寝言

リクエスト*琥太郎


『琥太郎、ご飯できたよー』

「あぁ、ありがとう」


見た目も色鮮やかに盛り付けられた食事は、それだけで食欲をそそられる


味の好みをわかっているからか、そんじょそこらの店よりか箸も進む



「相変わらず美樹の作る料理はうまいな」

『そう?ありがとう♪』


屈託のない笑みを浮かべ笑う彼女を見て、思わずつられて微笑む。
いつも助けられている、癒される笑みだ



美樹は食べるのが好きだ。そしてそれと同じくらい料理が好きだ。

体調を崩していたらそれに合わせた食事を作ってくれたり、

料理だけじゃない。細かいことにも気が付いてくれるし、お互いに支え合える存在だ。


…俺の、自慢の彼女だ



 


**

大食い


とある日。



「ただいま…と、寝てるのか?」


いつものように部屋に戻ると、いつもは点いているはずの電気がついていない

少し不安になり慌てて寝室へ駆け込むと…



『…すぅ…すぅ…』

「よかった…」


静かに寝息を立てている美樹の姿が目に映った。

ほっと胸をなでおろし、静かに眠る顔を見つめる。
いつもは少し大人びていて、生徒からも教員からも人気な美樹。

琥太郎はもちろんそんな彼女も好きだったが、自分だけが見られる幼い寝顔が好きだった。


時間が経つのも忘れ、寝顔を眺める


…と、



『…直獅、もう、だめ…』

「…は?」



今、なんて言った?
直獅?もうだめ?

事と次第によってはあいつ……っじゃなくて


「おい、美樹起きろ!」

『……んー…?』


ぼんやりと目を開ける美樹。何事だ、と言いたげな顔をしている


「お前…直獅と何かあったのか?」

『…はぇ…?』

「いや、だって寝言で…」

『…あー……夢、かぁ…』

「何があったんだ」

『んーと……』


まだ頭が回っていないのか、思い出している間もうつらうつらと船を漕ぎだしそうになっている


『…あぁ、そうだ、
……大食い競争をね、してたの』

「大食い競争?」


ようやく目が覚めだしたのかさっきよりもはっきりと答える美樹。
思ってもなかった答えに思わず素っ頓狂な声を上げる。


『うん、私と琥太郎と直獅でね、大食い競争をしてたの』

「……」

『それで琥太郎は早々とリタイアしちゃって、私と直獅で戦ってたんだけど…もうちょっとって所で負けちゃった
……琥太郎?』

「あ、あぁ…えーと…」



じゃあなんだ、自分は勘違いをしていたのか。
そう思うと一気に恥ずかしくなってきた

慌てて背を向け、赤い顔を隠す


『…もしかして琥太郎、ヤキモチ?』

「なっ…」


違うといってもこの顔では説得力がない。
美樹はベッドから降り、琥太郎の顔を見て楽しそうにくすくすと笑っている


『そっか、琥太郎も可愛いところあるんだね』

「…うるさいぞ」

『怒んないでよ、嬉しかったよ?』

「じゃあまずそのにやけた顔をやめなさい」

『だって琥太郎が…ぷっ…』



よっぽど面白かったのかお腹をかかえて笑い出す美樹。

琥太郎はそんな彼女の唇に、
不意にキスを落とした


『…へ…』

「いつまでも人をからかっているからだ」


尚も顔は赤いまま琥太郎は美樹に抱きつき、そのままベッドになだれ込む


『っちょ、こた…』

「ん、どうした?」


そのまま首筋に顔を埋める
美樹はびくりと体を震わせ、大人しくなった


『こ、こた…こたろっ…』

「嫉妬させたお仕置きだ、明日は休みなんだから、いいだろう?」

『~~~っ///』



明日は体が痛そうだ…と美樹は確信したのだった。




End

寝言

寝言

  • 小説
  • 掌編
  • 青春
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-01-15

Derivative work
二次創作物であり、原作に関わる一切の権利は原作権利者が所有します。

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