葬祭場
白木の棺が一つ無くなって
また誰かが別れを言うのだと理解した。
(小さな棺が無くなる様は、悲しいより痛いの方が先に来る。)
頭を取られた白菊は
泣けない私の代わりに泣いている様で
茎だけが残った花かごは
晒された死体よりも惨めに見えた。。
(飲まれない様に・一線を置く事が出来ない・だから今度は・
他人事なのだと思い込む。)
最初は
人間と死体の区別が出来なくて
負担ばかりが残ったのだけれども
慣れというのは不思議で
自分と心が喰われぬ様
防衛術が身に付いた。
(怖いと思うな。怖いと。)
区別をつけてしまった。
何かが交じり合うような腐敗臭。
暗く冷たい部屋の戸を閉めて
あの世の境から舞い戻る。
「棺の蓋が閉じられます。最後にもう一度、お別れをしてあげてください。」
打たれる釘で
心臓を殴られているようで
ほんの少しだけ戻る痛みを抑えながら
一人の魂を見送った。
葬祭場