』。…ぱらぱら…。購入決定。とりあえず元の場所におく。ライトノベ ル。最近イマイチぐぐっとこない。マンガ。あ、デスノートを西尾維新がノベル化してる。いろいろ考える人がいるな。『さよなら絶望先生』が全部読みたい。 家庭医学。『薬で治す「そう」と「うつ」の時代』。…ふーん。
 小説を書こうと思った。深く考えないで、半分フィクション半分ノンフィクション。僕の本職は映像制作だが、僕は思いつき短編乱発の方が肌に合っている。 そんな感じで、小説を書こうと。僕と同じような状態で大変な思いをしてる人がいるかもしれない。もっとひどい人もたくさんいるだろう。これから経験する人 もいるだろう。共有したい。経験を形にしておきたい。僕の脳ミソの中身も整理。誰のためでもない、自分のために書いておこうと。
 少女マンガのコーナーに、かわいい子がいた。うん、かわいい。白いTシャツにジーンズだが、小物を色々使っていてかわいい。セミロングの黒髪。アイロン がかかってる感じ。健康的な肌。いい。顔が整いすぎてないあたりがまたいい。端正な作った感じのいかにもな美じゃなくて、そういった軽く崩した感じにぐっ とくる。身長150前半くらい、高校生だろうか。
 外に出るのを待って、声をかけてみようと思った。どうせほっておいても不安の波は来る。ナンパに失敗したところで、これ以上気持ちが落ちることもないだろう。
 二十歳前後のころ、ナンパが癖になっていた。楽しかったし、いろんな人に会った。
 でもやめた。中毒を感じたからだ。かわいい子とすれ違うだけで、あぁ、なんで今声をかけなかったんだと後悔するほど。普通は声はかけない。ナンパは、 ローリスクハイリターン。欲を追い続けるとキリがなくなる。あと、仕事をする方が楽しくなって面倒くさくなったというのもひとつ。
 ただ最近めっきり女っ気がない。元々あんまり女は得意じゃない。セックスなんて1年ほどしていない。そうなってくるとまたむらっ気が出てくるのも人情で。たまにはいいかな、なんて思ったりもする。
 女の子がいつの間にか移動している。雑誌のコーナーにいるようだ。目の端に入れられる位置で、僕も立ち読みを開始する。久しぶりだ、このドキドキした高 鳴り。うまくいくか…、うまくいけば、完全にノーリスクでハイリターン。必要なのは少しの度胸と心理術だけ。ハンティング。狩りの感触。鼓動が心地いい。 だが、この適度な緊張は上手くいく流れだ。アドレナリンが出ている感覚がする。
 しばらく動かなそうだ。僕は、位置を変える。別の棚を回り、再び今度は斜め対面の雑誌のあたりに移動。『歴史散歩』。興味、ゼロ。
 …しまった。やってしまった。
 女の子のそばに、黒い服を着たメガネの丸っこいおばさんがいる。女の子は、おばさんに今読んでいた雑誌をみせている。おばさんは、ちょっと困りつつもニコニコしている。
 …お母さんと、来ていたようだ…。
 これは無理だ。断念。
 久しぶりに高まっていた性欲が、急速にしぼんでいくのを感じる。衝動が。衝動が必要みたいだ。
 社会のゴミだな。死ねばいい。詫びろ。ごめん。
 『ビジュアル図解シリーズ よくわかる!「うつ」』

