猫との出会い

我が家の猫との出会いについて書いてみました

我が家のねこ、すーことすみれと出あったのは10年前のある雨が激しく降る、夏の日だった。私は当時、保険の外交員をしており、夜の9時位まで、お客様と商談をおこなって
いた。商談が終わり、お客様の家を出た。すさまじく雨が降っており、傘をさしても、ずぶぬれになるような状態だ。私は足早に車を止めている駐車場に向かっていった。
車に到着し、ドアを開けて傘をたたみながら、車の中に入っていった。やはり、傘はあまり役に立たず、ずぶぬれにしまった。車のエンジンをかけて、家路へ急ごうとしたとき、
車の下からか細い声の猫の鳴き声が聞こえた。最初は空耳かとおもったが、ラジオのボリュームを下げて、車の中で聞き耳を立てると、やはり、猫が鳴いている。
車の下に猫がいて、万が一車で轢いてしまうとさすがにかわいそうなので、しかたなく、
傘を差しながら、車から再び出て、下の確認を行うこととした。
雨は激しく降っている。
車の下をのぞいた所、そこには生後2か月くらいの小さな猫がタイヤの下でうずくまって
いた。このまま発車するとまさに、轢き殺してしまう所だった。
猫を車の下から拾い上げた。白黒の猫であった。その姿は雨に濡れてびちょびちょでやせ細っているのが見て取れた。まだ乳離れしたばかりなのだろうか?顔を見てみる。
家で飼っている猫には到底及ばないほどの器量の悪さ、しかも右目がただれていて、目を
開けることもできない様子だった。この雨の中、親とはぐれてしまったのだろうか?このまま見捨ててしまうのもかわいそうだと思い、駐車場に隣接している公園の方を見渡した。
しかしながら、雨のせいもあり、猫一匹見当たらない状態だった。私はこの猫が不憫に思い、体を車に積んでたタオルで拭いてあげてから、傘を差しながら、猫をだっこして、公園の中を親猫を探して歩き出した。雨をよけれそうな、木の下や、遊具のまわり、自動車の下など、1時間ほどくまなく探し回ったが猫の親子はもちろん、猫一匹探すことができなかった。
このままこの猫を木の下に置いて帰ろうかと思ったが、体はだいぶ弱っており、目も悪い
状態なので、置いて帰ると近いうちに死んでしまうのではないかと思えた。猫の顔をよく見てみる。かなりみすぼらしいが、開いている片方の目は力強く、生命に満ち溢れている
ように感じた。ふと、見ると何かしら心が温かくなるような、いとおしく感じるような、
感情が芽生えてきた。
「この猫を連れて帰ろう」
と思ったが、目が悪いので、家で飼っている猫に病気を移してしまわないか心配だった。また、家族にもこの猫を飼っていいと承諾をもらえるか不安であった。
時刻はもう10時を回っている。家に電話をしてみる。今までの事情を説明して、猫の
目のことも包み隠さず話した。すると家族は暖かく迎えてくれるとのことだった。
そして、猫を助手席に乗せて、家へ帰っていった。

家に着くと、遅い時間にもかかわらす、家族が起きて待っていた。子供たちが興味深々
で猫のことを覗きこんでくる。もう一匹の猫に病気が写るかもしれないので、深めの段ボールを近所のコンビニからもらってきて、その中に入れて、餌をあげた。大層おなかが減っていたかして、がつがつと餌を食べている。もともとの飼い猫の名前、さくらから連想して、この雌猫の名前をすみれと名付けた。
翌日、早速病院へ連れて行った。猫エイズ等の検査をしてもらい、目も見てもらった。
彼女の左目は何とか開くようにはなったが、その目から流れてくる血の混じった涙はなお
らないとの事だった。他の猫にも写るものではないとの事で、2匹一緒に飼うことができるようになった。
家に帰り、放してあげると、さくらが威嚇していた。あっという間の勝負でさくらの勝ち。
すみれは子分となった。それからはいつでも2匹一緒に行動するようになった。寝る時も
餌を食べる時も2匹並んでいつも一緒だった。

あれから10年経ち、さくらは亡くなってしまったが、すみれことすーちゃんは相変わらず人懐こくお客様の膝の上に座ったり、冬になると、ストーブの真ん前に立ち一人占めするのが楽しみな、家族の一員として、愛嬌よく過ごしている。

猫との出会い

猫との出会い

  • 随筆・エッセイ
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-01-12

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