『 あなたが落としたのは 』

「お兄ちゃん、私と来て」

ろっりろりな幼い私が、高崎君の腕を引っ張る。

「大人の魅力、教えてあげるわ」

胸のお山が若干大きくなった私が、反対の腕を引っ張って。

「いや、あの」

とんでもない状況に高崎君は混乱していた。
そりゃ、彼女と彼女と彼女に取り合いなんてされたら困惑するよね。

「は、離してください。僕の彼女は高校生の、今現在の彼女だけです!」

過去と未来の私をかき分けて、高崎君は私の右手を掴んでくれた。
恨めしい顔をして消えていく偽物の私たち。

「高崎君、私」

ちゃんと選んでくれた。
偽物じゃなくて、ちゃんと私を。




「お姉ちゃん、こっちだよ」

私の左手をちっちゃな手が引っ張る。
私は右手を躊躇なく振り解いて。

「え、」

しょたしょた高崎君が可愛過ぎたせい。
ごめんね、今の高崎君。

『 あなたが落としたのは 』

『 あなたが落としたのは 』

極短小説。

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-01-10

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