 高校生のころは、電車通学だった。乗り換え一回、1時間強かけて通学。
 今考えると。
 通学の最中、強烈な吐き気に襲われるときがあった。目の前が霞んでいき、どんどん彩度を落とし黄色くなってくる。黄色──もっと強い、白い黄色。黄色の 中に何もかもが溶け込んでいき、心臓が早鐘を打つ。強く強く。立っていられない。猛烈、痛いくらいの吐き気。脳が、刺すような熱を感じる。でも奥のほうは 冷たくて。全身に鳥肌が。全身の汗腺が開いているような。早く、早く次の駅に。ダメだ、吐きそうだ。呼吸が荒くなる。空気を取り込んで飲み込んで吐き気を 抑える。降ろして欲しい。頼むから降ろしてくれ。耳がきぃーんとなり、世界の音が鈍くなる。隔離されている感じ。世界にブラーがかかり、僕にだけシャー プ。レイヤーを分けて、僕の彩度を200%に。世界の明度は180%に調整。揺れがつらい。手すりにつかまらないと立っていられない。手足が痺れて力が入 らない。次の駅で降りる。遅刻が確定。ベンチに座ってうずくまり呼吸を整える。少しずつマシになってくる。次の電車に乗る。また発作。その次の駅で降り る。学校に行くのに、普段の倍以上の時間がかかった。それからしばらくは、またその発作が起こってしまうんじゃないかと電車に乗るのが怖かった。そんなこ とが何回か。
 当時、それは貧血なのかと思っていた。貧血になんてなったことがなかったので、そういうものだと思ってしまったらしい。
 調べてみるとなんてことはない。なんだ、単なるパニック・ディスオーダーじゃないか。しかも典型的な症例。予期不安までしっかり持って。
 情報を持っていない、ということはそういうことだ。自分の身に起こったことがなんだかわからないから、ただひたすらに怖い。自分は異常なんじゃないか。一生こうなんじゃないか。どう説明すればいいんだ。医者に行ったほうがいいのか。
 幽霊の 正体見たり 枯れ尾花
 知りさえすれば、対処ができる。それでもその状態が怖いことに変わりはないが。自分だけでないことがわかる。どう対処するのが一番いいのか、考えて行動が取れる。徐々にだが、社会でも認知されてきているということがわかる。それだけで多少の安心は手に入る。

 スーパーに入った。かつおぶしと刺身を持ってレジに並んだ。夕方だから混んでる。
 目の前の客の会計中。突然レジの電源が落ちた。ギャルっぽい店員がおろおろしてる。ん、ちょっとかわいい。もっと困らせたいな。
 中年の店員がやってきた。ウザい。キモい。死ね。
 レジは直らない。僕や、その後ろに並んでる客にも何のフォローもない。文句を言う気力もない。並びなおした。
 なんか、疲れた。

