教へて下さひ。1
縦書で書いておりますので、横書きで読みますと大変に読みにくいかもしれません。
拝啓
拝啓
教へて下さひ。僕には今どうすればいいのか分からないのです。困っているのです。
僕はエス子という同じ学校の同い年の女の子に恋をしています。学校は同じなのですが学科が違いますから普段は逢えません。しかし、芸術の授業でのみ隣同士の席になって少しだけお話をすることが出来ます。好きで好きでたまらないのです。
私はこの気持を彼女に伝えることなど出来ませんでした。それどころか彼女に気持ちがバレてしまって今までの様におしゃべりが出来なくなってしまう事すらも恐ろしかったのですから。
何をしていても彼女のことが頭から離れません。しかし、何故か分かりませんが頭に浮かぶ彼女の顔はいつも同じ顔で、ニッコリと笑っているのです。
彼女のどこが良いのかと聞かれると、上手く答えられません。もし、僕が例えば「優しいところ」なんて言えてしまったら優しい子ならば彼女じゃなくてもいいというコトになってしまいます。彼女でなければダメなのです。確かに彼女はそれ程の美女かと云うとそうではないかもしれません。しかし、僕は彼女を好いてしまったのです。もうどうしようにもないのです。
先日、可笑しなことですが夢を見ました。僕がバスに乗っていると、向かいの席に彼女が突然座ったのです。僕が驚くと彼女はニヤニヤと笑って、
「お前のそんなに驚く顔は初めて見たよ。」
と言うのです。
「そりゃあ大変に驚いたんだもの。しかし、なんで君がこんなところに居るんだよ。用事があるって言ってたじゃないか。」
「うん。ちょっと時間があったからね。少し寄ったんだ。けどもう行かなくちゃ。」
そう言って彼女はスッと消えたんです。僕はますます彼女が好きになりました。
あれだけ逢いたい逢いたい。逢って少しでもいいからお話をしたい。そう思っていたのに、何故か途端に彼女に逢いたくなくなったのです。彼女と廊下ですれ違うのも恥ずかしくなりました。気持ちは相変わらず好きで好きでたまらないのに彼女に逢いたくないのです。あれだけ逢いたいと思い焦がれていたのに途端に逢いたくないと思うようになったのです。
僕は情けなくてたまらなくなりました。彼女に逢いたくて仕方がなかったり、彼女に逢いたくなくなったり、彼女が他の男と廊下を歩いていただけで、どういう仲なんだろうかなどと考えて一喜一憂する自分が大変に情けなくなりました。恥ずかしくて仕方がありませんでした。
私は明日、彼女に時分の想いを告白しようと決意しました。たといフラれてしまっても、素直に諦めようという決心がついたからです。
学校からの帰り道。彼女が電車に乗る駅に着くまでに言おうと決意しました。
そこで私の夢が覚めました。私は驚き戸惑いました。何が何か分からなくなり私は壁にかけてあるカレンダーを見ました。
すると私は五日の間眠っていたのです。気が狂いそうになりました。そして今も気が狂いそうで仕方がありません。
僕は必ず明日彼女に気持ちを打ち明けるんだと決意していました。しかし世界中のどこをどれだけ探してみてもエス子など居ないのです。だが私は夢の中のエス子に恋をしてしまいました。好きで好きで仕方のない恋をしてしまいました。この気持は彼女にフラれない限り諦めが付きそうにありません。私は今にも気が狂いそうです。好きで好きで仕方のない彼女は、この世に存在すらしていないのです。写真も無ければ生きた痕跡も生まれた痕跡すらないのです。
ねえ 教へて下さひ。困っているのです。
教へて下さひ。困っているのです。
困っているのです。
困っているのです。
教へて下さひ。1