天国のおばあちゃんに、ききたいこと。

「おばあちゃんは、どうして死んでしまったの?」
おばあちゃんが生きていたとき、おばあちゃんの心が入って動かしていた、からだの期限が切れたから。いまどきの科学で説明できてしまう構造のからだだから、動かせる時間には限界があるんだよ。

「おばあちゃんには、わたしがみえているの?」
いつでもどこでも、見えているよ。

「見られたくないことも、見られているの・・・?」
ここからは、見ていいことしか見えない。見るべきでないことは、見えない。でも、見ることができなくて嫌な思いをすることはない。見るべきことは、すべて見えているから。あなたを、みんなを、見守っているから。

「おばあちゃんは、私が考えていることがわかるの?」
わかるべきところはわかるし、そうでないところはわからない。おばあちゃんのことを思ってくれている気持ちは、届いています。

「おばあちゃんは、じぶんのお葬式を見ていたの?」
見ていたよ。おばあちゃんの好きな色の花を用意してくれていましたね。おばあちゃんのからだを、みんなで見送ってくれてありがとう。でも、あなたが泣き止まないから、悪いことをしてしまった、と思いました。あなたには、笑っていてほしい。

「おじいちゃんは、おばあちゃんのところに行ったの?」
来ましたよ。もう少し生きてもいいと思ったけれど。どうにも、からだが言うことを聞いてくれなくなってしまったようです。

「死んだら、どうなるの?」
死んだら、からだはその人のものではなくなる。つかいおわった、頑張ってくれたからだとは、永遠におわかれしなくちゃならない。おばあちゃんのからだは、燃えてなくなったでしょう?でもそれは、“おばあちゃんのからだ”であって、“おばあちゃん”ではない。おばあちゃんは、生きている人には見えないけれど、みんなのすぐそばにいます。

「天国はどんなところ?」
ここは、天国ではないかもしれない。いま、おばあちゃんは、大好きな色と、大好きなにおいと、大好きな音につつまれています。おばあちゃんは日本舞踊が好きだったから、いまでもたまに踊っているよ。おじいちゃんもいる。おばあちゃんのお母さんやお父さん、おともだちも、みんないっしょにいる。からだがないから、食べなくても寝なくてもいいのだけれど、みんな好きなものを食べて、お昼寝もしている。ほらまた、おじいちゃんはお酒を飲んでます。ここには時間もない。ここがどんなところかは、あなたが生きている世界の知識や感覚、ことばでは説明できません。

「地獄もあるの?」
わからないけれど、ないと思います。ただ、生きていくうえでやってはならないことをした人や、生きることを諦めてしまった人は、少しせまい箱に入れられてしまうみたい。

「天国では若返るの?ずっとおばあちゃんなの?」
こちらには、からだがないから、若いとかそういうのはありません。でも、おじいちゃんはおじいちゃんだと分かるから不思議です。おじいちゃんといるときは妻であり、おばあちゃんの両親といるときは娘であり、いつかあなたに会うときは、おばあちゃんであります。

「生まれ変わることはあるの?」
ありますよ。しばらく休憩をして、あなたや、あなたのお父さんお母さん、みんなを待つ。みんなに会って、思い出話もすんだら、また新しいからだに入る。新しいからだに入っているあいだ、おばあちゃんはあなたのおばあちゃんだったことを忘れてしまうけど、またいつか戻ってきたときに思い出す。だから、おばあちゃんは、いま、たくさんのことを思い出して、いろんな人と懐かしい話をしています。
せまい箱に入れられてしまった人は、残念ながらみんなを待つ時間がもらえない。なるべくすぐに新しいからだに入って、もう一度生きなければいけない。

「死んでから、会ったことない人に会えるの?昔の偉い人にも会えるのかな?」
新しいからだで生き始めた人以外なら、会えますよ。あなたが生きている物質の世界とは違って、ことばがなくてもお話はできる。だから、どこのだれとでも、お話ができる。

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「天国とか魂なんて、本当にあるのかしら。死んだら何もなくなって、終わりじゃないの?」
科学で説明できる程度のことしか信じないなんて、そんなさみしい生き方はやめて。あなたの喜びや悲しみ、おばあちゃんが生きていて、あなたが生きていて、おばあちゃんが死んでいった意味を、すべて物質で説明してしまうの?あなたのからだが動いていて、そのからだで生きているうちは説明できてしまうかもしれない。けれど、じゃあ、いまこのおばあちゃんがあなたを思う心は、説明できないから、無いものなのかしら。おばあちゃんを無いものにしないで。

「辛くて、悲しくて、苦しくて、こんな思いするくらいなら死んでしまいたい。死んだら何もなくなって、こんな思いしなくてすむでしょう?」
そしたらあなたは、せまい箱に入れられてしまう。おじいちゃんにもおばあちゃんにも、誰にも会えない。確かに、死んだら悲しみや苦しみを味わうことがなくなる。喜びや楽しみとも違う、生きる人の感覚では表せない心の中ですごすことになる。それは幸福感に近いけれど、同じではない。喜びや悲しみは、生きていないと感じられない。おばあちゃんは、あなたが精一杯に生きて、いつか会いにきてくれることを信じているよ。

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「おばあちゃんに会いたい。もう一度話がしたい。もう二度と会えないなんて・・・。」
あなたが、そのからだの期限がくるまで生きて、おばあちゃんのことを忘れないで、おばあちゃんがあなたを見守っていると信じてくれていれば、いつかきっと会えます。それまで、生きるものにしかできないことをたくさんして、生きるものにしか味わえないものを感じて。おばあちゃんは、いまを生きるあなたを羨ましく思います。

「おばあちゃん、おばあちゃんの声は聞こえないけれど、私の声は聞こえているの?」
ちゃんと、聞こえていますよ。ここからは、生きていたときよりもよくあなたのことが見えるし、心が聞こえるし、いつでもそばにいることができる。だから、それを信じて、安心してあなたの人生を生きてね。そして、またいつか、会いましょう。

天国のおばあちゃんに、ききたいこと。

天国のおばあちゃんに、ききたいこと。

家族や身近な人が死んでしまった経験がある人に読んでみてほしいです。

  • 随筆・エッセイ
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-01-12

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