 深夜2時。
 部屋でまどろんでたら、隣に吸血鬼の女の子が立っていた。完璧な顔。
 「あなたの血ちょうだい」
 「あ、うん、あげる。」
 「いいの?」
 「いいよ。痛くしないでね。あ、いいよ別に痛くても」
 「あなたも吸血鬼になるよ」
 「やっぱそうなんだ」
 「あたし真祖だからね。使い魔になれるわ」
 「ほんと? うれしい」
 「ネコなんてどう?」
 「うん、ご主人様。忠誠を誓います。誓う。」
 「退屈よ」
 「退屈なんだ」
 「退屈。死ねないし」
 「退屈はいやだな。それ、地獄じゃないの」
 「地獄ね。生き地獄」
 「やっぱやだな。死にたいときに死ねないの」
 「ダメ。それは禁止」
 「一時的に吸血鬼になるとか」
 「そんな都合よくはないわよ」
 「じゃあ、人間のまま君に忠誠を誓う」
 「人間はいらないわ。死ぬし」
 「便利だよ俺。結構器用だよ」
 「不死身になって磨き続けなさい」
 「いやだよ。ぞっとする」
 「吸血鬼になったら、テンション上がることはないからね」
 「低血圧か」
 「低血圧。あまり楽しいことがないの」
 「地獄だね」
 「地獄よ」
 「いつからそうなの?」
 「あたしは700年くらい」
 「長いね」
 「途中300年くらい寝たけどね」
 「死ねないから生きてるんだよね」
 「目的ないからね。終わりがないの」
 「死ぬも生きてるも」
 「現実も妄想も」
 「夢も現も」
 「いっしょね」
 「人間は進歩したよ」
 「夢の中に物理はないわ」
 「そうか」
 「そうよ」
 「死なないんだもんな」
 「自分が溶け出してる感じするよ」
 「いいじゃないか。現象になれるんだろ」
 「世界に溶け合うわね。個の意味が無くなるし」
 「死なないんだもんな」
 「これは現?」
 「たぶん。わかんない、夢かな」
 「また来るわ」
 「え、使い魔は」
 「あ、そっか。どうしよ。どうしたい」
 「噛んで」
 「噛んでもなれないよ」
 「え、違うの」
 「そういう趣味のやつもいるだけ」
 「どうするの」
 「キスがいいかな」
 「そうなんだ」
 「クンニでもいいよ」
 「キスしよう」
 「うん、キス」
 「どんなのがいい」
 「下唇を」
 「了解」
 僕は、10歳くらいに見えるその黒衣の少女を身体をねじって押し倒し、舌をねじ込んだ。少女の肌は白く、とても白く、暗い部屋の中で燐光を放っているよ うに見えた。軟骨にそって耳を撫で、首筋から鎖骨の方へ舌を這わす。少し変わった服。全身黒。部分部分がレース。脱がし方がわからない。幼い顔立ちの割に 胸はふくらんでいる。身体に密着した服のため、ラインがよくわかる。稜線に沿ってキスしていき、右手で脇の辺りから下乳の方へとまさぐっていく。右足を少 女の太股の間に挿入していき、軽くきゅっと刺激を加える。
 かぷり。
 「あれ」
 少女が首を回し、僕の頚動脈を噛み切っている。
 あれ、吸われてる。
 ちゅう、ちゅう。
 うわ、何コレ、気持ちいい。
 「…んッ」
 こくり。嚥下。
 うわうわ、首からだらだら血が滴ってる。
 ちろっ。
 「ふわ」
 ちろちろっ。
 あ、頭がぼぅっとしてきた…。気持ちいっ…。
 舌が血に濡れて真っ赤。あーあ、口の周りにそんなにこぼしちゃって…。
 少女の両手が僕の首に絡む。
 ちゅうちゅうと、僕の首から吸入している。
 とろり。
 あー…。
 とうとう両足を僕の腰に絡めた。だっこちゃん人形。
 なんとなく、働かない頭のまま抱き返してみる。
 ちゅう、ちゅう…
 「ぷはッ」
 どさり。
 背中からベッドに倒れた。騎乗位。
 モノクロームの少女。鮮やかな紅が唇からひと筋、ふた筋──。すっごいキレイ。僕の欲はもうギンギンになってる。体内で熱く暴れ狂う情欲。外部は冷気。このまんま。このまんまで。
 「キスがいいって言ったぢゃないよー」
 知らね。
 死ねる? 死ねる? 最っ高ッ…!!!!

 10月9日。
 男は死んだ。享年24歳。
 原因、深夜の躁転による突発的な自傷。実に神々しい死顔だった。幸せの絶頂。他者の介入を許さない、絶対的な多幸感の中で逝ったのだろう。
 死体は血と精液にまみれどろどろ。
 遺書はなかった。自殺にいたる直接的な原因も特に考えられない。男はその日寝る直前まで小説を書いていた。貴重な資料。
 精神分析学者・精神科医の権威でもあり、また電脳社会と現代青少年の問題について深い考察のある××大学教授西次郎氏が分析を試みることになる。
 以下がその全文である。

