きさらぎ
平凡な日常
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私たちは毎日、同じ世界で生きてると証明することができるのだろうか?
もし、寝て起きたら自分が昨日とは違う世界にいる可能性があることを考えたことがあるだろうか?
これは、普通の少女が出会った不思議な世界の話である。
分岐点
神部 まみ(カンベ マミ)は大阪に住む普通の高校生である。
今日もいつもと変わらず、朝起きて愛犬(ゴールデンレトリバー)の散歩にでた後、母親の作った朝食を食べた。
まみは、運動神経が昔から良かった以外は特に取り柄もなく、成績は中の下。
毎日をなんとなく平凡に過ごす今どきの女子高生だった。
高校も、制服が可愛いからと適当に決めた。
この日は終業式で明日から長い夏休みが始まる予定だった。
午前中で学校が終わるので、親友の山田 佳奈(ヤマダ カナ)と京都の神社にお参りに行く予定だった。
「ふわぁ〜やっと終わったぁ」
チャイムがなり退屈な終業式が終わり周りの生徒たちがガヤガヤと帰り始め、まみは大きなあくびとともに両手を高く上げ、伸びをする。
「酷い顔やな」
ふと、隣を見ると幼馴染の神部 和也(カンベ カズヤ)が頬杖をついてこちらを見ていた。
和也とは家が隣同士で、父親が従兄弟という親戚関係のためほとんど兄弟の様に育った。
「うるさいわ!」
軽く睨みつけるが、和也は相変わらずニヤニヤしている。
「お前変わらないよな。子供の時から」
「何よ突然?」
眉を寄せて、やや怪訝そうに返すと和也は意味深な笑をし、まみの頭をぽんと叩き
「じゃあな。また夕飯時な」
そう言うと友達と合流し帰って行った。
後ろ姿に向かって
「佳奈と京都いくから帰らへんよ!」
と叫んだが、聞こえていたのかは微妙である。
少しだけ長引いていた隣のクラスの佳奈がくるまで、まみは和也に言われた言葉の意味を考えていた。
退屈な日常と、単調な日々。そして渡された進路調査の紙。
地味な方ではないし、友達も割と多くて今の生活に満足してはいるが、この先自分はどの様にして大人になるのだろう?
ぼんやりとそんな事を考えていると、佳奈がひょっこりと顔を出した。
佳奈とは小学校からの付き合いで、1番の親友だ。
肩までの栗色の髪とくせ毛で化粧気のないまみに対し、佳奈は髪を茶色に染めたロングヘアーにパーマの今時のギャルである。
ドアから覗く佳奈は眉毛を下げて申し訳なさそうな顔でこちらを見ている。
「まみ、ごめん。今日いけなくなった」
佳奈は両手を顔の前で合わせて眉を下げて見せた。
「ばーちゃんが入院しちゃって、お見舞い行くのよ」
「え?大丈夫??」
「ぎっくり腰やから大丈夫だよ!本当ごめん、今度埋め合わせする」
「気にしやんとって!おばあちゃんによろしく」
急ぎ足で教室から出た佳奈の後ろ姿を見送りながらまみはため息をつき、カバンを持ってゆっくり立ち上がった。
階段をおりて下駄箱でなぜかまだいた和也に遭遇した。
「佳奈と京都行くんちゃうんか?」
「おばあちゃんのお見舞い行くんやて」
きさらぎ