上司の話し
いろいろ設定は決まってないお話、メモ書き程度に
「君が例の新兵だね?じゃあ乗って、あ、スーツケースはトランクに入れて」
駅まで迎えに来てくれた軍人さんは淡々とした口調で私に言った。
季節は初冬、まだ雪は降り始めてはいないが、昼間でも結構な寒さを感じた。
私は、季節を外れて軍隊へ入隊した。両親はおらず、祖父母に育てられた。
介護施設にいる祖父母を養うためには農業だけではお金が足りず、いろいろと悩んでいたそのとき、
軍人である友人から入隊を勧められた。
給料もさほど悪くなく、少なくとも農業で得る収入よりずっと良かった。
しばらくして無事に入隊試験に受かり、半年の訓練期間を終えて、私はここに配属された。
私の故郷からは何百キロも離れた基地だったが、私は構わなかった。
「しかしまた変な時期に入隊したね、もちろんこんな僻地なんて、全くの希望じゃなかっただろうに」
運転しながら軍人さんは、煙草をふかした。
「いえ、もともと希望はしていないので大丈夫です。あの、申し遅れました、私・・・」
「メイラ、だっけ?名前は覚えてるから大丈夫だ。私はホール、基地まで送ったらあまり会うことは無くなるだろうから覚えなくていいよ」
「は、はい、よろしくお願いします」
ジープの中から流れる景色を見ていると、段々と森の中に入っていく様子が伺えた。
私の配属先の基地が決まった時、何故か周りの同期たちはとても気の毒そうな顔をしていた。
きっとそれは、「森のど真ん中にあって、周りに商店街や小さな店さえも無い」ということだったのだろうか。
考えてるうちに、ジープはどんどん森の中へ進んで行った。次第に道も険しくなり天井の取手に掴まっていないと体勢を崩してしまいそうだった。
「しばらくこんな感じで揺れるから、適当に掴まっといて」
軍人さんはこの道を通い慣れているのか、全く表情を変えず運転をしていた。
ドガンッ
「ぎゃっ」
ベゴンッ
「ひぃっ」
ドズンッ
「ぐわっ」
暴れ馬の背に乗っているような状況が数十分続くと、ほどなくして前方に基地らしい建物が見えてきた。
「あぁ、見えてきた。ほら、あれが基地だよ」
「あ、す、すごい、遠かったですね・・・ははは・・・」
全身汗まみれになった私は、力なく返事をすることしかできなかった。
天井の取手を握る手は無意識に力を入れ過ぎていたようで、とても痺れていた。
基地へ来て早々、こんなに握力を鍛えることになるとは思いもしなかった。
上司の話し