『 あなたが落としたのは 』
。
「お兄ちゃん、私と来て」
ろっりろりな幼い私が、高崎君の腕を引っ張る。
「大人の魅力、教えてあげるわ」
胸のお山が若干大きくなった私が、反対の腕を引っ張って。
「いや、あの」
とんでもない状況に高崎君は混乱していた。
そりゃ、彼女と彼女と彼女に取り合いなんてされたら困惑するよね。
「は、離してください。僕の彼女は高校生の、今現在の彼女だけです!」
過去と未来の私をかき分けて、高崎君は私の右手を掴んでくれた。
恨めしい顔をして消えていく偽物の私たち。
「高崎君、私」
ちゃんと選んでくれた。
偽物じゃなくて、ちゃんと私を。
「お姉ちゃん、こっちだよ」
私の左手をちっちゃな手が引っ張る。
私は右手を躊躇なく振り解いて。
「え、」
しょたしょた高崎君が可愛過ぎたせい。
ごめんね、今の高崎君。
『 あなたが落としたのは 』