「僕」と彼女

ふと、気づくと、テレビの音が聞こえた。
ー……二月二十四日未明、殺人事件が発生しました。殺された女性は切り刻まれており、犯人は現在、逃走中。女性に対して恨みがあったのでしょうか?金銭面や人間関係から調査中です。……ー
随分と猟奇的な殺人だ。犯人は何がしたかったのだろうか?
ボンヤリとした頭で僕は思う。
……?あれ?でも、この殺人……どこかで見覚えがある……?どうして?
そう思うと頭が痛くなった。
思い出したくない。けれど、この女性をどこかでー……。
そういえば、彼女はどうしているだろう……?昨日は彼女の家でお菓子を食べた。彼女の手作りお菓子はとてもおいしいのだ。そうだ、彼女の家にいって、僕は彼女から好きな人がいると聞いて……それで……どうしたんだっけ?……ショックだった。僕は、ずっと彼女のことを思い続けていたのに……。それなのに歳が離れているだけで、僕を全く異性の相手としてみてくれない。それで、僕は彼女に僕をみてもらうために……?どうやら、あの話を聞いてショックで記憶があいまいになっているらしい。せっかく彼女とお茶会だったのに、あの話のせいで台無しだ。
僕は未だボンヤリした頭のまま、起き上がるために布団から出ようとした。けれど、それはできなかった。僕の服には赤いべっとりしたものが大量についていた。よくよく見ると、体のあちこちが赤黒く、乾いてポロポロおちている。
……なぜ?
不審に思うと同時に昨日の記憶がよみがえってきた。
……猟奇殺人……?違う。僕は彼女に僕をみて欲しかっただけだ。そうだ、見てくれないから、僕は彼女をー……。じゃぁ、この赤黒いものは彼女の血で、殺したのはー……。
「う……うわぁぁぁあああああああ!!」
ぬるりとした感触がする左手を開くと、そこには原型を留めていない目玉が握られていた。
本当は首を持っていきたかった。だが、斬れずに仕方なく諦めて目玉で我慢したのだ。
ああ、そうだ。あの場所で動かなくなった彼女をみて、やっと手にいれたと喜んでいたのは、「僕」自身だ……。

「僕」と彼女

「壊れた」僕と「正常だった」彼女がテーマです。とりあえず、10歳くらいの差のあるヤンデレ展開の恋愛物が欲しかっただけです。

「僕」と彼女

ニュースが「何か」言ってる……。僕は何をしていたのだろう?よく思い出せない……。

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  • ホラー
  • 青年向け
更新日
登録日
2015-01-14

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