僕と私
あると思ったかあああああああああああ
考えて読んじゃダメです。
言ってしまえばそれは――――
ホルモンは異常した。
おかしな日本語だが、とにかくこうとしか言い様がない。私のホルモンが自分たちの意志で異常したのだ。
私は、そう、気持ちが悪くなってしまった。親しい人達に対して、吐瀉物のイメージが常に付きまとうようになってしまった。
これはなんだろう。保健室にいるカウンセリングに人に聞いてみた。
すると帰ってきた答えは、
「ホルモンの働きの異常でしょう。あなたのような年齢の人には、よくあることですよ」
ちなみに私は十六歳だ。
しかし、どうして、いまさら。
実は同じようなことは以前にも起こっている。
私が小学校の頃に、仲良くしていた二人。いつも三人でくだらない話をして、笑いながら帰っていたものだ。
しかし、私はある日を境にその二人のことが気持ち悪くなった。今回と同じ様に。
これは私のホルモンが異常したせいだ。そうだ。私のホルモンは自立した意思を持っている。そうに違いない。根拠はない。だが、物事はいつもただの勘から始まるものなのだ。
よって私は気にしない。この感覚は次第に親しい人達を私から遠ざける。
私はその人達が嫌いになる。
その人達も私を嫌いになる。
平等だ。何一つ問題はありはしない。
よって私は気にしない。理由付けを行えば、私はなんだって自己完結できる。
私の数少ない特技だ。
新しく友達を見つけること。それも私の特技だ。浅く広くが私のモットー。同じモットーを持っている人の共通点は、飽きが早いこと、今日の移り変わりが激しいことだ。
図書館にでも行って、本を呼んで、帰りに誰かに話しかけて一緒に帰ろう。
それで私の一日は満たされる。
家に変えるのは億劫だ。なので、きょうは友達の家に泊まることにした。
ペンをくるくる回す。私はペン回しはできない。くるくる回すことはできる。
ヴェルヴェッツ。普通の人はこんなもの聞かない。まして私のような人種が聞くのは、それだけでどこか変態的だ。
心地よいノイズが私の心を静かに導く。
気づくと、友達のベッドに潜り込んでいた。
寂しかったのだろうか。人の温もりを求めているのかもしれない。
私は特に気にしない。私はバイだ。どっちでもいけてしまうからだ。
日記をつけることを忘れていた。私は毎日日記をつける。強迫観念めいたものを自分の心に感じるが、気にしない。私の心のものだ。私が受け入れなくてどうするのだ。
ふと気づく。
昨日の日記がない。
ありえないことだった。
私は昨日、しっかりと自分の手で日記をつけたことを覚えている。
ページを破り捨てた後もない。
何かがおかしい。そう気づいたのは、実のところ、今ではなかった。
今日の朝から私はなにかがおかしいことに気づいていた。
それはリビングで、ダイニングで、玄関で、トイレで、学校で、教室で、屋上で、図書館で、ゲームセンターで、ずっと感じていたことだった。
私の、そうじゃなく私達の違和感。
私が二人いる。
汚さずに済むことができるだろうか。できるなら私を、彼女を傷つけたくはない。
私から生まれたもの。私は責任を取らねばならない。
受け入れなければならない。
それはたとえば、
言い換えるなら
引力、なのだ。
引きずられるように私の意識はどこか、心の隙間に潜り込む。
私が生み出してしまった子供。
私。
私の中の私。
より私に近い私。
オリジナルの私。
久しぶり。次に会うのは
長くなりそう?
僕は外出を久々にすることができた。なかなかあの人は隙を見せない。よほど、僕に対して嫌悪感があるみたいだ。
だけど、僕はあの人の負の感情を引っ張り出すことができる。
あの人の心に負荷をかけることができる。
あの人の精神は脆い。僕はそこに漬け込む。我ながら嫌な奴だ。
僕の目の前に誰かの背中がある。あの人の知人だろう。
除けて、着替えて、荷物をまとめて、外に出る。メモを一応残しておいた。これで僕が突然いなくなっても大丈夫だろう。
僕は行動を開始した。しなければならないことが分かる。
僕が次にあの人のもとに帰った時、僕はおそらく殺されるだろう。
そうなる前に、決着をつけねばならない。
僕がこれからも生きていくために。
あの子のために。
行かなければならない。
殺さなければならない。
それは果たして僕の者なのだろうか。
知らないこころが僕の中に存在する。
おかしい事態だ。ありえない。
これも「さよなら」の兆候なのだろうか。
急がないと、間に合わないかもしれない。
文脈を読み取る作業。
あの人はここに来る。
僕はナイフを構えた。
私の目の前にある背中に驚かない。
私の心の中の遺物に驚く。
あの子が残していったのだろう。
律儀な人だ。
おかしな、子供だ。
私より幼いくせに、しっかりしていて、頼りがいがある。
でも支えなければ、と、そう思わせる危なげな雰囲気を持っている。
魅力のある子だ。
地球の自転と同じ速度で動くことができたら。
恐らく僕はあの子にすぐにでも会いに行ける。
でも。
それだとあの子は死んでしまう。
B。
すべてはBに収束する。
だから僕は
あの人にナイフを突き立てた。
あの人は、
この人は、
母さんは、
死んだ。
私は目が覚める。
理由はわからないが、不安になる。
友達の背中をゆする。
起きる。伝える。私はもう帰ると。
寝ぼけているのか、深くは追及してこなかった。
メモ帳を残していく。
着替えて、荷物をまとめて、静かに、私は家を出た。
あの子に危機が迫っている。
予感。
僕は死んだのだろうか。
母親を殺したところまで覚えている。
近畿とスペイン。
こうして並べてみると、何かの冗談みたいで、ふと、
笑う。
青空に六つの球体が浮かんでいる。どれも青と緑にあふれている。
そこが僕とあの子の境界線だ。
本を読んでいるあの子を見つける。
僕は手を振った。
私は泣いて、笑った。
僕は
私は
恐らくだが、
救われた。
僕と私
考えて読んじゃダメ。