《小説1》

 「おい」
 「にゃッ!」
 じじー、うっせー、じじー。
 ねむいの。寝るの。寝るのが気持ちいいの。日の光がスッゴイ気持ちいいの、きょう。
 「おいコラ」
 「にゃう」
 うっせー。ジャマすんじゃねー。おこんぞキレんぞ相手してやんねーぞ。じじー、いーかー。あたしの気持ちよさはあたしだけのもんなんだよ。あたしはあた しだけのもんなんだよ。だから、気持ちいいのはあたしだけのもんなんだよ。ゆえに、じじー、話かけんじゃねーよ、じじー。これだよ。三段論法だよ。これで かんぺきに論破だよ、じじー。あたしの勝ちだよ。日の光がさ、筋になってきらきらしてなんかしかくいのがいっぱいあたしに降りそそいでるんよ。さいこーな んよ。わかるか、じじー。わかるか、おいじじー。ゆえに、これをジャマしたら死刑なんよ。おむかえなんよ。
 「にゃぎャー」
 あたしはさ、こうみえてもエラいんよ。すごいんだよ。わかってんじゃんよあんたもそのへんはよ。あたしはこの世界の王さまなわけなんよ。だから、あたしのジャマとかしちゃダメなんよ。ちゃんと選挙して選ばれてんよ。話しかけんなよひれ伏せよ尊敬しろよじじー。
 ぼぐしっ。
 シャー!
 「フゥー!」
 なにしやがんのよこのクソじじー!
 「起きろッつんだこのクソ誇大妄想ネコ」
 「誇大妄想じゃないっつのよ!」
 「世界の王じゃねーだろ」
 「すぐそうなるにょよ!」
 「はいはい、まずお隣の赤い国からなんとかしてな」
 あの国はイヤよ。怖いもん。
 ガチャリ。
 「総理」
 「にぁ」
 ん、補佐官のコウノ。よくきた、ちょうどいいところでよくきた。早くこのうっとーしい官房長官のじじーをどっかにしてあたしを一人で気持ちよくぽかぽかさせち…。
 「この後のご予定ですが」
 「ひるね」
 「ぶっ殺すぞ」
 「ごめんなさい」
 「ご予定ですが」
 「さんぽ」
 「売るぞ」
 「すいません」
 「ご予定ですが」
 「16時に出発し、東京8区のヤマナカ君を応援。それまでにスピーチをまとめとかなきゃだったわね。19時からキタムラ派の子たちと食事だったかしら。 あ、出席者をちゃんと確認しておいてね。イイダ君が来ていたらちょっと面倒だから。アゲオ様はいらっしゃるのかしら? 明日の午前から臨時閣議ね。体調を 整える必要があるから、今夜は23時には就寝することにするわ。閣議で想定される質問事項をあらかじめまとめて、明日の閣議前に私が確認できるようにマツ ダに申し付けておきなさい。民社党のキトウがつっかかってくる可能性が高いわ。十分な理論武装を用意すること。特に、先日の群馬でのダム工事に対する市民 の直接抗議はちょっとマイナス要素ね…。わかってると思うけど、イシジマ組の動きについては欠片ほども漏らすんじゃないわよ。明日は、ちょっとしたキャラ クターアピールをするつもりでいるわ。タイプはG。党の中で、特に性格が明朗であるものに言付けておきなさい。キノシタやアベあたりがいいわ。詳細は追っ て連絡します。映画監督のシャルル・ロッペ氏が取材で来日しているそうね。直接会うわ。シャルル様のご都合に合わせ、席を設けなさい。ランチがいいわ。記 者クラブは通さないで、直接アンドウやワダに連絡しなさい。公より、私が私的な興味により会ったというほうが効果的よ」
 「かしこまりました。早急に」
 コウノは怖えぇーなぁー。真顔でキれるんだもんなー。やーよ、あたしはひるねのほうがいいにょよ…。公務なんてそんなめんどくさいくさいくさい…。いいじゃぁーん、適当で。こうやって寝てるほうが気持ちいいよ。

