Truth of war 第一話 ~序章、死の渦中の根源~
西暦2017年、十一月二十八日、度重なる政治危機とレジスタンスにより、ギリシャが崩壊した。
ギリシャの歴史的遺産や、領土を獲得しようとロシア帝国主義派が進行したのをきっかけにヨーロッパを主な戦場とした戦争・・・のちにヨーロッパ戦争と呼ばれることになる・・・が幕を開けることとなった。
これはそんな戦争のさなか、戦場を渡り歩き、歴史の記録者となった国連軍の中隊の物語。
俺の名はファレイト・クロイツェフ少佐。国連軍第三十八中隊所属の兵士だ。第三十八中隊は約二百人で構成され、主な任務は前哨基地までヘリで移動し、そこから前線へでて戦うことが多い。しかし、何事にも例外はある。いや、この部隊は例外だらけだ。
ある時は敵に気づかれずに基地に潜入し、弾薬庫を吹き飛ばしたかと思えば、敵地にHALO降下して戦争犯罪者を暗殺したり、とにかく何でもできるような部隊だ。だからこそこの戦争に起用されたのだ。なにせこの戦いはテロリストとの戦いではなく、正真正銘の大戦なのだから------------------------------------------------------------------------------------------
時は西暦2017年、十二月十九日。
イタリアのトリカーゼ基地。近年イタリアでは、ギリシャと地中海を挟み、近い位置にあり、攻め込みやすく、レジスタンスには有効な海空軍がないため、攻め込まれにくいという特徴を生かし、レジスタンスの指導者、アルギュロス・ステファノスの暗殺への礎となる予定で、第三十八中隊もその任務に就くべく、この基地に駐屯していた。
「よお!ファル!なにボーっとしてんだ?」
おっと、ファルっていうのは俺のあだ名だ。そして今話しかけてきたこいつはライフ・ウォーター少佐。俺の士官学校の同期で、いわゆる親友だ。
「ああ、この飯の味をそのままレーションにできないかと思ってな。」
あわてて切り返す。
「そうだな、コックを戦場に連れてくか?死んでも知らんぞ!はっはっは!」
「よしてくれ、ムショに入りたくはないよ。」
そんなくだらないことをしゃべりながら基地の食堂でくつろぐ。
事前に控えたレジスタンス攻撃まではしばし暇な日々が続く。
「そういえば格納庫に最新式の戦闘機が来てるらしいぜ」
ライフが思い出したかのように言った。
「まじかよ!よし見に行こう!」
~ここは格納庫。待機中の戦闘機や整備クルーでにぎわっている。
他にもハンヴィーなどの修理もここで行っている。
するとすぐ横にあるハンヴィーの下で修理をしていた男がローラー付きの板を活用し、滑るように現れた。
「やらないか」
「・・・おい、一応俺たち上官だぞ、口を慎め、イェーイ・トロール先任伍長。」
つい俺の口から突っ込みが漏れる。
そう、こいつは整備クルーの一人、イェーイ先任伍長。
体系は肥満型。いわゆるメタボってやつか。ほかに特徴をあげるとすれば、男に興味があるとか・・・。ちなみに日本の有名な整備士、Mr.アベに憧れてるらしい・・・
「で?最新式の戦闘機ってのは?」
「ああ、あそこに」
そこにあったにはごっつい構造の戦闘機。これでもマッハ2近くでるとか。
「今度のギリシャで使うらしいぞ上官」
「まじかよ!?ヒャッホーーーウ!ドッグファイトがこの目で見れるなんて!」
ライフのテンションが上がる。この調子で言ってほしいものだが。
「あ、上官のほうではなく、地中海湾岸部だが」
「・・・帰る」
・・・・・・・おい!!さっきまでの威勢はどうした!?
「おいおい、元気出せよ。よし、俺が元気を出してやろう。や ら な
「やらねぇよ」
十二月二十三日、レジスタンス攻撃作戦始動。
今回の任務はレジスタンスに占領されたアテネを奪還する作戦のために、港町プレべザを奪還、占領する作戦。この作戦には中隊を含めた一個大隊が投入された。
「よーし、よく聞け!これより我々第三十八中隊はプレべザへパラシュート降下する!」
今無線を使って全体に指示を送っているのはアンタレス大佐。この中隊の部隊長だ。
「地上では先行工作部隊がバリケードを張り、我々の降下地点を確保している!彼らの努力を無駄にするなよ?よし、いけ!」
無数の輸送機から次々と兵員が降下していく。
地上に到着すると、すでに多数の兵が交戦していた。
情勢はもちろんこちらの優勢。所詮はレジスタンス。武装もAKなどの旧式。最新鋭の兵器を並べた国連軍に勝てるはずもなく、次々と倒れていく。
作戦開始から二時間ほどで町の中心部まで攻め込み、レジスタンスの兵力ものこりわずか。
国連兵も、だれもが勝利を確信しただろう。
その時、国連兵たちのほうに飛んできたのは、戦車砲の弾だった。
兵士が叫ぶ。
「戦車だ!戦車がいる!!」
そこにいたのはロシア軍、第四世代戦車、T110だった。
「おい!ファル!なんでロシア軍がいんだよ!?」ライフが叫ぶ。
「俺がききてぇよ!!おい、対戦車ミサイルは!?」
「あいにくもってねぇ!!」
いくら国連軍でも生身の、対戦車兵装を持たない兵士が機甲部隊に勝てるはずもなく、国連軍は撤退を余儀なくされた。
回収地点についた時点で千人ほどいた部隊は百人程度まで減ってしまった。
~トリカーゼ基地、ブリーフィングルーム。ここに先日の作戦の生存者たちが集められた。
「本日は重要なお知らせがある。今から話すことはすべて事実だ。心して聞いてほしい。」
隊長は重々しい雰囲気の中、話を始めた。
「・・・・・・モスクワを含むロシア西側が独立を宣言し、同時にロシア東側へ戦線布告した。」
ざわざわ・・・と、ブリーフィングルームが騒がしくなる。
「ロシア西側陣営は自身をモスクワ帝国とし、ウクライナやベラルーシなど周辺国に対し、無条件降伏を求めている。・・・従わないなら武力制圧もやむを得ないと。」
「無茶苦茶だ・・・」新兵が声を失う。彼の名はグリム・フロスト。訓練所を出たばかりの新兵の中で生き残った、数少ない人材の一人。
「質問です。なぜロシア・・・いや、モスクワはギリシャまで侵攻できたのでしょう?」
グリムが問う。
「うむ・・・周りの国を降伏させたか、指揮下にいれたと考えるのが妥当だろう。」
そうだ、そう考えると、モスクワ帝国の領土は相当なものだろう。
「・・・とりあえず、今日はこの辺だ。また合衆国から作戦通達があるだろう。今日は解散だ。」
こうして、ヨーロッパを中心にした大戦が幕を開けた。大国同士が巻き起こす死の渦中から誰も逃れることはできない・・・・・・・
Truth of war file1… 西暦2017年十二月二十四日、「モスクワ帝国発足、ロシア東側に宣戦布告」
Truth of war 第一話 ~序章、死の渦中の根源~