黙秘。

折れたハイヒールを捨て

書きかけの詩はゴミ箱へ。

一万円札をポケットに突っ込み

部屋の鍵をポストに入れて

深夜の商店街を全力疾走。

好きな人の写真を細かく破り

忘れたいと締め付ける思いを叫んで

中身と頭を空にして

誰かと誰かに会いに行く。

三日月型に引いた眉

穏やかに笑うへの字口

残った怒りも許しに変えて

見せない物をロングコートで覆い隠す。

嫉妬の鎖を壊し

歪んだ心に支えを作り

眼鏡を外して

仮面代わりにコンタクトレンズを装着。

そこにいるのは

いつもと違う顔と姿

誰かに知られぬよう裏道に回り込み

見えぬ視線を避けながら

深夜の街角を目指して

誰かと誰かに会いに行く・・・・。

黙秘。

黙秘。

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-01-12

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