 3ヵ月後。
 ネコは世界を制覇した。

 「これで文句ねーっしょ」
 これで、寝れるの。すきなだけゴロれるの。じゆう。フリー・ダムなにょよーーーー!! あちしはね、じゆうのためにシゴトしてるのよ。無制限なじゆう。 意思もぜんぶじゆう。わかってるの、そのへん、じじー? 弱者はね、じゆうなんて手に入んないのよ。ココロのじゆう? はっ、ナメんじゃないわよ。したい と思ったことが全部できないと、じゆうなんていわないのよ。ほしいものをすべて手にいれられる状態をもってはじめてじゆうっていうのよ。妥協があるうちは じゆうじゃないにょよ。それは我慢。目をつぶってるだけ。弱者の理論。じゆうには、むげんのチカラがひつようなにょよーーーー!!!
 ガチャリ。
 「キング」
 「にぁ」
 げっ、コウノ。近よんな。近づかないで。アンタはあたしのじゆうをいつのまにかうばう。
 「恐れながら申し上げます。大いなる力には、大いなる責任が伴うものなのです」
 そんなどっかで聞いた発言はいらないにょーー!
 じゆう! じゆうなの! 寝るの! 寝たいときに寝るの!
 「キング、この後のご予定ですが」
 「ひるね」
 「あんまナメてっと耳引きちぎるぞ」
 「ほんとすいません」
 めんどくさいよぅ。めんどくさいよぅ。なんで世界の王になってもやんなきゃいけないことがあるのよ。そりゃ最初はすきでやってたわよ。たのしかったし、 まわりも喜んでくれてたし。でもねー、その、すきでやってたことが、やらなきゃいけないことにかわった瞬間のね、このね、なんともいえないね、さびしさ?  寂寥感? あれれー、みたいなね? はなしとちがうよ、みたいなね?
 「15時から石油化学シンポジウムに出席するわ。エネルギーの問題だけは何よりも先決で考えなくてはいけない。ベネチアの映画祭はキャンセルなさい。誰 がスケジュールを立てたんだか知らないけど、ふざけたものね。私の立場とプライオリティを考えなさい。え、19時からWFP長官から会食の打診が入って る? 何やってるのよ! 最優先事項でしょう! まったく、どこまで無能なの。仕方ないわ、バッフェ氏との会談には代理の者を行かせなさい。ヒサモトなら ばそつなくこなしてくれるでしょう。は? 何を考えてるの? 経済よりも食糧でしょう! お金がなくても生きていけるけど食べなくては生きていけないの よ! あなた、本当にひもじい思いを一度でもしたことがあって? 私たちは、少しでも多くの子供たちにまずお腹いっぱい食べてもらわなくちゃいけないの。 経済はその後よ。その子供たちが成長すれば、きっと立派な社会人になって必ず未来は豊かになる。今、死を目の前にしている子を救うことが何よりも大切で しょう! え、教皇が倒れた…。いけないわ、信仰は人の心の支えよ。行き過ぎた宗教は問題だけれども、信じることによって救われる人の心もある。…すぐに 向かうわ。睡眠は飛行機の中でとります。私ならば大丈夫。ええ、大丈夫よ。昨日は少し眠れましたし。すぐ手配なさい」
 めんどくさいよー。おかしいなぁ、さいしょの予定とちがう。えらくなって、あちしのフリー・ダムっ!!!がてにはいるはずだったのに…。うーん。
 おかしいよ。じゆうくない。なんでよー、責任さえはたせばじゆうになれるんじゃないんかよー。シゴトすればするほど苦しくなんじゃん。ちがうって、ラク になるためにいっしょうけんめいシゴトしてるんだって。でシゴトじたいも楽しくしたかったから、あたしのだいすきな世界制服をシゴトにしたんじゃんか。夢 はかなったのに、なんでもっとふじゆうになってんのよ。
 「仕事はさぁ、」
 うん。
 「すればするほど腕上がんじゃん。そうすっとっさ、周りが期待すんじゃん。これ難しいけど、こいつならなんとかしてくれるんじゃないかって。で、仕事で きるやつってのは、人の期待に応えなきゃ気がすまないわけよ。期待に100%応えて当たり前。120%やれてようやく一級品の仕事だってな」
 うん。
 「それは、自分の好きなことを仕事にしちゃった者の宿命なんだわ。120%やるようになると、今度はまたそれが当然になる。キリがないわけだ。上へ上へ」
 うん。
 「自分にとってそれは好きで始めたことだから、特に文句も言わずひたすら仕事をこなしていくわけだ。楽しめる今の仕事を失うのはイヤだし、もっともっと自分を高めたい。そうなってくると、ジレンマが生まれてくるわな」
 そうだねぇ。
 「自分は元々何がしたかったんだっけ。ずっと好きなことをしてたかっただけ。楽しいからやってたことが、いつの間にか人の評価を気にしてするようになってる。独りよがり、という言葉を極度に恐れるようになる」
 うん。
 「組織に入っちまうのは楽だわな。大きな意思決定は上に任せればいい。自分の立場に応じた責任を持って、上の意思決定に準じてればそれで大丈夫だ。あと はちょっと酒の席なんかで、上司のご機嫌をうかがえばいい。そうしてれば問題ない、そのまま仕事をずっと続けていれば自然と立場は上がるし、徐々にご機嫌 をうかがわれる立場になれる」
 最悪だね。
 「自分の腕を信じられるようになってくるとさ、組織に入るんじゃなくて、どう組織を利用するかって考えるようになるよな。どれだけ組織から自分の利益を 引きずり出して、同時にその組織にとっての自分の有益性を示せるか。組織と個人のwin-winってやつだな。自分のやりやすい立場ってのは、自分の実力 のみで奪いに行くって話になる」
 うん。
 「そのあたりだろう、ブレが出始めるのは。自分はもっと上に行きたい。より大きな仕事がしたい。だが、本当に好きなことはそれなのか。もちろん楽しいん だ、上に行くために仕事を選んでいくのは。立ち回りを考える。楽しいと向上。より上に行けば、新しい世界が開けてもっとおもしろいことができるかもしれな い。ただそのために今何かに目をつぶるのか。一度向上を選んでしまうと、それをずっと続けなくてはならなくなるかもしれない。好き、楽しいを選んでもそれ なりの向上は見込めるんだ。ある程度自分の腕に誇りを持ち始めた人間がぶちあたるジレンマだな」
 うん。
  「ヒトの価値ってさぁ、」
 てか、あんたはだれよ。
 「どれだけ替えがきくか、ってあたりじゃねーの。どんな立場にあろうと、すげ替えがきくんならあまりそいつに価値はないさ。自分自身の価値に自信が持て ないやつほど、立場を死守しようとするんだわ。必死でやるべき仕事をこなして、八方に気を遣ってな。1が能力、2が信頼、かな。俺が今んとこ考えられるの は。フン。才さえあれば使えるさ。あとは利害の一致だ。最高の相棒は、これ。利害が一致していれば裏切らないからな。自分の能力があがれば、さらに自分が 組める相手の選択肢も広がるんだ。信頼はその次なんだ残念ながら。どんなに裏切らない人間でも、使えないんじゃ仕方ない」
 「だれよ」
 「ん」
 「だれよあんた」
 「俺は傭兵だよ。ついさっき雇われた、あんた直属のガードだよ、ネコ殿下。人が長期休暇中だっつーのによー、ほら、そこのじじーが俺をわざわざ見つけて きやがってな。何度も何度も三顧の礼尽くされたんじゃ断るに断れねえ。ネコ殿下、その従者大切にしな。そいつ、信頼できるだけじゃなくて動かない人間を動 かすキャパ持ってるぜ。あんたのことを切々と訴えてきてな。自分の能力を認識した上で、忠を選択したんだ。すげーうらやましい」
 「じじー」
 あたしは感動した。
 「さんくす」
 「(照)」
 うわ、じじーうるうるしてる。
 「ぶっちゃけ公の仕事なんて報酬よくないからやりたくないんだけどな…。礼だよ礼。あとそいつの忠がうらやましかった。それとあんたのことが気になった」
 「すき?」
 「すんっげー似てる。俺と。」
 「すき?」
 「好きだよ」
 「(照)」

《…小説1》

 「浅ッ!!」
 なんだこの展開はよぉ。どんだけテンポいいんだよ。
 「西先生」
 「ンぁ」
 2日前。どこぞの若僧が自殺した。直接的な原因は特にないらしいが、死ぬ直前まで小説を書いていたらしく、俺の元に分析依頼がきた。最近この手の仕事が多い。
 「どう思われました」
 …どう、ね。
 「思いつきですね。いい天気だなぁすぱーん!ってやつです。見てくださいよ、この死に顔写真。はぁー、うらやましいです…。同情の余地ないですねこんなやつ。失速しすぎでしょこのラスト! いやちょっと先気になるじゃないですか。なんでここで死ぬんですか!」
 「いやそれを分析するのが先生のお仕事で…」
 「ラーメンと煮タマゴ食べてきます。マスコミ向けの原稿は今夜中にまとめますんで」

 「浅ッ!!」
 しまった、なんじゃこりゃ。おいおいおい、どこにノンフィクションがあるんだよ。失敗した。もう少し書いてから死ぬんだった。
 「なにこれ」
 「小説」
 「小説なんて書いてたの」
 「書きたくなったんだよ」
 とにかく、このままじゃいかん。なんとかもうちょっとまとめないと、僕の死がかっこ悪すぎる。
 「ネコ好きなんじゃんやっぱ」
 「なんかネコだったんだ、この時は」
 「『(照)』で終わってる。ぷーくすくす」
 最悪だ。早まった。
 「語っちゃってるね。酔っ払って書いた? ぷぷっ」
 「死んだ直接原因、お前なんだけど」
 「人のせいにするの? そんな男だとは思わなかった。最低。下衆。呼吸やめて」
 「お前が可愛すぎたからだよ」
 「…(照)」
 「やめてくれ」
 死んでから二日。どうもこのヴァンパイア少女のはからいか何かで、残留思念としてまだこの世に残ってるらしい。なんか一回死んだせいか、わりと心は健康だ。何も食べないですむせいで、身体もやけに健康。
 残留思念と言えば未練なわけだが、僕には特に未練がなかった。恨みなんてないし、やり残したなんて思うようなこともない。終わるなら終わるで、別にかまわなかった。
 「霊丸撃てないの」
 「マンガじゃないんだから」
 「ほかに幽霊っていないの」
 「仲間欲しい?」
 「別にいいけど」
 有難味少ないな。
 「とりあえず観光してくる」
 「あ、」
 「何」
 「人の心はのぞかないほうがいい」
 「え、のぞけるの」
 「うん」
 「のぞきたい。のぞく」
 「イっちゃうよ。ココロ」
 「そうなの」
 「キミ、脆い上に感じやすい子だから。すぐビクンッってなっちゃう」
 「失礼な話だな」
 「ヨワヨワだよ。びっくりするほど。虚弱体質の精神。5歳児でももうちょっと意思がある」
 「そこまでか」
 「うん、クズ。真性。ほとんどゾンビだね」
 僕、そこまで言われるほど弱いか。
 「ヨワヨワな奴のほうがおもしろいんだけどね。意志が強くてまっすぐなやつなんて楽しくない。弱っちくてイジけてて屈折してる奴のほうがおもしろいよ。欲や快楽に素直だし。すぐ倒錯する。好奇心に抗えないんだね。キミ、いい歪み」
 「ほめてないよね」
 「アレだよ。朝起きて、モヤモヤしてて、んー景気づけにビール一本ぷしゅっ!で人生棒に振るタイプだよ。もう主体性のカケラもないね。目の前の快楽に流されるまんま生きてるだけだよね。そら死んでも大して未練もないわ。うぷぷぷぷぷ」

メラン子。

続く!!!!!!!!

メラン子。

長期的な目標が立てられない。安定を求められない。夢や目的などそもそもない。脊髄反射のみで生きる。 常にゲームを展開している。ゲームをしないよりした方がおもしろいから。まだ生きている。 終わらせたい。 早く理由を見つけ、ゲームを終了させたい。 こじらせた青年は、吸血鬼の少女と出会った。

  • 小説
  • 短編
  • ファンタジー
  • 青春
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-01-18

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著作権法内での利用のみを許可します。

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